meet ▶[フィナンシェ]:「応援」の新しい仕組みを作り出すフィナンシェが描く未来
海外のサッカーファンを中心に広がりつつある「ファントークン」。サッカークラブが発行するトークンをファンが購入することで、クラブの運営に携わったり、人気になったトークンを売却して利益を得られる可能性がある。
そんな仕組みを日本で展開しているのが、株式会社フィナンシェだ。スポーツに限らず、エンターテインメントや地方創生プロジェクトにも同じ仕組みを展開することで、様々なコミュニティが熱狂する環境を作っている。
eiicon companyのオリジナルピッチ企画「eiicon meet up!!」登壇企業に話を聞くインタビュー企画『meet startups!!』。――今回は、株式会社フィナンシェ 取締役COOの田中隆一氏にインタビューを実施。起業の経緯と事業の現状、そして今後の展望について話を聞いた。
▲株式会社フィナンシェ 取締役COO 田中隆一氏
トークンを活用した新しい応援の形
――まずはフィナンシェを創業した背景から聞かせてください。
田中氏 : フィナンシェの始まりは、創業者4人で検討を進めていたプロジェクトが原点にあります。代表の國光(※代表取締役CEO 國光宏尚氏)が15年ほど前からブロックチェーンの可能性を探っていて、日本で本格的に事業化するために創業メンバー4人で集まっては議論を繰り返していました。
特に注目していたのが、海外のサッカーチームがファンにトークンを発行することでコミュニティを盛り上げていたケースです。同じようにクラブチームやプロジェクトを最初から応援してきた方が、インセンティブを得られる仕組みを作りたいーーそのような想いでFiNANCiEというブロックチェーンを活用したトークン発行型のクラウドファンディングを立ち上げました。
――ブロックチェーンのどこに可能性を感じたのでしょうか。
田中氏 : ブロックチェーン技術を応用したプラットフォーム「イーサリアム」(Ethereum)の仕組みそのものです。イーサリアムは従来のオープンソースと違い、コミュニティの参加者にトークンを発行し、需要が高まることで価値が上がる仕組みになっています。
そのため、多くの人がコミュニティを拡大するために応援し、需要が高まった暁にはインセンティブを得ていたのです。この仕組みを個人のクリエイターにも応用できれば、これまでのように投げ銭やメッセージを送るだけでなく、新しい応援の形を作れると思いました。
――株式を買うようなイメージですね。
田中氏 : そうですね。ただし、株式と違うのはトークンを購入した人たちの頑張りで価値を上げられること。株価は主に企業の業績によって需給が変動しますが、私たちのプラットフォームでは面白い取組をしてファンが増えれば価値が上がることが期待できます。
株式は、一度買ったら株価の動きを見ているしかありませんが、トークンホルダー(サポーター)は自分たちが運営の一員のような形でプロジェクトを盛り上げられるのが大きな違いですね。
スポーツ、エンタメ、地方創生…、幅広いプロジェクトでトークンを発行
――現在はどのようなプロジェクトがトークンを発行しているのか教えてください。
田中氏 : 2021年に湘南ベルマーレが国内で初めてトークンを取り入れたことにより、スポーツ領域で一気に広がりました。もともとスポーツは熱狂的なファンが多いので、クラブの運営に携わりたいと思う人が多かったことも相性がよかったです。今では100以上のスポーツチームが私たちのサービスを利用しています。
スポーツ以外に力を入れているのがアニメや映像作品などのエンタメ領域と、地方創生プロジェクトです。都会に住みながら地元の地域を応援したい人や、旅行をきっかけにファンになった人などがトークンを通じて地域の取組を応援しています。
――多くのプロジェクトで採用されているのですね。誰でも使いこなせるものなのでしょうか。
田中氏 : 発起人(オーナー)の熱量さえあれば使いこなせると思います。トークンはあくまでプロジェクトとファン(サポーター)の繋がり方を変える仕組みに過ぎません。大事なのは発起人がビジョンを提示し、ファンを巻き込んでいくことです。
そのため、最初の段階でトークンの話をしても意味がありません。「もっと応援がしたい」「こうすればもっとよくなるんじゃないか」という熱狂的なファンが生まれて初めて、トークンを付与する意味があるのです。
――特に注目のプロジェクトがあれば教えてください。
田中氏 : 特に注目していただきたいのは、日本初のスポーツDAO「Avispa Fukuoka Sports Innovation DAO」を設立したアビスパ福岡です。DAOは、分散型自律組織と直訳され、さまざまな意味を持ちますが、フィナンシェではビジョンに賛同する人々が協力して、自律的に運営される自律分散型のコミュニティと位置付けています。
Avispa Fukuoka Sports Innovation DAOでは、ファンだけでなく、スポンサーや地元メディア、行政や経営者など様々なステークホルダーを巻き込むことで、幅広い活動を推進しています。単にクラブチームの運営をするだけでなく、Web3人材の育成・地域の課題解決に貢献するなど、次世代のスポーツクラブ運営を牽引しているといえます。
▲アビスパ福岡と一緒に「Web3×スポーツの力で、福岡から世界に広がるイノベーションモデルを共創する」というビジョンの達成を目指す、日本初のスポーツDAO「Avispa Fukuoka Sports Innovation DAO」。(画像出典:プレスリリース)
ファンを巻き込みたい企業のプロジェクトにも使ってほしい
――今後はどのような企業や組織に、御社のプラットフォームを活用してほしいと思っていますか?
田中氏 : 消費者向けにサービスや商品を展開している企業に幅広く使ってもらいたいと思っています。企業活動の中では、単に収益を上げるだけでなく「ファンを巻き込んでいく」という目的のプロジェクトもあるはずです。
これまでのようにユーザーを集めてインタビューするだけでなく、トークンを媒介にして一緒にプロジェクトを運営していけるコミュニティを作れば、最終的に利益にも繋がっていくでしょう。
最近はクラウドファンディングで初期のコミュニティを形成する企業も多いので、同じような感覚で活用してもらえればと思っています。
――最後に、今後の展望をお願いします。
田中氏 : 国内で私たちのプラットフォームを活用してもらえるプロジェクトを増やしていくのはもちろんですが、今後は海外にも積極的に展開していきたいと思います。ブロックチェーン技術を使えば、誰もがトークンを活用して新たな価値を生み出せるので国境はありません。
単にトークンを発行するだけでなく「トークンを持っている人はドリンク一杯無料」など、工夫次第で使い方はたくさんあるはずです。グローバルで展開しやすいWeb3技術だからこそ、海外にもその価値を届けていきたいですね。
▲2023年2月16日に開催されたピッチイベント「eiicon meet up!!vol.6」に登壇した田中氏。
(取材・文:鈴木光平、撮影:齊木恵太)