
紙とデジタルの利点を融合 Govtechスタートアップ・xIDとDNPコアライズが自治体通知業務DXの実証実験を実施
マイナンバーカードを活用したデジタルIDの提供で自治体支援を行うGovtechスタートアップ、xID株式会社は2025年6月26日、大日本印刷株式会社(DNP)グループのBPO事業会社であるDNPコアライズと共同で、自治体の通知業務におけるデジタル化と業務効率化に向けた実証実験を実施したことを発表した。
名古屋市を舞台に行われたこの取り組みでは、従来の紙による通知に加え、マイナンバーカードで本人確認したスマートフォン通知を活用するハイブリッド運用を試み、自治体職員の業務負荷軽減と住民サービスの向上を両立させる新たな通知の形を検証した。
名古屋市と連携、「確実に届く通知」を再設計
背景には、名古屋市が進める業務の効率化と住民サービスの質向上の両立がある。これまでSMS通知なども試行してきたが、リンクのアクセス率の低さなど課題が残っていた。今回の実証では、xIDが提供するデジタル郵便サービス「SmartPOST」を活用し、紙とデジタル双方の利点を組み合わせた「送り分け」による通知を導入した。
対象は「教育・保育給付認定有効期間終了のお知らせ」。実験では、通知前に対象者へ案内を行いデジタル通知の利用者を獲得した上で、紙とデジタルのハイブリッド通知を実施。さらに職員の業務負担感をアンケートで調査し、通知業務全体の改善点を抽出した。

年間1,200時間削減の可能性も 実証の成果と課題
実証の結果、紙とデジタルのハイブリッド運用が実際の業務フローとして成立することを確認。職員の業務負担感も可視化され、年間を通じて運用すれば最大で約70%、約1,200時間の業務量削減が見込めることが分かった。これにより、通知データ成型などにかかる負荷を明確化し、今後の施策として課題解決のロードマップを具体化した。
一方で、名古屋市の担当者は「スマートフォンアプリによる通知だけでは100%の電子化は難しく、紙通知との併用が必要」とし、双方の利点を活かす運用の重要性を強調。今後はデータ授受方法など残された課題にも対応し、さらなる利便性向上を目指す。
住民サービス向上へ 行政DXの展望
xIDは、今回の実証成果を踏まえ、今後も自治体や民間企業と連携し、行政通知業務の最適化と住民サービスの利便性向上に取り組む方針だ。SmartPOSTは、住民がスマートフォン上でいつでも通知を確認・保管できる利便性を備え、既存の業務フローを大幅に変えずに段階的なデジタル移行を支援する点が特徴だ。
xID・代表取締役CEOの⽇下氏は「紙とデジタルのハイブリッド化は、行政サービスの現実的なデジタル化の形。Govtechスタートアップとして、持続可能な社会を見据え、自治体のDXを支えていきたい」とコメントしている。
今後も「xIDアプリ」や「SmartPOST」を活用した多様な実証とサービス改善を重ね、全国の自治体の業務効率化と住民の利便性向上に寄与する取り組みが注目される。
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(TOMORUBA編集部)