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北欧テックイベント「TechBBQ 2022」最速レポ!ピッチ優勝はリーガルテックの「Openli」に【前編】

北欧テックイベント「TechBBQ 2022」最速レポ!ピッチ優勝はリーガルテックの「Openli」に【前編】

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2022年9月14日、15日に、デンマーク・コペンハーゲンで恒例のスタートアップイベント「TechBBQ 2022」が開催された。現地とオンラインのハイブリッド開催となった2021年に続き、2022年も同様のスタイルとなり、オンラインも含め約6,500名が参加した。2021年のレポートはこちらから。

昨年に引き続き、筆者はジャーナリストとして現地への招待を受けたが、国内外の新型コロナの状況を鑑みオンラインで参加した。一部のステージはオンライン視聴でき、オンラインで参加者との交流もできたものの、今年はかなり限られた印象。「現地に行かないと損だな」と感じたのが本音だ。

世界の企業が取り組むイノベーションの"タネ"を紹介する連載企画【Global Innovation Seeds】第31弾では、「TechBBQ 2022」のレポート前編として、イベントの目玉となったピッチコンペティション「North Star Pitch Competition Finale」の出場企業、及び優勝企業のビジネスモデルを紹介したい。

後編では、ハードウェアのコンペ優勝企業と初開催となったピッチコンペ「Meet The Drapers Pitching Competition」の様子を伝える。後者のコンペを主催したDraper Associatesは、シリコンバレーを拠点に世界中の企業に投資する投資会社。デンマークの成功したスタートアップ4社が5万ドルの賞金と100万ドルの投資を賭けて競い合い、大いに盛り上がった。ぜひ、こちらも併せてチェックしてほしい。

サムネイル写真提供:TechBBQ 

目玉の「北欧スターピッチコンペ」出場企業の顔ぶれ

「North Star Pitch Competition Finale(ノース スター ピッチコンペティション ファイナル」は、ベンチャーキャピタルのCEOなどが審査員となり、キラリと光る将来有望なスタートアップを発掘するコンペだ。

2022年の優勝者は、コンプライアンスソフトウェアを提供するリーガルテックの「Openli」だった。イベントレポの前編では、Openliを含む出場企業10社のビジネスモデルを紹介する。

1、不動産管理ソフトウェア「Bidrento」


▲Bidrentoの公式ホームページより

2019年にエストニアで創業したBidrentoが提供するのは、家主と不動産管理会社向けの不動産管理ソフトウェア。賃貸応募者の管理から賃貸契約、請求管理、賃貸人とのコミュニケーションまで、不動産管理に必要なサービスをワンストップで提供する。

サブスクリプションでの提供となり、月額4.95ユーロ(約700円、税別)〜。すでにバルト諸国最大の不動産ファンド「Eften Living」をはじめ、大手クライアントとの取引実績を持つ。

2、解体コストを削減する「Milva」


▲Milvaの公式ホームページより

デンマークで創業したMilva(創業年は不明)は、建物の解体コストを削減するマッピング技術を提供する。解体工事の前に、解体工事のフローとタスク、解体した資源の処理方法を細かく知ることができるという。アナログのマッピングと比較して、より速く、より詳細で、より安価であるのが強みだ。

さらに、環境・資源マッピングにより、より多くの再利用可能なクリーン資源を建物から発掘できる。資源を文書化して、それらに有害物質が含まれないことを確認、良心的な価格で再販し、利益を得られるという。

3、女性向けデジタル医療「Maja.no」


▲Maja.noの公式ホームページより

ノルウェーで創業したMaja.no(創業年は不明)は、女性のためのデジタル医療を提供する。創業メンバーは医師としての実績を持ち、避妊薬の処方箋、自宅でできるクラミジア検査、尿路感染・細菌性腟炎・湿疹やにきびといった皮膚疾患のアドバイスと処方箋、さまざまなワクチンの処方箋など、幅広く女性の身体の悩みに対応する。

専用のデジタルヘルスフォームに記入し、皮膚疾患の場合は写真を添付すると、医師が適した治療法を提供するシンプルな仕組みだ。翌営業日に電子処方箋が届く。

4、量子コンピューターの開発を加速「SCALINQ」


▲SCALINQの公式ホームページより

スウェーデンにあるChalmers University(チャルマース工科大学)のスピンオフとして、2022年に誕生したSCALINQ。超伝導量子コンピューター分野の専門家が集まる同社が提供するのは、量子コンピューターに使われる量子プロセッサの開発を加速させるソリューションだ。量子ビット数をスケーリングする際のハードルを克服する革新的な技術を研究しているという。

量子コンピューター関連のスタートアップとしては、別記事 https://tomoruba.eiicon.net/articles/3688 でフィンランド発のIQMを取り上げている。創薬、金融、輸送などの産業に革命をもたらすとされる量子コンピューターについてくわしく紹介しているので、気になる人は併せて読んでみてほしい。

5、再利用可能な宅配ボックス「Cirqle」


▲Cirqleの公式ホームページより

2020年にデンマークで創業したCirqleは、循環型社会を実現する再利用可能な宅配ボックス「DoGoodBox」を提供する。飲食の宅配において、使い捨てのダンボールをDoGoodBoxに置き換え、ボックスを追跡するソフトウェアを活用しながら再利用を可能にする仕組みだ。

DoGoodBoxは99.75%がバイオベースの素材で作られ、寿命を終えたら完全にリサイクルが可能。長く使える耐久性と衛生的な状態を保ちやすい仕様に加え、RFIDチップが取り付けられており、専用ソフトウェアで追跡できる。

