
銭湯で選挙を知る——銭湯特化型デジタルサイネージサービス『ふろマド』が政策広報の実証実験に参画
株式会社SENSEは、2024年にリリースした銭湯特化型デジタルサイネージサービス『ふろマド』を通じ、政治広告・政策広報の新たなあり方を探る実証実験に参加することを発表した。本実験は、一般社団法人政策広報DX協会が主導し、東京都議会議員選挙の告示日前後となる6月10日〜16日を対象期間として行われる。
銭湯という日常の場から、政治との接点を
『ふろマド』は、銭湯やスーパー銭湯、サウナ施設などに設置されたデジタルサイネージを活用し、動画広告を配信するメディアである。従来のポスターやチラシと異なり、映像によるダイナミックな表現で利用者の視線を惹きつけることができる点が特徴だ。特に脱衣所のドライヤー前など、利用者が自然と目を向ける場所に設置されており、広告の視認性が高いという。
今回の実証実験では、『ふろマド』をはじめとするリテールメディアにおいて、各政党が出稿した政治広告を配信。広告内容は、政策広報DX協会および法律・選挙の専門家による審査を経て掲載される。これにより、偏りや誤情報の排除にも配慮された構成となっている。
フェイクニュースの対抗手段としての「浴場メディア」
SNSや動画メディアを通じた政治広報は、若年層の政治関心を高める一方で、フェイクニュースの拡散やフィルターバブル、エコーチェンバー現象といった弊害も浮き彫りとなっている。
その点、日常生活の延長線上にある銭湯のような「ローカルな共通空間」での情報発信は、過度なバイアスを避けた信頼性のある接点をつくる可能性を秘めている。SENSEは「デジタルサイネージ・リテールメディアは、社会インフラとして社会課題の解決に資する」として、この新たな取り組みに期待を寄せている。
銭湯文化の再興と広告メディアの融合
『ふろマド』は、銭湯を単なる「広告枠」として捉えるのではなく、地域文化やコミュニティとの連携を重視している。広告収益の一部を施設へ還元する仕組みにより、経営支援と地域共生を両立させる点も注目に値する。
また、今後は大阪・東京といった都市圏から全国の地方都市への展開も視野に入れており、広告主向けのサポート体制も拡充中だ。すでに温浴施設での物販支援やイベントプロデュースも手掛けており、「五感で楽しむ銭湯体験」を軸に、認知から購買までをシームレスに結びつける広告導線の構築を進めている。
地域の橋渡し役としての使命
SENSEは「お風呂文化を通じて地域の橋渡しを」というビジョンを掲げ、銭湯という伝統的空間にデジタルの新風を吹き込んでいる。減少傾向にある銭湯の存続を支援すると同時に、地域企業との協業や子育て支援、インバウンド対応など、多様な社会課題への対応を目指している。
今回の実証実験は、そうした姿勢を社会的な文脈に広げる一歩であり、政治と生活者、都市と地方、過去と未来を結ぶ新たな挑戦ともいえる。
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(TOMORUBA編集部)