2023年版・世界の都市別スタートアップエコシステムのランキング発表!シリコンバレーが1位の座を維持、東京の順位は?
アメリカの調査会社であるスタートアップ・ゲノムと、スタートアップを支援するグローバル・アントレプレナーシップ・ネットワーク(GEN)は6月15日、「2023 Global Startup Ecosystem Report (GSER2023) 」を発表した。
「GSER2023」は、世界290以上の都市における350万社のスタートアップの分析に基づく調査レポートで、世界の都市別にみたスタートアップエコシステムのランキングが掲載されている。本記事では、同レポートが示したランキングを紹介していく。
シリコンバレーが1位、ロンドンとニューヨークが2位タイ
「GSER2023」のスタートアップエコシステムランキングでは、シリコンバレーが1位となり、ニューヨークとロンドンが2位タイとなった。いずれも2020年から順位を維持している。また、2022年に18位だったシンガポールは、今回初めてトップ10(8位)に入り、大幅に順位を上げた。1位から20位までのランキングは以下のようになっている。
1位:シリコンバレー(アメリカ)
2位:ロンドン(イギリス)、ニューヨーク(アメリカ)
4位:ロサンゼルス(アメリカ)
5位:テルアビブ(イスラエル)
6位:ボストン(アメリカ)
7位:北京(中国)
8位:シンガポール(シンガポール)
9位:上海(中国)
10位:シアトル(アメリカ)
11位:ワシントン(アメリカ)
12位:ソウル(韓国)
13位:ベルリン(ドイツ)
14位:アムステルダム(オランダ)
15位:東京(日本)
16位:サンディエゴ(アメリカ)
17位:トロント(カナダ)
18位:パリ(フランス)
19位:シカゴ(アメリカ)
20位:シドニー(オーストラリア)、バンガロール(インド)
ランキングから見る、北米・アジア圏のスタートアップエコシステムの特徴
北米のエコシステムは、上位30都市のうち50%を占めた。首位のシリコンバレーは、ランキングが開始された2012年以降これを維持している。スタンフォード大学が中心部に位置するシリコンバレーには、全米で最もハイテク企業が集中し、STEM分野の優秀な人材が多く集まっているほか、起業家同士の連携を促進する独自のイノベーション文化が確立されている。
また、新型コロナ禍の過去2年間で約9万1,000人が流出したにもかかわらず、2023年に入ってから半導体のエコシステムが回帰し、対話型人工知能(AI)「ChatGPT」のオープンAIなど、AIスタートアップが続々と誕生している。一方で、2位タイのニューヨークについては、同市に拠点を置く生成AI企業が、2022年に計4億8,350万ドルを調達するなど、AI技術への投資が活発化していると言及した。
アジア圏では、北京が7位、上海は9位となり、いずれも前年から順位を下げた。中国のゼロコロナ政策は同国の2022年の経済成長率を押し下げたが、経済活動の再開により、テクノロジーとスタートアップのエコシステムが低迷から立ち直りつつあるとしている。また、北京の中小企業に対する強力な支援は、第14次5カ年計画(2021~2025年)で繰り返し取り上げられていると紹介された。
上海については、世界有数の金融ハブであり、中国市場に参入する国際的なブランドにとって最初の進出候補先だと述べられている。同市は2022年11月、スマートデバイスやエネルギー、宇宙など「未来産業」と呼ばれる5分野の育成に向けた行動計画を発表し、これらの産業の生産額を2030年までに710億ドルにすることを目標に掲げている。
今回8位に浮上したシンガポールについては、アジア太平洋地域の金融ハブであり、フィンテックのイノベーションが数多く誕生している点が特徴として挙げられた。シンガポール政府は2019年から国家AI戦略を深化させ、AIを活用したサービスの変革に取り組んでいるとしている。
東京の順位は後退するも、「ライフサイエンス、フィンテック、製造、ロボティックス」分野で注目を集める
上に示したランキングでも分かるように、東京は15位となった。昨年の12位から後退する結果となったが、国内外のエコシステムの関係性を表す「関係性」の評点は、2022年の1点(最下位)から7点へと大幅に上昇している。「経験・人材」や「知識」は8点や9点と高得点を維持。
一方、国内外市場におけるスケールアップやユニコーン輩出状況などに基づく「マーケットリーチ」は、2022年の4点から最下位点の1点と順位を下げた。その他「パフォーマンス」も順位を下げており、これらが総合順位の低下に繋がったものと想定される。分野別では「ライフサイエンス、フィンテック、製造、ロボティックス」が強みとして注目を浴びている。
▲東京に対する評価。2022年に比べて総合順位は後退したものの、「関係性」は大幅に上昇した。
また、GENの日本拠点である一般社団法人GEN Japanの代表理事・マネージングディレクターの西口尚宏氏はGSER2023のローンチセッションに登壇し、「今回の世界ランキングから見える東京のスタートアップエコシステムの姿は、経験や人材力、国内外との関係性の構築で実力を蓄積しつつある一方、国内外の市場において、イノベーション劇場的な活動から、より具体的な成果を追求する段階までようやく辿り着いた、と言ってもよいのではないでしょうか?」と語っている。
※参考リンク:
・2023 Global Startup Ecosystem Report (GSER2023)
・一般社団法人GEN Japanプレスリリース『「2023 Global Startup Ecosystem Report (GSER2023)」にて、東京が全世界290都市別のランキングで上位15位にランクイン!』
・JETRO『米民間調査、2023年世界の都市別スタートアップ・エコシステムのランキングを発表』
(TOMORUBA編集部)