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【イベントレポート前編】日本最大級のインキュベーション/アクセラレーションプログラム「未来2019」が始動。異業種連携は日本経済成長の起爆剤となりうるのか?

【イベントレポート前編】日本最大級のインキュベーション/アクセラレーションプログラム「未来2019」が始動。異業種連携は日本経済成長の起爆剤となりうるのか?

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株式会社日本総合研究所が株式会社三井住友銀行と共に設立した 異業種連携による事業開発コンソーシアム「Incubation & Innovation Initiative (III)」では、社会にインパクトを与えるビジネスの創造・成長をサポートする日本最大級のインキュベーション/アクセラレーションプログラム「未来2019」を運営する。スタートアップや既存企業のカーブアウト(事業分離)、これから起業する挑戦者をサポートし、あらゆる企業・投資家等をつなぎあわせることでイノベーションの実現を目指す本プログラム。

今回は第2回目の開催で2018年7月ベルサール神保町アネックスにおいて開催された。プログラム開催の背景や目的を説明し、また、オープンイノベーションに取り組む官民のゲストスピーカーが登場し、活動を振り返った。会場は、ビジネス創出に関心を持つ、多種多様なビジネスパーソンが数多く出席。登壇者の声に耳を傾けた。

セッション① 事業開発コンソーシアム「Incubation & Innovation Initiative (III)」が取り組む「未来2019」実施の目的と狙いとは?

▲III/未来 統括ディレクタ 東 博暢 (株式会社日本総合研究所 プリンシパル)

セミナーの冒頭に登壇したのはIII/未来 統括ディレクタ東 博暢氏。III(トリプルアイ)発足のきっかけと、IIIの取り組み、「未来2019」について説明した。

 

■III(トリプルアイ)とは

Incubation & Innovation Initiative(III)は、 日本の成長戦略の基盤となる先進性の高い技術シーズやビジネスアイデアの「事業化」を支援し、 日本経済の活性化に貢献することを目的として、株式会社日本総合研究所が株式会社三井住友銀行と共に設立した 異業種連携による「事業開発コンソーシアム」。

 

■未来2019とは

「未来2019」はIII(トリプルアイ)が主催するインキュベーション・アクセラレーションプログラムである。オープンイノベーションによって日本から新たな価値を創出していくことを目指す。同プログラムは第2期目を迎え、アイデアや技術の事業化を目指すイノベ―ターたちにビジネスプランを募集し、イノベーションの支援を行う。

▼プログラムの参加メリット

①専門家によるメンタリング(ビジネスプランの作成・事業開発に向けたアドバイザリー支援 等)の実施

②IIIコンソーシアムメンバーやベンチャーキャピタル、その他関連する企業・団体等とのネットワーキング・マッチングの実施

③大企業やベンチャーキャピタル等に向けたピッチや展示会、商談会の機会提供

④現地アクセラレータの紹介等の海外進出支援

⑤事業開発のための資金サポート III GAP GRANT “MIRAI”(総額1,000万円程度)の活用(優秀チームのみ、1件上限200万円を予定)

―次世代に残るイノベーションを異業種連携でスピーディーに創出していきたい。

「消費者、ユーザーからすると世の中は日々便利に、スマートになってきている。一方で企業側からみるとかなり複雑な状況にある。これまでは同じ製品、同じサービスを世に出していればよかったものの、そうはいかない。厄介な時代に突入している。」と東氏は話す。直近1世紀ほどの製品サイクルを見ても分かる。これまでは数十年スパンで世の中は変化してきたが、ネットの到来以降、2・3年周期と目まぐるしいスピードで変化している。

この状況下の中で、日本企業が生き残るためには、やはり異業種で新しい価値を創出していくことが必要不可欠である。IIIでは1社では成し遂げられないイノベーション創出のプラットフォームとして、イノベーション支援に取り組む。IIIの活動としては第4期目となり、多方面でのイノベーション支援団体との協力体制を結んでいる。最近では先進的な活動を推進する多数の自治体も参画していることから、官民連携により、大規模なプロジェクトとしてイノベーション創出が可能となり、これまで以上に日本経済の活性化に貢献すると期待されている。

セッション② 「統合イノベーション戦略「創業」論点」~研究成果や技術シーズをイノベーションに結び付けるために〜

▲内閣府 科学技術・イノベーション担当 企画官 石井 芳明 氏

 

