【身近なオープンイノベーション②】 「共創」で社会課題解決に取り組む鉄道会社
国会での施政方針演説でも重点テーマとして述べられた「働き方改革」。これに対応するように、オフィス環境に左右されることなく、仕事ができる環境が整備されはじめている。その一つとして注目を浴びているのが、首都圏の鉄道各社が相次いで通勤客向けの有料座席指定サービスを導入だ。西武鉄道や東武鉄道はすでにこのサービスに着手。ゆったりとできる座席が確保でき、窓側の座席には電源コンセントが完備されている。PCやスマホを充電しながら、朝・夕の通勤時間に仕事に着手することも可能。大きな社会課題となっている「通勤ラッシュ」緩和にも一役買っている。
また、eiicon labでもたびたび取り上げている「アンドハンド」プロジェクトが、2017年12月に東京メトロでLINEを活用して妊婦に座席を譲るという実証実験(※)を実施。ーーこのように、社会課題に対して鉄道各社がオープンイノベーションでその解決に取り組むという動きが出てきている。実際に、東京メトロ自体でも「Tokyo Metro Accelerator」というアクセラレータープログラムに取り組んでおり、2016年、2017年の2回開催されている。
今回、人々の生活に身近な「鉄道」という領域でオープンイノベーションに取り組んでいる事例を見ていきたい。
※関連記事:【アンドハンドプロジェクト ~『#TOKYOのやさしさが試される5日間』~】 東京メトロ銀座線で行われた実証実験の裏側に迫る。
<前編> https://eiicon.net/articles/386 <後編> https://eiicon.net/articles/387
AI無人決済によって「人手不足」の解消を目指す
JR東日本では、「TICKET TO TOMORROW~未来のキップを、すべてのひとに。~」というスローガンのもと、「JR東日本スタートアッププログラム」に取り組んでいる。2017年4月に募集を開始した同プログラムは、2017年11月に採択された。「アクセラレーションコース」で最優秀賞を受賞したのは、“ディープラーニング技術を応用した商品認識によるレジレス化実現”を提案したサインポスト株式会社だ。
同社が技術特許を有するAI無人決済システム「スーパーワンダーレジ」を組み込んだポップアップストアを大宮駅に展開し、テストマーケティングを実施した。このシステムでは、棚から取った食品や飲料などの商品をAIが把握することで、自動的に購入商品の合計額が算出。これにより、レジでの会計待ちをすることなく、交通系電子マネーで短時間に決済を行うことが可能。ーーAI無人決済により、「人手不足」という社会問題の解決に向けた取り組みを進めていく。
一方、福岡県を基盤に鉄道路線、バス路線などの路線網を持つ西日本鉄道でも、「西鉄Co+Lab(コラボ)」というオープンイノベーションプログラムを開催している。昨年、同プログラムで「西鉄Co+Lab賞」(最優秀賞)を受賞したのは、株式会社トランク。
同社は、預けた物をアプリで一覧・管理でき、不要品はそのまま販売・譲渡できるクラウド収納サービス「trunk」を提供しているベンチャー企業。このサービスを活用することによって、年々増加を続けている駅などにおける遺失物の保管に向けた課題解決を提案した。
生活する上で欠かすことのできない交通インフラである、鉄道。少子高齢化による労働力の不足。多様化する生き方や働き方。こうした課題に向き合いながら、快適な交通手段・サービスを提供するためにも、オープンイノベーションの力が必要とされている。