【地域版SOIPに迫る<甲信越・北陸編>】冬季五輪開催地として有名な「長野」からはスキー・スノーボード、バスケットボール、サッカーが参戦!各チームが語る共創への想いとは?
「スポーツの成長産業化」を目的として、スポーツ庁が手がける「スポーツオープンイノベーション推進事業」。スポーツ界と他産業が連携して、新たな財・サービスを創出するプラットフォームが「Sports Open Innovation Platform(SOIP)」だ。
スポーツ庁は、国内各地域におけるSOIP(地域版SOIP)を構築するため、昨年に続きスポーツチームとのアクセラレーションプログラム「INNOVATION LEAGUE SPORTS BUSINESS BUILD」を開催する。今年度は、北海道、甲信越・北陸、東海の3エリアでプログラムを開催する構えだ。
そこでTOMORUBAでは、各エリアの地域パートナーやホストチーム・団体に取材を実施する。今回取り上げるのは、甲信越・北陸エリアのプログラム「INNOVATION LEAGUE SPORTS BUSINESS BUILD 2022 KOSHINETSU-HOKURIKU」だ。1998年のオリンピック・パラリンピックの開催地である長野では、その施設を有効活用しながらスポーツ活動を盛り上げてきた。
同プログラムには、ホストチーム・団体として「公益財団法人長野県スキー連盟(スキー・スノーボード)」「信州ブレイブウォリアーズ(バスケットボール)」「松本山雅FC(サッカー)」の3チームが参画する。地域パートナーは、「一般社団法人長野ITコラボレーションプラットフォーム(NICOLLAP)」が担う。本記事では、甲信越・北陸エリアのスポーツの特徴や、各チームの募集テーマ、共創で実現したいことや想いについて聞いた。
スポーツが地域に根付くエリアで、新たなビジネスの創出を目指す
――まずは、甲信越・北陸エリアの地域パートナーであるNICOLLAP(ニコラップ)のコミュニケーションマネージャー・高畠さんにお話を伺います。NICOLLAPの活動と、高畠さんの役割について教えてください。
高畠氏 : NICOLLAPは2019年に設立された民間団体です。長野県が掲げる「信州ITバレー構想」の実現をビジョンに、長野市を中心とした北信地区を米国オレゴン州ポートランドのような、ITを活用した新規事業にチャレンジする事業者と、その支援者が集まる魅力ある地域にすることを目指しています。
私たちはその実現のため、47の会員企業と共にオープンイノベーションの手法でITを活用した新規事業の創出に取り組んでいます。私はコミュニケーションマネージャーとして、会員企業と外部企業との橋渡しなどを行い、新規事業開発の促進を支援しています。
▲一般社団法人長野ITコラボレーションプラットフォーム(NICOLLAP)コミュニケーションマネージャー 高畠 靖明 氏
――甲信越・北陸エリアのスポーツ業界の現状と特徴についてお聞かせください。
高畠氏 : 長野県は、全国で4番目に大きいサイズの地方都市です。東京から新幹線で90分もあれば長野駅にアクセスできますし、移住ランキングでは常に上位で、観光地としても人気のエリアが多数あります。そして、24年前に長野オリンピック・パラリンピックが開催された土地として、世界的にも知名度が高いです。
現在、長野県内には野球、サッカー、フットサル、バスケットボール、3人制バスケットボール、バレーボールといったプロを始めとしたトップスポーツチームが10団体あり、多様なスポーツに触れることができます。また、ウインタースポーツのメッカでもあり、みるスポーツも、するスポーツも、それを支えるスポーツイベントも年間を通して豊富な地域だと思います。
――今回参画する3つのスポーツ団体や、サポート企業について、どのような特色がありますか?
