犬の“鼻紋”で身元を証明するS’moreがプレシリーズA実施、累計調達額1.5億円超へ
犬の鼻の模様をAIで読み取り、個体を識別する“鼻紋認証”技術でペットID領域のDXに挑む株式会社S’moreが、プレシリーズAラウンドの資金調達を実施し、累計調達額はデットを含め1.5億円を突破した。
今回のラウンドには、Dual Bridge Capitalをリード投資家として、ANOBAKA、起業家・投資家の吉田浩一郎氏、須藤憲司氏、川崎裕一氏、さらに動物病院グループ企業などが参加。調達した資金は人材採用の強化、鼻紋認証ペットIDプラットフォーム「NoseID」の事業推進、全国的な提携網の拡大、ユーザー体験の最適化に投じられる予定だ。
鼻紋認証が切り開く「ペットのデジタル戸籍」
S’moreが開発する「NoseID」は、犬の鼻紋をAIで解析し、改ざん不可の個体識別IDとして登録するプラットフォームである。出生情報、販売記録、飼育ログ、医療履歴などを一貫して紐づける仕組みは、戸籍を持たない犬の情報断絶というペット産業の構造課題を直接解決する。
2025年の動物愛護法改正により、出生情報や飼育状況のデジタル管理需要が急速に高まる中、同社は既にペットショップ・ブリーダー向けに導入を拡大。2025年4月時点で導入・協力店舗数は420店を突破しており、フェーズは実証段階から本格展開へ移行しつつある。
「鼻パス」で暮らしを便利に──体験軸で広がる応用可能性
NoseIDアプリでは、鼻紋照合による証明書機能に加え、体重・食事・通院などを記録するヘルスログ、迷子・災害対策機能、LINE連携による飼育相談など、ユーザー体験の向上に直結する機能がすでに実装されている。
今後は行政DX、保険、動物病院カルテ、トリミング履歴などの外部データと接続し、鼻紋を起点とする“生涯データ統合”の実現を目指す。まさに「ペットの社会的ID」として機能する未来が見えてきた。
業界の変革を後押しする投資家・事業者の期待
リード投資家であるDual Bridge Capitalの伊東氏は「鼻紋認証技術は個体識別の概念を変え、ペット産業の情報インフラとなる可能性がある」と語る。ANOBAKAの葛西氏も「ペットの“推し活”時代において、NoseIDは初めて犬を迎える家族の強い味方となる」と評価した。
また、吉田浩一郎氏・須藤憲司氏・川崎裕一氏らも、同社の“技術×産業DX×社会性”の組み合わせに期待を寄せている。代表取締役CEOの澤嶋氏は、今回の調達に寄せて「ペット業界の現場に深く関わるほど、情報の不透明さや構造的な課題の多さに直面し、変革の必要性を痛感しています。すべての命をID化し、出生から最期までのデータをつなぎ、人とペットが、安心して共に生きるための社会インフラを創ることを目指しています。」と述べている。
今後の展望
S’moreはこれまで、ASACやAPT Womenなど多数のアクセラレーション・プログラムに採択され、福岡ITスタートアップ大賞などの受賞実績を持つ。現在、同社では事業開発責任者候補など採用を強化しており、事業拡大フェーズに入った今、次のフェーズへ大きな舵を切る。鼻紋がつくる未来は、単なる便利アプリではなく、社会構造を変える基盤となるかもしれない。
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(TOMORUBA編集部)