【Open Innovation Guide⑨】 オープンイノベーションの失敗から学ぶ方法
eiiconは、2017年10月12日に”オープンイノベーションの手引き”というコンテンツを公開しました。これは、経済産業省「事業会社と研究開発型ベンチャー企業の連携のための手引き(初版)」を元に、事業提携を成功させるための各種ノウハウをわかりやすくWEBコンテンツ化したものです。自身の課題感や状態に合わせて、検索・読み進めることが可能となっています。もともとの手引きも100ページ以上ある大作ですが、eiiconのコンテンツもボリュームがあるため、eiicon founder 中村が解説していきます。
◆失敗を見極め、再チャレンジする方法
おはようございます。中村です。昨年、5月に初版がリリースされた手引き。ちょうど来月で1年です。次の版もリリースされるのではないかと想定し、この解説も今回でラストにすることにしました!(9回もお付き合いいただきありがとうございました。また、掲載の度、メッセージを下さった読者の皆様もありがとうございました。)
ラストは、「先行企業より学ぶ壁の乗り越え方」の中から「事業シナジー発揮/再チャレンジについて」にフォーカス。先行企業の事例を理解することで、これからの取り組みへのヒントがあればと考えています。
まず大前提ですが、手引きにもあるように一度開始した連携プロジェクトの成功の見込みが薄くなった場合、プロジェクトが不必要に引き延ばされてしまうことを避け、早期に次なるチャレンジに向かうことが重要です。
想像できる部分かもしれませんが、一度進み出した連携・事業の解消のタイミングは途中で考えるものではなく、最初から「場合想定」の中に入れておき、プロジェクト推進経過途中で、連携内容を見直す・解消するなどの条項を盛り込んでおくことが痛手を最小化し、次なる挑戦へ向かうために必要なことです。
日本ではあまりやらない夫婦が多いように思いますが、結婚前に離婚した際の財産分与を決めておくのと似ています。失敗を前提に考えるのではなく、そのケースも想定し対応策はあらかじめ決めておく、ということです。
そして、結果として当初想定した事業シナジーが発揮できなかった場合でも、結果や経緯をうやむやにせず、失敗からの学びを得て次なるチャレンジでの成功確率向上を図ることが重要です。先行企業は再チャレンジでの成功確率を上げるために、社内横断チームによる振り返りから学びを抽出する方法や、専門組織が主導して社内の知見共有を担う方法などを採用しており、手引きには失敗から得られるリターンを高めるためステップを以下の3つに整理しています。
1)あらゆる失敗から学ぶ
2)学びを共有する
3)失敗のパターンを確認するhttps://eiicon.net/about/guidance/task10.html
◆再チャレンジでの成功確率を上げるための仕組み
具体的な取り組み例として、手引きに掲載されているリクルート社の事例を取り上げてみましょう。リクルートは、ホールディングス(RHD)内に知見共有の専門組織を設置。研修や表彰制度を通じて、新規事業提案制度であるNew RINGをはじめとするグループ内のイノベーション活動における成功・失敗事例の抽出と共有を主導しています。
まず、リクルートの巧みな部分は主体と役割を明確に分けて運営をしていることです。「経営」「実行主体」「支援組合」と3つに大きく分担しそれぞれで役割を決めています。
特に「支援組合」の中でも経営コンピタンス研究所は一つ特徴的です。グループ内の成功・失敗事例の抽出、全社への知見 共有を担当する専門部署であり、社内表彰制度や社内外の有識者による勉強会を主催しています。まさに振り返りから学びを抽出するための専門部署と言えるでしょう。
また、実行と支援を兼ね備えるメディア テクノロジーラボ (MTL)も特徴的ですね。New RINGにおいて、リーンスタートアップによる仮説検証及び事業化を支援し、New RING外でのIT技術起点のアイデアのビジネスモデル化/事業化についても同組織が主導しています。
※リクルート社の取り組みはeiiconでも取材しています。
興味のある方は以下からご確認ください。
前編 https://eiicon.net/articles/122
後編 https://eiicon.net/articles/76
◆最後に
事業会社の傾向として、現在実行主体となる「オープンイノベーション」専門の部署が各会社にできつつあります。ただ、まだまだその先を見据えた、「支援」や「方針策定」を司る部署が独立している企業は少ないでしょう。
必ず成功する新規事業やオープンイノベーションは残念ながらありません。1年~2年後ではなく、10年20年先を見据えて事業ラインナップを増やしていくには、DOだけではなく、PLAN DO CHECK ACTIONの仕組みを会社として整えていくことが大切です。
先人たちが失敗し苦労した経験をまとめた内容が詰まっている最高の教科書「オープンイノベーションの手引き」ぜひご一読ください。
eiiconも全身全霊をかけて支援してまいります。本年度もよろしくお願いいたします!
●他詳細はこちらから オープンイノベーションの手引き https://eiicon.net/about/guidance/
解説/オープンイノベーションプラットフォーム「eiicon」Founder 中村 亜由子(nakamura ayuko)