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【インタビュー/Chief Innovation Officer(CINO)・横田氏】 イノベーション創出活動”Yume Pro”を始動させたOKIの狙いとは?

【インタビュー/Chief Innovation Officer(CINO)・横田氏】 イノベーション創出活動”Yume Pro”を始動させたOKIの狙いとは?

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Apple、Google、マイクロソフトなど、先進的なグローバル企業が名を連ねるトムソン・ロイター「TOP 100グローバル・テクノロジー・リーダー2018」。その1社として選出されているのが、OKIだ。

1881年1月(明治14年)の創業以来、OKIの保持する高い技術力は、日本の成長に大きく寄与してきた。 国産電話機の製造にはじまり、現在では銀行やコンビニのATMなどは、OKIが圧倒的なシェアを誇っている。その一方で、水中での物体の発する音から不審物等を探知できる水中音響センシング技術や、ホンダとの自動車用エンジン天下装置の開発、直近ではディープラーニングを用いた「感情推定技術」の研究開発を行うなど、多岐にわたる技術・製品を生み出している。

そんなOKIでは、2017年10月にイノベーション推進プロジェクトチームが発足。2018年4月には、イノベーション創出活動”Yume Pro”という取り組みがスタートし、社長自らその旗振り役となっている。

このようなOKIの新たな取り組みを牽引しているのが、イノベーション責任者=Chief Innovation Officer(CINO)である横田俊之氏だ。 そこで今回は、経済産業省を経て2016年にOKIにジョインした横田氏に、”Yume Pro”という取り組みの背景や具体的内容について詳しく伺った。

▲沖電気工業株式会社 執行役員 経営基盤本部長 兼 Chief Innovation Officer(CINO) 横田俊之氏 

1983年、通商産業省(現・経済産業省)入省し、ベンチャーや地域企業、ソーシャルビジネス振興を担当。近年では、2014年にはジェトロ・ニューヨーク事務所長に就任し、J-Biznet「北米ゲートウェイ」ビジネスモデルを手がける。2016年にOKIに入社し、現在は同社のイノベーション責任者として、”Yume Pro”を牽引している。

5年後には会社が無くなるかもしれない。危機感がイノベーションへの取り組みのキッカケに。

――まず、横田さんの略歴とOKIにジョインしたキッカケについて、お聞かせください。

横田氏 : 私は経済産業省で30年を超えるキャリアを歩んできました。キャリアのおよそ1/3は、ベンチャー企業や中小企業を支援することに費やしてきたのです。2013年~2014年には、よろず支援拠点や海外展開事業である「ネクスト・マーケットイン事業」を手がけ、2014年~2016年にはジェトロ・ニューヨーク事務所長に就任し、J-Biznet「北米ゲートウェイ」という米国でのビジネス立ち上げ支援事業に取り組んでいました。

これまでは企業を支援することに尽力していましたが、今後のキャリアにおいては自らが企業の一員として事業を牽引する経験を積んでみたい。そうした思いから、2016年にOKIに入社しました。

――数多くある事業会社の中、OKIのどういった点に魅力を感じたのでしょうか?

横田氏 : 以前、総務省に出向し、情報通信技術の海外への売り込みを担当していたことがありました。その際、通信機器メーカーでもあるOKIの技術力に興味を持っていたのです。OKIは業界内のプレゼンスも高く、ポテンシャルもある。そうした点に魅力を感じましたね。

――OKI入社後はどのような業務に従事されていたのでしょうか?

横田氏 : 昨年度は、政策調査部長として、経営層にサイバーセキュリティ―や5G(第5世代移動通信システム)など、会社の成長にとって必要な政策を提言する役割を担っていました。イノベーション政策の動向についてリサーチしていた時に、Japan Innovation Network (JIN)専務理事・西口尚宏さんにお話しを伺う機会があったんです。

その場で、組織的にイノベーションをおこす「イノベーションマネジメント」手法が確立されつつあり、国際標準(ISO)化の動きも加速していることを知りました。イノベーションをおこす仕組みの導入に乗り遅れると、5年後にもう会社の存続は難しくなる。OKIが無くなってしまうかもしれない。

――強い危機感を覚え、経営層にイノベーションマネジメント導入について説いたのです。その翌日、社長である鎌上から「OKIも、イノベーションへの取り組みを積極的に進めていきたいので、責任者になって進めて欲しい」との指示を受けました。その後、昨年10月に、イノベーション推進プロジェクトチームを発足させました。

まず1000人に研修を実施。OKIオールでの取り組み。

――イノベーション推進プロジェクトチームの発足が、”Yume Pro”の萌芽につながったのですね。実際、そのチームでは、どのようなことに取り組まれたのでしょうか。

横田氏 : まず取り組んだのは、社員インタビューです。経営陣や新規事業に取り組んだ経験を持つ社員、約50名を対象に、JINのイノベーションコンパス「羅針盤」に従ってヒアリングをしていきました。 その結果、「新規事業にチャレンジしても評価されにくい企業体質」や「提案能力の低さ」などの課題が浮かび上がりありましたが、一番大きな課題は、「会社のビジョンはあるものの事業部ごとの方向性が不明確」だということでした。