単純に箱を売るビジネスモデルではなく、再利用プロセスの管理も含めた一連のサービスとして提供している。

6、オールインワンの顧客サービスソフトウェア「Team Whelp」


▲Team Whelpの公式ホームページより

2016年創業、アメリカ・ニューヨークに拠点を持つTeam Whelpは、複数の顧客コミュニケーションチャネルを1ヵ所にまとめるソリューションを提供する。音声、SMS、ライブチャット、電子メール、WhatsApp、Facebook Messengerなどを1つの共有受信トレイで管理することで、顧客とのコミュニケーションを円滑にする。

付随機能も充実しており、さまざまなレポート表示、定型文の活用、タスク管理、プラットフォームとの統合、多言語対応などがある。サブスクリプションでの提供となり、標準プランは月額49ドル(約7,000円)となる。

7、特許取得の心内圧モニタリング「Acorai」


▲Acoraiの公式ホームページより

2019年に創業し、デンマークとイギリスに拠点を持つAcorai。同社が開発するのは、心内圧モニタリングを通じて心不全管理を行い、心不全による入院を減らすためのデバイス「Acoraiハートモニター」だ。

同社が持つ3つの特許により、音響、振動、波形データの圧力ダイナミクスを機械学習により解析し、身体に負担を与えずに心内圧をモニタリングできるという。製品は説得力のある精度を示しており、臨床や規制へのリスクが低いため、商品化の道のりが早いメリットがあるそうだ。

8、金融データプラットフォーム「Calqulate Metrics」


▲Calqulate Metricsの公式ホームページより

2019年にフィンランドで創業したCalqulate Metricsは、VC、貸し手 、銀行、ファイナンシャルアドバイザー、企業など、すべての金融関係者向けに、金融データプラットフォームを提供する。

導入メリットとしては、スタートアップの財務分析を自動化し、投資家とのデータ共有をシンプルにする。信用リスク分析や取引スクリーニングなど、貸し手の取引フローを加速する。投資家とスタートアップのマッチメイキングをするなどが挙げられる。

サブスクリプションでの提供となり、スタートアップ向けは月額250ユーロ(約36,000円)〜となる。

9、複数のモビリティシェアを1つのアプリで管理「Cogo」


▲Cogoの公式ホームページより

2020年にデンマークで創業したCogoは、複数のモビリティサービスを同時に管理できるアプリ「Cogo」を提供する。日本よりモビリティシェアが進むヨーロッパには、電動スクーター、電動キックボード、自転車、自動車を扱う複数のモビリティシェアサービスが存在する。

通常、ユーザーはそれぞれのサービスのアプリをダウンロードする必要があるが、Cogoを使えば、世界中の250以上の事業者の価格を比較し、最適な車両を数秒で見つけられるという。

2022年2月には、中央ヨーロッパで類似事業を展開していたeScootを買収。これによりドイツ、フランス、イギリスなどの主要なヨーロッパ市場への拡大が進み、現在は700都市でサービスを提供している。

優勝はGDPR違反防止をサポートする「Openli」


▲North Star Pitch Competition Finaleで優勝したOpenliの創業者、兼CEOのStine Mangor氏(写真右)

専門性の高さやユニークな発想を生かしたビジネスモデルが並ぶなか、優勝を勝ち取ったのは、2018年にデンマークで創業し、コンプライアンスソフトウェアを提供する「Openli」だった。

EUでは、2018年5月にEU一般データ保護規則(GDPR)が施行され、多くの企業にとって脅威となっている。というのも、GDPRは世界でもっとも厳しい個人情報保護に関する法律といわれており、すでに大手テック企業が巨額の罰金を科せられているのだ。

例えば、2021年9月にはメッセージングアプリ・WhatsAppの違反で、Metaに対して2億2500万ユーロ(当時のレートで約290億円)、2021年7月にはAmazonに7億4600万ユーロ(当時のレートで約970億円)、2022年9月初旬にはInstagramの違反で、再びMetaに4億500万ユーロ(約570億円)の罰金が科されている。これらは、ユーザーのデータ活用における透明性や10代の子どものデータ保護に関連した違反と報道されている。


優勝したOpenliのスライドより

そんな背景があるなかで、Openliは企業がGDPR違反を防止し、コンプライアンスを遵守できるよう手助けをする。具体的には、使用しようとしているベンダーやサービスがプライバシーとセキュリティを備えているかを素早く調べる探索機能、取引のあるベンダーのGDPR やセキュリティの取り組みを管理する機能、データ処理契約などドキュメントの管理機能、プライバシーへの取り組みを顧客に示すプライバシーバッジ、クッキーや電子メールを使ったマーケティングにおける顧客の同意収集などを備える。サブスクリプションでの提供となり、月額479ユーロ(約68,000円)〜となる。

Openliのソフトウェアは北欧を中心とした14ヵ国で展開しており、一定の信頼を得ているようだ。EU企業にとって最重要課題ともいえるデータ保護、コンプライアンス遵守にいち早く取り組み、迅速な事業拡大が期待できる点が評価されたのかもしれない。

編集後記

今回、オンラインでピッチを視聴できなかったのは残念だったが、出場企業は昨年以上にバラエティに富んでいたように思う。北欧企業ばかりが並ぶTechBBQのピッチで、ニューヨーク拠点のTeam Whelpが登場したことも意外だった。個人的にGDPR違反関連のニュースは気になっており、顧客の個人情報を扱うEU企業は戦々恐々としているはずだ。Openliの今後の動きに期待したい。

(取材・文:小林香織) 

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