EVやサーバーなど電子機器の放熱課題を解決するU-MAP、新素材の量産に向け7億円の資金調達を実施
株式会社U-MAPは、リアルテックファンド、京都大学イノベーションキャピタル、中京油脂、愛知キャピタル、EP-GB投資事業有限責任組合を引受先とした第三者割当増資、および中小企業庁Go-Tech事業を始めとする助成金の採択により、約7億円の資金調達を実施した。
U-MAPは、電子機器の熱問題を解決することを目指し、名古屋大学から生まれた素材であるファイバー状窒化アルミニウム単結晶(以下、Thermalnite)の研究開発を進めてきた。今回調達した資金をもとに、更なるコストダウンと設備導入により量産体制を確立し、2024年に年間1tのThermalniteを生産開始する予定。また同年には、パートナー企業である岡本硝子氏と共同でThermalniteを用いた窒化アルミニウム基板の製造・販売を開始する予定。2025年には、Thermalniteを用いた放熱シート等の高熱伝導樹脂製品の量産販売へと展開していくという。
Thermalniteを使用した高機能放熱部材を製品化し、新たなビジネスを展開
U-MAPは、独自素材Thermalniteに加えて、Thermalniteを用いた高機能・放熱部材ビジネスを展開している。これらの放熱部材は従来品にはなかった高い熱伝導率や機械強度が特徴で、電子機器に組み込むことで放熱性能を向上することが可能だ。これまでの製品開発で、従来品の2倍近い機械特性(破壊靭性)をもつ窒化アルミニウム基板を実現した。部材メーカーやデバイスメーカーなどの企業へサンプル提供を行い、製品導入に向けた品質評価を進めている。樹脂部材においては、非常に少ない添加量で高い熱伝導率を持つ軽量で高強度な放熱部材を実現した。今後は、原料から部品までの一貫したサプライチェーンで培った配合技術や評価技術をもとに、放熱シートやグリース、樹脂基材などに応用し、事業化に向けて外部との連携をさらに加速していく。
深刻化するエレクトロニクスの熱課題を解決し、省エネルギー社会の実現を目指す
昨今、電子機器における熱課題はカーボンニュートラルにも関連し、大きくクローズアップされている。機器の発熱はパフォーマンスの低下や機器寿命の低下を引き起こすため、特にEVや通信システム(5G)、データセンターのサーバーなどの産業機器では非常に深刻な問題となっている。2030年の全世界データセンターにおける冷却にかかる消費電力は400TWh(日本の総消費電力の40%に相当)と言われ、発熱対策は喫緊の課題となっている。
従来、このような電子機器では、発熱に対応するために、ファンや水冷装置などの冷却設備を搭載していたが、この方法では装置の大型化やコストアップ、クーリング・ロス(冷却損失)が懸念となる。U-MAPが開発した放熱部材は、機器内部に用いられる材料自体の放熱性能を向上させることで、冷却機構を排除・縮小し、機器の小型化、省エネ化に貢献する。
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