お客様の声に一生懸命耳を傾けるだけでは不十分で、お客様の先にいるエンドユーザー、その背景となる社会の変化を押さえなければ、課題解決が難しい時代となりました。そこで、目の前のことだけではなく、SDGs(持続可能な開発目標)に掲げられている社会課題を解決することを、事業創出の目的に置きました。それが、イノベーション創出活動”Yume Pro”の軸になっています。”Yume Pro”は2018年4月から本格的に始動しており、OKIのHP内にもイノベーションサイトを立ち上げました。

――全社をあげてイノベーション活動に取り組んでいくために、社内でも研修・勉強会などをスタートさせていると伺いました。

横田氏 : 「1000人研修」のことですね。まず2018年度中にはOKIグループ約2万人のうち、1000人に向けて浸透させていきます。すでに、役員や部門長クラスには研修を終えており、受講者にはSDGsのバッジを配布しています。さらに、社長自身がイノベーション活動について社員200人と語らう場を設けていきます。

――”Yume Pro”は、どのようなメンバーで構成されているのでしょうか?

横田氏 : 社内にはこれまでにもイノベーションや新規事業に取り組む組織はあったのですが、各事業部にあったり、営業部内にあったり、研究開発センターにあったりと点在していました。今回、”Yume Pro”を始動させるタイミングで、それぞれのバッググラウンドを持つメンバーを招集し、約10名の組織としてスタートさせています。彼らの出身母体の部署とも緊密に連携を取りながら、「オールOKI」の体制でイノベーション創出を実現させていきます。

イノベーションパートナーに提供できる最大の魅力は、世界的な技術力

――今回”Yume Pro”では、医療/物流/生活・住宅といった、3つの領域にフォーカスされています。OKIと共に、イノベーション創出に取り組む魅力とは何でしょうか?

横田氏 : 当社には、全国の銀行・コンビニエンスストアのATMや発券機といった端末や、センシング技術、監視・保守・警備などのネットワーク技術といったふんだんなリソースがあります。これらの根底を通じる技術力こそが、OKIが提供できる最大の魅力といえるのではないでしょうか。

――なるほど。

横田氏 : その技術力の証左となるのが、AppleやGoogle、マイクロソフトといった先進的な企業ともにトムソン・ロイター「TOP 100グローバル・テクノロジー・リーダー2018」に選出されたことです。 

「TOP 100グローバル・テクノロジー・リーダー2018」は、財務、経営および投資家からの信頼、リスクとレジリエンス(危機・問題発生時等の強靭性)、法令順守、イノベーション、人的・社会的責任、環境への影響、社会からの評価という8分野におけるデータをもとに、独自の分析手法により総合的・客観的に導き出されたものですが、OKIはこの中でもイノベーション、品質責任といった分野において高評価を得ています。実際に、私がOKIに入社した際にも、その技術力には驚かされましたね。

――例えば、どのような技術に驚きを感じたのでしょう?

横田氏 : そうですね、一例をあげるとすると、「光ファイバーセンサー」という検出装置です。これは、総延長10キロメートル以上の光ファイバーを様々な場所に張り付けておくだけで、個々のセンサーなど設置しなくても温度変化やひずみ、振動の起こった場所と大きさが瞬時にわかる装置なのです。簡単な仕組みで検出できるため、低コストで提供可能。化学プラントや公共の橋梁・トンネルなどの構造物向けの事業展開を検討しています。さらには、防犯対策としても利用可能でしょう。 

また、防衛分野で高い信頼を得て活用され続けている水中音響センシング技術にも驚きました。この水中音響センシングでは、対象物が移動時に発する放射音を抽出することで、魚群や不審物、不審者などを探知することができるのです。 さらに、1980年代から1990年代には、OKIはホンダと自動車用エンジン点火装置やECUを開発。鈴鹿8時間耐久ロードレースで優勝を飾ったこともあります。

――さまざまな分野・領域で、OKIの技術力が活かされているのですね。その他、イノベーションパートナーに魅力となりそうな点はありますか?

横田氏 : PoCの予算については、事業部側ではなく、私たちが持っているなど、社内体制を作っています。ですので、スムーズなリーンスタートアップが可能となります。また、2018年5月には東京本社内にイノベーションルームを新設。ツリーハウスのコンセプトで、くつろいだ雰囲気の中で、共創アイデアが生み出しやすい仕掛けを取り入れた仕様にしています。すぐに検討して、プロトタイプを生み出せる場になるでしょう。

さらに、当社は官公庁や通信キャリア、金融機関とも長年の信頼関係を構築しています。ですので、社会インフラの領域で自社の技術やアイデアを活かしたいとお考えの企業であれば、ぜひお声がけいただきたいと思います。

――最後に、イノベーションパートナーに向けたメッセージをお願いします。

横田氏 : 2018年度では、まず10社程度のイノベーションパートナーと共創合意をし、プロジェクトを進めていきたいと考えています。大企業やベンチャー/スタートアップなど、企業規模は問いません。私たちと同じようにビジネスを通じて社会課題解決したいと思っている企業とパートナーシップを結んでいきたいと思います。

※"Yume Pro"の詳細については右記URLもご覧ください。 https://eiicon.net/about/oki-yumepro/

(構成・取材・文:眞田幸剛、撮影:古林洋平)

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