
カイコ由来のバイオ原料を手がけるMorus、シリーズAで7億円を調達
カイコ由来のバイオ原料を手がけるMorus株式会社は、シリーズAラウンドにて総額7億円の資金調達を実施した。同社はASEANおよびEU市場への展開と量産体制の構築、そして栄養学に基づく臨床研究を加速させる方針だ。
今回のラウンドには、スパークス・アセット・マネジメント(未来創生3号ファンド)、みずほキャピタル、東大創業者の会ファンド、エンジェル投資家の宮田昇始氏などが新たに参画。既存株主のDG Daiwa VenturesやSMBCベンチャーキャピタル、信金キャピタルも追加投資を行い、Morusの事業基盤強化に寄与する。
Morusが開発・供給するのは、カイコの幼虫と桑の葉をベースにした独自原料「MorSilk® Powder」。血糖値コントロールや整腸作用などの健康機能を持ち、食品・医療・化粧品といった多分野での応用が期待されている。同社は信州大学や米イリノイ大学、シンガポールの研究機関A*Starとの連携を通じ、科学的根拠に基づいた製品開発を推進中だ。
伝統×サイエンスで「お蚕様」が世界を変える
カイコは、日本において長年「お蚕様」として親しまれてきた伝統的産業素材。かつて渋沢栄一も重視した養蚕業だが、化学繊維の登場により国内産業は衰退の一途をたどってきた。そうしたなか、Morusはカイコを「次世代素材」として再定義し、世界市場への展開を進めている。
背景には、バイオエコノミー市場の急拡大がある。OECDは2030年までに世界市場が200兆円に達すると予測。日本政府も「バイオ戦略」を掲げ、国内市場を2030年に53兆円規模まで成長させる目標を打ち出している。Morusは、そうした世界的潮流の中で、伝統と最先端技術を融合した事業モデルを構築している。
代表の佐藤亮氏は、東京大学アメフト部出身で、伊藤忠商事やベンチャーキャピタルを経て2021年にMorusを創業。スポーツ栄養学と事業開発の知見を生かし、機能性原料の開発に取り組んできた。「昆虫食や代替タンパクを超えた、高機能・高付加価値な素材の産業化を目指している」と語る。
ASEAN・EU市場進出へ 産官学で挑む「グローバル蚕業」
Morusは既にシンガポール法人を設立し、ASEAN最大級のアグリフード展示会「AFTEA」にも出展。2024年に同国で食用昆虫の規制緩和が進んだことを受け、プロダクトの試験販売を開始している。また、欧州向けにはEU基準に準拠した独自の安全規格を整備し、輸出体制を整えている。
国内では農水省や経産省、NEDOなどからの公的支援を受け、グリーンバイオやディープテック領域の重点企業としての位置づけを確立。信州大学を中心に、基礎研究から応用、量産、海外展開まで一気通貫の体制を築いている。
「でかい、逃げない、共食いしない」というキャッチーな特徴に加え、自然な抹茶風味や機能性による差別化も功を奏し、海外バイヤーやOEMパートナーからの問い合わせも増加中だ。今後は、国内外でのプラント建設、人材採用、販路拡大を通じ、持続可能な新素材産業の中核企業を目指す。
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(TOMORUBA編集部)