
「コーヒー2050年問題」に向けた実証実験を実施──森永乳業×兼松×TOWINGが“宙炭(そらたん)”で描く脱炭素の未来
森永乳業株式会社、兼松株式会社、名古屋大学発のグリーン&アグリテックスタートアップ・株式会社TOWINGの3社は「コーヒー2050年問題」に対する革新的な取り組みとして、ブラジルのダテーラ農園におけるバイオ炭「宙炭(そらたん)」の実証実験を開始した。この協業は、気候変動の影響でコーヒーの生産が困難になるとされる2050年に向けた先手の打ち手であり、サステナブルなコーヒーの供給体制構築に向けた一歩となる。
「宙炭」が切り開く環境再生型農業の可能性
今回の実証実験では、TOWINGが開発した高機能バイオ炭「宙炭」をコーヒー豆の育苗地に散布。収穫量や豆の品質、土壌の炭素貯留量などを総合的に分析し、農業の環境再生力を測定していく。宙炭は未利用バイオマスから生成され、土壌微生物の活性化を促すことで、農地の地力を高めるとともに、温室効果ガスの排出削減にも貢献する。将来的にはこの成果をより広範囲に適用し、ダテーラ農園の持続可能な生産体制の強化と、サプライチェーン全体の脱炭素化を推進する狙いだ。
カーボンインセットでつなぐ、生産者と消費者の未来
この取り組みの鍵となるのが「カーボンインセット」という考え方だ。従来の「カーボンオフセット」がサプライチェーン外部の排出削減に頼るのに対し、カーボンインセットはサプライチェーン“内部”で排出量を削減し、その成果を循環させる仕組みである。ダテーラ農園での炭素削減が、森永乳業の商品ライフサイクルに直結することで、企業としての脱炭素目標の達成にも寄与する。これにより、消費者が手にする一杯のコーヒーが、気候変動への対応に間接的に貢献する構図が生まれる。
異業種連携が生み出すサステナブルなエコシステム
今回の協業は、食品メーカー、商社、スタートアップという異なる立場の3社による連携によって成り立っている。森永乳業は「マウントレーニア」シリーズなどを通じ、20年にわたってダテーラ農園と関係を築いてきた。一方、兼松はスペシャルティコーヒー輸入の先駆者として、高品質なコーヒー豆の供給網を確保。TOWINGはバイオ炭という革新的技術を武器に農業分野から環境課題に挑む。
コーヒーを、未来の子どもたちへ。2050年に向けた挑戦はつづく
世界の気温上昇がこのまま続けば、2050年にはコーヒー栽培に適した土地が現在の半分にまで減少するとの予測もある。企業の垣根を越えた今回の取り組みは、次世代の農業モデルや、循環型社会へのヒントを提示する。森永乳業は「サステナビリティ中長期計画2030」を掲げ、Scope3の温室効果ガス排出量10%削減を目標に定めている。兼松もまた、「農業・食品GX」に力を入れ、持続可能なサプライチェーンの構築を進めている。
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(TOMORUBA編集部)