優れた研究・技術がイノベーションに結び付かない事が長年課題とされてきており、スピーティーで小回りのきく「研究開発型ベンチャー」はその導管となることから、内閣府も大学発ベンチャーを始め様々な施策を実施してきた。セッション②では内閣府 科学技術・イノベーション担当 石井氏より、現状の課題と政府機関による取り組み事例、今後の施策などをプレゼンテーションした。

―研究開発型ベンチャーの支援に注力。日本が持つ技術的潜在的強さを活かすためにベンチャーエコシステムの構築を目指す。

研究開発型ベンチャー創出・成長の明るい動きも出始めているものの、本格的なエコシステムがいまだ十分に機能していない。この状況から脱却するため、研究開発型ベンチャーに焦点をあてたベンチャーエコシステムの構築を開始している。

政府機関は90年代からベンチャー支援策を打ってきたが、石井氏は、「ここが勝負ところだ。」と言う。これまで各省庁バラバラのベンチャー支援をしてきたが、今後はそれぞれの支援施策を繋いでいき、効果を生み出す事を重要視していく。政府の中では「ベンチャー・チャレンジ2020」を策定し、各省庁との連携を計り、起業家教育や日本ベンチャー大賞、大学発ベンチャー表彰等の表彰制度、資金的支援、事業展開支援など行っている。しかし、これらの取り組みが行われているものの、諸外国に追いついていないのが実状であるという。日本の強みを活かし、解決に向けてさらなる取り組むことが必要である。

では具体的にどのような施策を打っていくのか。短期的取組・中期的取組に分けて対応していくという。特にこれから注力してく部分としては、技術がでてきて立ち上がる際のGAPファンドやベンチャー支援機関の取組の強化である。また、成長する際に大きな資金が必要となる場面では、やはり官民ファンドの出番である。そこで、官民ファンドのコンソーシアム化、資金分配機関・支援機関との協力協定を行っていく方針だ。

他にも、事業展開支援の強化、キャリアパスの見直しや、技術・イノベーションの進展に合わせた規制・法制度の見直しメカニズムを導入していく。

さらに石井氏は、研究開発型ベンチャー創出の成功事例を創り、世間から「スタートアップは重要だ」という認知をされることが重要であると話す。その中で「J-Startup」プログラムは誕生した。

―世界で戦い、勝てるスタートアップ企業を生み出し、革新的な技術やビジネスモデルで世界に新しい価値を提供することを目的としたプログラム、「J-Startup」がスタート。

J-Startupプログラムでは、有識者が推薦した成長スタートアップ企業を「J-Startup企業」として選定し、大企業やベンチャーキャピタル、アクセラレーターなどの「J-Startup Supporters」とともに、海外展開も含め官民一丸となって集中的にサポート。また、関係省庁とも連携し、プログラムを推進している。推薦された約1000万社のスタートアップの中から厳しい審査によって92社を対象企業に選定している。

※eiiconLabでもJ-Startupプログラムについて過去に紹介している。https://eiicon.net/articles/511

「J-Startup」プログラムを含め、今後未来との連携を積極的に進めていきたいという。この国のイノベーティブなポテンシャルを活かし、社会実装していけるような取組みを推進していきたいと石井氏は話を締めくくった。

「未来Alumni/J-startupsの活動報告」

▲株式会社エイシング 代表取締役CEO 出澤 純一 氏 (未来2017/J-Startups)

株式会社エイシングは世界を変える新型独自AI技術の事業展開を行う岩手大発の研究開発型ベンチャーである。製造業に特化した機械への組み込みを前提とした、AIアルゴリズムを開発・提供している。近年、画像認識・機械制御・ビッグデータの解析などさまざまな分野で活用され始めたAIであるが、パラメーター調整や計算コストの課題があるのが現状である。

同社はAIアルゴリズムの開発に着手して15年。エッジデバイスや組み込みシステムなどにも活用できるAIアルゴリズムを生み出し、コンピュータ自身がリアルタイムで学習し、精度の高い予測ができる、機械制御発の世界最速AIプログラムである。メンテナンスフリーで軽量実装、高速学習、高精度、安定動作を実現しており、IoTエッヂデバイスでのリアルタイム学習が可能。2017年2月には 「未来 2017」最終選考会にて日本総研賞を受賞した。今後さらにソリューション提供領域を広げ、東北初のユニコーンを目指す。

