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大企業が持つ技術の6割は「そのまま消滅」する!経産省が公開した「起業家主導型カーブアウト実践のガイダンス」が示すスタートアップ型の知財戦略とは【前編】

大企業が持つ技術の6割は「そのまま消滅」する!経産省が公開した「起業家主導型カーブアウト実践のガイダンス」が示すスタートアップ型の知財戦略とは【前編】

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経済産業省は4月に、「起業家主導型カーブアウト実践のガイダンス」を取りまとめて公開しました。経産省はこれまで、革新的な技術を持つ企業・産業の創出や、その技術によって社会課題を解決することを目指して助成事業などを通じてディープテックスタートアップの成長を支援してきました。

今回公開された「起業家主導型カーブアウト実践のガイダンス」では、スタートアップにフォーカスして、革新的な技術を事業化するための方策を検討し、その成果をガイダンスに落とし込んでいます。

本記事では、独自の技術を持つスタートアップにとっては注目度の高いこのガイダンスの解説を前編・後編に分けて紹介します。前編の今回は、そもそも「スタートアップ創出型カーブアウト」とはどういうものか、概要をまとめて紹介します。

参照ページ:事業会社からのスタートアップ創出を促すための「起業家主導型カーブアウト実践のガイダンス」を取りまとめました

一般的な「カーブアウト」と「スタートアップ創出型カーブアウト」の違い

ガイダンスの概要の冒頭ではまず、一般的な「カーブアウト」と「スタートアップ創出型カーブアウト」の違いについて説明しています。

そもそもビジネス用語における一般的なカーブアウトは「子会社や自社事業の一部を切り出す」という意味で用いられることが多いです。一方でガイダンスで用いられる「スタートアップ創出型カーブアウト」は以下のように定義されています。

「スタートアップ創出型カーブアウト」とは、⾃社組織(組織 OS ・組織的能⼒・資⾦⼒・スピード感)の限界により事業化できない技術を事業化するために、事業会社とは別の法⼈(スタートアップ)を創設することをいう。

創出される事業体は「スタートアップ」であり、VCから資⾦を調達して、急速な事業成⻑を⽬指す。

従来までであれば、カーブアウトには事業の選択と集中の一環として「不採算事業の切り離し」として使われてきたニュアンスがありましたが、スタートアップ創出型カーブアウトにはそのような意味合いはなく、革新的な技術を事業化するためにスタートアップを立ち上げることが目的となっています。

大企業が多くの技術を持っているが、その半数以上が「そのまま消滅」している現状

国がスタートアップ創出型カーブアウトを促進したい背景はいくつかあります。ひとつは、国内の民間部門の研究開発投資のうち、約9割が大企業によって担われていて、この比率は先進国の中でトップクラスであること、もうひとつは、事業化されない技術の約6割が「そのまま消滅」してしまっている現状があります。

この数字から、研究開発費の大部分を大企業が担っているものの、それらの技術の多くは事業化されないまま消滅してしまっていることがわかります。

こうしたもったいない状態を解消するために、国はスタートアップ創出型カーブアウトに以下のような意義を期待しています。

●国全体として、将来において競争力を有する事業や産業を創出する手法

●研究開発の成果が死蔵されることなく、製品・サービスとして、顧客や社会に普及・浸透し、「イノベーション」を実現

●公的な助成による成果や、大学との共同研究は、国の公的投資を含んだものであり、積極的に活用されるべきもの

●スタートアップを起業・経営した経験者が増加。起業経験者が事業会社と人事交流することで、事業会社の風土が刷新され、新規事業創出が促進

●スタートアップが増加することに加え、起業経験者が増えることは、スタートアップ・エコシステム全体の成熟に寄与。また、M&A等を通じ、事業会社も含めたイノベーションを促進

企業がスタートアップ創出型カーブアウトに取り組む意義

もちろん、スタートアップ創出型カーブアウトを推進することは事業会社にとっても意義があります。

ひとつは、従来の手法では困難な新事業の創出が可能になることです。具体的に困難とされている理由はいくつかあります。新規事業を立ち上げようとしても既存事業に最適化された組織であること、不得手な領域で新規事業を立ち上げるにはリスクがあること、既存事業とのしがらみやカニバリゼーションがあることなどです。スタートアップ創出型カーブアウトであれば、こうしたハードルを飛び越えて新規事業にチャレンジすることができます。

ふたつめの意義は、無形資産の価値が形成できることです。事業会社は自社の研究成果を基にスタートアップをネットワーク化させることもできますし、イノベーティブな組織や人材が育つ土壌を育むこともできます。それに伴い人材獲得にも良い影響が出る可能性があります。加えて、技術を磨くことで、技術は消滅するどころか価値が顕在化していきます。研究の方向性にポジティブなフィードバックを獲得できるチャンスも広がっていくでしょう。

もうひとつ重要な視点として、スタートアップ創出型カーブアウトが成功することで、社会課題の解決に繋がる可能性が広がります。技術を起点にして社会課題の解決に寄与することができれば、企業が成長するだけでなく社会的な期待に対応することもできるという考え方もあります。

編集後記

本記事では「起業家主導型カーブアウト実践のガイダンス」の概要を簡潔にまとめて紹介しました。大企業が大量に死蔵している技術をスタートアップとして事業化することは国としても、事業会社としてもメリットがたくさんあることがわかります。

ガイダンスはこのあと本文に入っていきますが、本文では実践的なカーブアウトの手法を提示し、つまずきポイントや事例集なども整理されています。後編では本文で紹介されているTIPSの重要な部分をピックアップしてまとめます。

(TOMORUBA編集部 久野太一)

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