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meet ▶[esa]:複合プラスチックのリサイクルで新たな市場を創造する

meet ▶[esa]:複合プラスチックのリサイクルで新たな市場を創造する

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プラスチックのリサイクル率が80%を超える日本。しかしその実態は、廃棄物を燃やした熱を再利用するサーマルリサイクルが大半を占めている。ゴミを燃やして二酸化炭素を排出しているため、海外ではリサイクルと認められていない方法で、実質的には日本のリサイクル率は他の先進国に大きく後れをとっているのだ。

なぜ、日本ではサーマルリサイクルが主流になっているのか。その背景には日本の企業が好んで使う複合プラスチックの存在がある。様々な原料を使って作られるため高品質だが、燃やす以外のリサイクル方法が確立されていない。

そんな複合プラスチックのリサイクルに先陣を切って取り組むのが株式会社esa(イーサ)だ。複合プラスチックがリサイクルできるようになることで、どのような社会インパクトがあるのだろうか?

eiicon companyのオリジナルピッチ企画「eiicon meet up!!」登壇企業に話を聞くインタビュー企画『meet startups!!』。――今回は、株式会社esa 代表の黒川周子氏にインタビューを実施。創業の経緯や事業の進捗、今後のビジョンを聞いた。


▲株式会社esa 代表 黒川周子氏

これまでにない複合プラスチックのリサイクル技術を確立

――まずは起業の経緯を聞かせてください。

黒川氏 : 株式会社esaは私を含め、イギリス留学で出会った3人(黒川周子氏、枝吉宣輝氏、周品諺氏)が共同で起業した会社です。代表の一人である周の家族は台湾で日本に機械を卸す会社を経営しており、2019年に中国が廃棄物の輸入を規制したのを機に、日本で新しく事業を起こせないかと市場調査に来ていました。それまで大量の廃棄プラスチックを中国に輸出していた日本に、何かビジネスチャンスがあると思っていたのです。

そこで見つけたのが複合プラスチックの課題。日本のプラスチックを作る技術は世界でもトップクラスで、多くの企業が好んで使っていました。しかし、複数の原料を使っているため、別の製品に作り変えるマテリアルリサイクルが難しく、燃やすしかできなかったのです。

もしも複合プラスチックをリサイクルできたら、地球環境にも貢献できますし、新しい市場も開拓できる。そう思った私たちは2022年3月にesaを立ち上げました。

――なぜ複合プラスチックのマテリアルリサイクルが難しいのでしょうか。

黒川氏 : プラスチックをリサイクルするには、一度溶融してペレットという原料にしなければいけないのですが、複合プラスチックは様々な素材でできているため、それぞれ融点も違います。

リサイクルするよりも、新しいプラスチックを使ったほうが安くすむので、これまで複合プラスチックをリサイクルしようとする技術も開発されてきませんでした。私たちは独自の圧力と温度調節の技術を開発し、複合プラスチックをペレットにすることを可能にしたのです。

――リサイクルしたプラスチックも、一般的なプラスチックと同じように使えるのですか。

黒川氏 : いえ。我々が作っているものは再生素材であり、新品で安定したバージン素材のプラスチックに比べるとどうしても質が劣るため、半導体や衣料品など高い品質が求められるものには使えません。しかし、ビニール袋や建材の一部に利用いただくなどであれば、問題なく再利用できます。 


▲2022年11月29日に開催されたピッチイベント「eiicon meet up!!vol.5」に登壇した黒川氏。

リサイクルの壁になる課題とは?

――どのような流れで複合プラスチックをリサイクルしていくのか聞かせてください。

黒川氏 : まずは複合プラスチックをリサイクルしたいという会社と話をしながら、リサイクルスキームから一緒に考えていきます。会社によって複合プラスチックの素材や割合も違うため、どのような製品が作れるかはテストしなければわからないからです。

リサイクルした製品を、どのように流通させるかも決めなければなりません。再び自分たちの会社で使うのか、他の会社で使ってもらうのか、もしくは商品として販売するのか。商品化の話も進んでいて、私たちが開発したレジ袋などが今年から使われることも決まっています。


▲esaが開発した複合プラスチック素材のレジ袋(画像出典:esaホームページ

――リサイクルするにあたって、企業にも負担はあるのでしょうか。

黒川氏 : プラスチックをリサイクルするには、これまでまとめて燃やしていたゴミを、仕分けをしたり配送の手配をしなければなりません。そのため、現場のオペレーションも作り変えなければなりませんし、手間も増えます。

そのようなハードルがあるため、リサイクルに興味はあっても踏み出せない企業がいるのも現実です。日本ではプラスチックのリサイクルが義務化されていないため、それだけの工数をかけてでもリサイクルしようと思うのはリソースの余裕のある大企業に限られています。そのため、現在はそうした大企業のみなさまとのお話が多く進んでいます。

――逆にリサイクルをすることで、企業にどのようなメリットがあるのか教えてください。

黒川氏 : たとえば、プラスチックを廃棄して焼却するコストを減らせます。加えて、リサイクルして自社で利用すれば仕入れコストを減らせますし、商品化すれば新たな収益源を作れるでしょう。リサイクルは単に環境にいいだけでなく、事業にとっても大きなメリットがあるのです。

ただし、メリットがデメリットを上回るかどうかは、リサイクルするプラスチックの量にもよります。プラスチックの量が少なければリサイクルの効率も落ちてしまうため、そういう意味でも今は大企業を中心にリサイクルが進んでいます。

――今後はどのように事業を展開していくのでしょうか。

黒川氏 : より多くの企業に複合プラスチックのリサイクルによるメリットを提示していきたいと思っています。そのためには新しい市場を開拓し、そこにいち早く参入するメリットを作っていかなければなりません。

SDGsやESG投資といった概念も浸透してきた中で、環境によい経営を目指すことが当たり前の世の中になっています。esaとしてはみなさまのお役に立てるように、拠点や機械ラインを増やしてリサイクルできる量を増やしたり、自社リサイクル製品の開発やリサイクルスキームを洗練するためのコンサルティングサービスも展開していきたいと考えています。


(取材・文:鈴木光平)

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