定性データの活用で顧客とのエンゲージメントを高める。GMOリサーチとの共創により生み出される「新しいコミュニケーションの形」とは?
企業と消費者との関係性は多様化・複雑化している。特にインターネット上においては顧客の顔が見えず、行動や思惑も把握しにくい。そんな顧客をどのようにコミュニケーションを取ればいいのか苦慮している会社も多いのではないだろうか。
その一方でマーケティングの重要性が増しつつある中、アジア最大規模のアンケート会員ネットワークを保有するGMOリサーチは、その規模をさらに拡大させようとしている。
GMOリサーチのアンケート会員ネットワーク「JAPAN Cloud Panel」は、日本最大規模となる1,130万人のモニターを抱え、アジア13カ国で展開するアンケート会員ネットワーク「ASIA Cloud Panel」は2,119万人にものぼる。まさに日本を代表するインターネットリサーチ企業の一社だ。
同社はアンケート会員ネットワークのさらなる拡大を狙い、「メンバーシップ・マーケティング・ソリューション」を提供している。これは、パートナー企業が持つ会員基盤や媒体を「JAPAN Cloud Panel」と連携させる取り組みだ。
なぜ、GMOリサーチは社外パートナーとの連携・共創に本格的に乗り出したのか。今回、同社でアライアンスを担当するチームの安藤健一郎氏と大野聖二氏に話を聞いた。
(※GMOリサーチの共創テーマ・パートナー募集についての詳細はコチラをご覧ください)
【写真右】取締役 CTO パネルイノベーション本部長 安藤健一郎氏
前職を退職して世界中を放浪した後、GMOリサーチに入社。現在は取締役兼CTOとして「メンバーシップ・マーケティング・ソリューション」の責任者を務める。
【写真左】メディア開発部 部長 大野聖二氏
マーケティングプランナーを経てGMOリサーチへ転職。現在はメディア開発部の部長としてinfoQの運営や商品企画に携わっている。
アンケート会員ネットワークの規模が広がれば、今とは違う世界観が現れる
――GMOリサーチは既に日本・アジアにおいて巨大なアンケート会員ネットワークを持っています。今、パートナー企業とのアライアンスに注力するのはなぜでしょうか。
安藤 : 私たちがめざすビジネスを実現するためには、今のアンケート会員ネットワークのリーチ数ではまだ不十分だと考えています。私たちは「想いを、世界に」というフィロソフィーを掲げているのですが、これはつまり、生活者や企業の想いを有機的に届けていきたい、ということです。
ですが今、それぞれの声は双方向なものになっているのか。本当に声を引き出せているのか。そう考えると、私たちはまだまだ小さいポーションしか持っていません。さらに有機的なつながりを生み出していくためには、今より大きなネットワークをつくっていく必要があると考えています。
――めざしている世界観について、より詳しく聞かせていただけますか。
大野 : 現在はIoTなどによって消費者とより多くの接点が持てるようになってきました。アナリティクスによってデータを見ることもできますが、一方で企業と消費者の生の関係性は薄れてきているように感じます。
5〜10年前であれば、インターネットで検索すれば知りたいことにたどり着けたのが、今は求める情報が得られにくくなっています。例えば面白い映画が観たい時、趣味が合う友人と話せばすぐに見つかるのに、インターネットでは見つけることが難しい。それと同様に、企業にとっても知ることが出来るデータが多すぎることによって、消費者のことを理解することが難しくなっています。
そこで、消費者の声や企業の声を有機的につなぎ、双方向のコミュニケーションが円滑になるような世界を作っていければと考えています。
――アンケート会員ネットワークの規模が今以上に拡大していくと、どのような変化が起こるのでしょうか。
安藤 : アンケート会員の人数が増え、仮に1億人とコミュニケーションが取れるようになったとすると、同じアンケートを実施しても、まったく違う結果が出るかもしれません。これは選挙と同じ構造ですね。投票率が低い若年層も含めて有権者の全員が投票すれば、結果は違っていたはずだとよく言われます。リーチできる規模が大きくなると、今とは異なる世界観が現れてくるでしょう。