▲株式会社カウリス 代表取締役 島津 敦好 氏 (J-Startups)

デジタル化・IoT化にともない、サイバー犯罪が増加の一途をたどり、インターネットサービス運営事業社の3分の1以上がなりすましによる不正アクセスの被害に遭遇している。

株式会社カウリスは、この課題に対して、“本人らしさ”をベースにした独自の判定ロジックで攻撃者のなりすましによる不正アクセスを未然に防ぐ法人向けクラウド型不正検知サービス「FraudAlert(フロードアラート)」を開発。アクセスに使われた端末、IPアドレスなど、約200ものパラメーターをもとにアクセス者がユーザー本人であるかどうかを判断し、「いつもと異なる」時のみ追加認証を求める。同社の強みは、導入コスト。従来のセキュリティ導入費に比べ100分の1となる。

すでにメガバンクをはじめとする金融機関も導入している。

▲【写真左】(モデレーター)III/未来 統括ディレクタ 東 博暢氏

【写真左から】(パネラー)

・経済産業省 経済産業政策局 新規事業創造推進室 総括室長補佐 黒籔 誠 氏

・内閣府 科学技術・イノベーション担当 企画官 石井 芳明 氏

・株式会社カウリス 代表取締役 島津 敦好 氏

・株式会社エイシング 代表取締役CEO 出澤 純一 氏

第一部の最後にはパネルディスカッションが行われた。「大企業と組む時の連携のポイント」と「J-startups認定スタートアップに聞く、政府との連携でこれから期待する事」この2つのテーマからそれぞれの見解を述べた。

東氏:それでは早速、エイシングの出澤さんから、ご自身の経験をふまえてご意見いただきたいです。

出澤氏:はい。政府との連携でこれから期待する事としては、ビザ発給要件の緩和です。海外から人材を入れたいと思う時にやはりビザ問題がでてきます。もし、えこひいきしてもらえるならJ-startups認定企業に海外から優秀な人材が来る場合はビザの発給要件を緩くしてもらう事ができればありがたいですね。

東氏:ありがとうございます。そのあたり内閣府の石井さん、何か策などはありますか?

石井氏:そうですね。企業に関しては起業家ビザ・スタートアップビザをこれから動かしていく予定です。あとは高度人材という部分で、特に海外人材に対しておっしゃる通り、もう少しうまく動かせられる仕組みを構築できればと考えています。

東氏:それでは、次にカウリス島津さんにお聞きしたいのですが、レギュラトリーサンドボックスの活用に関して今まさに経済産業省さんと連携している最中ですが、大企業との連携を含め状況いかがですか?

※サンドボックス…AI、IoT、ブロックチェーン等の革新的な技術の実用化の可能性を検証し、限定された参加者・期間・地域において実証を行い、実証により得られたデータを用いて規制制度の見直しに繋げる制度。

島津氏:大企業さんとの連携に関して、最近、電力会社さん数社とお話をさせてもらっています。社会のインフラを守るひとつとして、電力を供給するというのももちろんですが、地域の不正な取引を消していくというも挙げられます。電力事業法など規制も厳しく、連携として非常に難しいですが、なんとかしていきたいと思っていたところJ-startupsに認定されて非常にやりやすくなり、ありがたかったです。

60年以上続く電気事業法に比べ、個人情報保護法はIT・テクノロジーの方から改正がかなり進んでいます。インターネットがない時代の法律があるからこそ生まれる不利益はあってはならないです。そこをつぶして行けるように政府の方には柔軟に動いていただきたいと思っております。

黒籔氏:私の所属する新規事業創造推進室では、スタートアップの支援と規制改革の推進をミッションとしています。例えばロボットの場合ですと一つの製品の認証をとるのに、タイプによっては4つ5つの法律の認証をとらなければなりません。それをすべてスタートアップ側でピックアップし、進ませるのは不可能だと思います。そこのサポートをするのも我々の使命ではないかと思っています。今設定されている規制も何十年も変わっていない規制も多くあり、動きにくく・不利益が生まれる場合があり得ます。そこも私たちから、変えて行けたらと思っています。

東氏:みなさまありがとうございます。このようにスタートアップや各省庁の方とも連携しながら、フラットに新しい事業を創って行けたらと思います。

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