「有機半導体レーザー」の実用化に挑戦するKOALA Tech、シリーズB追加ラウンドとして5.7億円の資金調達を完了
株式会社KOALA TechはシリーズB追加ラウンドとして、既存投資家である「九州広域復興支援ファンド」、株式会社FFGベンチャービジネスパートナーズ、Propagator Ventures AS、新規投資家である京都大学イノベーションキャピタル株式会社、ゆうちょ Spiral Regional Innovation Fund、九州電力株式会社、株式会社ゼンリンフューチャーパートナーズ、グローブアドバイザーズベンチャーズLLP、株式会社エイチ・アイ・エスなどから合計5.7億円の資金調達を完了したことを発表した。昨年の調達と合わせて当社のシリーズB累計調達金額は総額9.2億円となる。
資金調達の背景と目的
KOALA Techは、広く普及しているスマートフォンディスプレイ用の有機EL(OLED)技術を基盤に、いわゆる「レーザー版有機EL(注)」と呼べる発光素子の実用化を目指している。この技術により、スマートグラスなどのXRデバイスや医療用ウェアラブル機器において、従来技術では困難だった高輝度の画像表示や高精度な測定が可能になることが期待されている。
(注)有機半導体レーザーダイオード(Organic Semiconductor Laser Diode, OSLD)
KOALA Techは、2024年5月に米国カリフォルニア州で開催されたSID Display Week 2024において、権威あるDistinguished Paper Award(優秀論文賞)を受賞した。この受賞は、同社が開発した新しい青色発光素子が、ディスプレイ分野において新たなソリューションとして高い注目を集めた結果といえる。SID Display Weekを機に、業界内での関心が高まっており、青色に続く赤色、緑色の発光素子を迅速に開発し、ディスプレイ技術としての可能性をより具体的に示すことが急務となっている。
これまでKOALA Techの開発資金は、主に九州関連の投資家の支援によって支えられてきた(注)。九州の大学発シーズを基に、グローバル市場への展開を目指す同社のビジョンに共感しており、今回も、九州に基盤を持つ投資家や、地方発のイノベーション、大学発シーズの成長を支援する投資家から協力を得ることができたという
(注)累積外部調達金額の約55%
調達した資金を活用し、3色発光素子の開発を早期に完了させ、ディスプレイソリューションとして検証を進めるとともに、発光寿命などの特性向上に取り組んでいく。研究開発、事業開発の体制拡充に着手しており、調達した資金は開発を担う優秀人材の確保にも充当される。
将来の展望
スマートフォンに次ぐ次世代プラットフォームデバイスとして、スマートグラスを含むXRデバイスの普及が期待されている。完全にハンズフリーで利用できるウェアラブルデバイスが広まることで、農業、漁業、建設、運輸など、スマートフォンでは片手が塞がってしまい恩恵を十分に享受できなかった業界に加え、ヘルスケア、教育、観光など、リアルな風景とバーチャルな画像がシームレスに一体化することで新たな体験価値を提供できる業界で、大きな変革が期待される。
しかし、こうしたデバイスの普及には、軽量化、小型化、高画質化、低消費電力化といった技術的な課題の解決が必要。KOALA Techは、これらの課題の根底にあるXRデバイスの光学システム、つまり「画像を光として目に届ける技術」に革新をもたらすべく、「レーザー版有機EL」の実用化に取り組んでいく。
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