顧客とのコミュニケーションに課題意識を持った会社と出会いたい
――どのようなパートナーと連携したいと考えていますか。
大野 : デジタルマーケティングで変革したいと考えているメーカーなどの企業、ユーザー分析に強い企業、コミュニケーション系のサービスを持つ企業などが挙げられます。ある電機メーカーを例に挙げると、商品を購入した後にユーザー登録してくれる人が少なく、誰が、どのような理由で商品を買っているのかわからない、という悩みを抱えていました。
こうした課題は、私たちとの連携で解決が可能です。自社の顧客基盤を持ちながらも、まだインターネット上で活用できていない企業がいれば、ぜひ連携したいです。
安藤 : ユーザーとの距離を近づけようとしている会社と出会いたいですね。接客で言うと、今まで店頭で1対1の関係だったものが、インターネット越しで1対nになり、顔が見えなくなっています。誰とコミュニケーションしているかわからない。そこに問題意識を持ち、心の通った世界をつくろうとしている人たちがいるといいですね。
――連携事例を教えていただけますか。
大野 : 海外のある航空会社と合意に至った例があります。航空業界はポイントプログラムに昔から力を入れており、顧客をロイヤルカスタマーとして育てる取り組みの点で非常に進んでいる業界です。また、ポイントカードを発行している会社と連携する話も最近は増えてきていますね。
安藤 : あるWebサービスをつくる際にユーザーのデータを求めていたスタートアップ企業に対して、私たちのネットワークを提供するような話もありました。より便利な世界をつくろうというときに、GMOリサーチのリソースを活用してユーザーがアクションを起こして、初動を生むことができる。それは私たちの強みですし、ぜひやりたいことです。
定性データにより顧客とのエンゲージメントを高める
――連携するパートナーに対して、GMOリサーチはどのような価値を提供できるのでしょうか。
安藤 : アジア最大規模のアンケート会員ネットワークを運営していることはもちろんのこと、顧客とのエンゲージメントを高められるということが一番の価値だと思います。私たちは多様なアンケートを配信しているため、会員はポイントを貯めるアクションを習慣化させることができます。私たちと連携することで、コストを抑えながらも顧客に還元できるチャンスをつくり、顧客基盤の活性化を図ることができます。
大野 : 企業側に対してはアンケートを作成して配信するツールも用意しているため、顧客に声を直接収集するための基盤も提供可能です。これは実際の例ですが、顧客のコメントをもとにサイト改善や店舗改善を行い、あるサービスにおける入会後のアクティブ率の下がり幅を40%も改善できた例もありました。また、顧客の声が聞けることにより、サービスを運営している人のモチベーションが上がるという副次的な効果も生まれました。顧客とのエンゲージメントを高めていくと、働く人のエンゲージメントも高まりました。
――定量データだけではなく定性データも活用できることで、エンゲージメントが深まるというわけですね。
大野 : はい、数字だけではなく会員の人となりが見えることで、顧客との関係性も変わります。そうなると、運営者側のマインドも変わります。GMOリサーチの社内においても、「モニターファースト」という言葉がよく使われるようになってきました。私たちがリサーチ業界にいるからこそ変えていけることもあると考えています。
安藤 : だからこそ、私たちが連携したいパートナーは、自社の顧客基盤を持っていて、顧客の声を今以上に聞き、マーケティングを良くしていきたいと考えている企業になります。現在はさまざまな広告手法で企業から消費者に発信し、100%近い人口にまでリーチすることができますが、一方向のベクトルでは不十分です。
今後はパートナーシップを広げ、消費者から企業へのコミュニケーションも促進して、双方向の矢印を描けるようにしていきたいです。
(構成:眞田幸剛、取材・文:玉田光史郎、撮影:加藤武俊)