高畠氏 : 「長野スキー連盟」は、日本のスキー競技の競技力向上はもちろん、地元のスキー産業の活性化といった大きな命題に取り組んでいらっしゃる団体です。今回の取り組みが全国のスキーに関係する企業や団体に対して良き先進事例になると考えています。
「信州ブレイブウォリアーズ」は、現在プロバスケットボールリーグB.LEAGUEの1部に所属しています。2026年に始まる「新・B.LEAGUE」の構想実現に向けて、行政・地元企業と連携して準備を進めています。成長著しいリーグの中でも、信州ブレイブウォリアーズは注目のクラブです。
「松本山雅FC」は、サッカーに親しんでいる人であれば誰もがご存知だと思いますが、日本を代表する地域密着型のクラブです。これからさらに地域に深く根差していくために、新しく生まれ変わろうとしているクラブの皆さんと、今回ご一緒できることを楽しみにしています。
本プログラムのサポーターに関してですが、行政サポーターとして長野県に大きくバックアップしていただけるとコメントをいただいています。メディアサポーターとして長野朝日放送からは、今回のプログラムを積極的に取り上げていただくお話しをいただいてます。メンターについては、プロスポーツクラブ運営、スポーツマーケティング、観光、オープンイノベーション、ITを活用した課題解決など、様々な領域で活躍している人材を厳選しています。
――今回の事業に関する期待やビジョンについてお聞かせください。
高畠氏 : NICOLLAPは発足4年目となり、昨年度まで関東経済産業局、長野市の事業を受託し、実績を積み上げてきました。プロスポーツクラブ・団体との取り組みは今回が初めてです。
昨年度、関東経済産業局との事業で、地元企業とスタートアップとの共創をサポートする「長野オープンイノベーションチャレンジ(※)」の開催は手応えがあり、そこで面白い技術やソリューションとの出会いがあり、メディアにも取り上げていただきました。スポーツとの共創であれば、さらにニュースバリューも上がるでしょう。
※長野オープンイノベーションチャレンジ:https://nagano-oic.jp/
昨年、たまたま地域版SOIPについて知る機会があり、成果発表会の会場にも足を運びました。そこでスポーツの持つ力を改めて実感しましたし、地元のプロスポーツクラブ・団体にとって良い活動なので参画しない手はないと思い、応募しました。また、私自身もスポーツマネジメント会社で働いていた経験や、B.LEAGUE秋田ノーザンハピネッツの運営に携わった経験があります。今回の事業で、長野県内のプロスポーツクラブ・団体の魅力を知っていただき、その結果として「信州ITバレー構想」の実現に少しでも近づけばいいと思います。皆さんとの共創を楽しみにしています。
「スキーやスノーボードをはじめ、雪山をもっと楽しむ体験を提供する」―公益財団法人長野県スキー連盟
1932年に創立された公益財団法人長野県スキー連盟は、選手の育成・強化、スノースポーツの普及・発掘を柱に運営をしている。今回の募集テーマは、『雪山の楽しさを感じながら、スキルアップを楽しみたい人を対象にスキー・スノーボード人口増を目指す事業』だ。テーマ設定の背景や共創で実現したいことなどについて、総務本部の小坂幸太郎氏に話を聞いた。
――長野県スキー連盟の特徴と、小坂さんの役割について教えてください。
小坂氏 : 長野県スキー連盟は、1932年の設立当時から全日本スキー連盟傘下で、長野県に特化したウインタースポーツの振興を担う公益財団法人として運営されてきました。48のスキースクール、63の地域・職域クラブが参加しており、会員数は4000人以上です。
連盟は、各スキー場やスキースクールをサポートする立場としてスキースクールなど教育事業を運営する教育本部と、国体や世界的な大会に選手を送るための競技本部で成り立っています。
その中で、私はビジネスマネジメントや各種連携のサポートをする総務本部の新規事業開発委員として、主にスキーやスノーボードといったウインタースポーツに関わるビジネスクリエーションを担当しています。
▲公益財団法人 長野県スキー連盟 総務本部 小坂幸太郎 氏
――今回のテーマ、『雪山の楽しさを感じながら、スキルアップを楽しみたい人を対象にスキー・スノーボード人口増を目指す事業」を設定した背景についてお話しいただけますか。
小坂氏 : 長野オリンピックが開催された1998年当時、日本のスキー・スノーボード人口は1800万人でした。しかし徐々に減少し、2020年になると400~500万人に縮小してしまったのです。そこには、自家用車を持つ人が少なくなってきたことや、他のスポーツが身近になったこと、コスト面の問題など、様々な理由があると思います。そこで今回は、今までウインタースポーツに接したことのない方々にもスキー場に足を運んでいただけるような仕組みや仕掛けを増やしたいと考え、このテーマを設定しました。
――今回の共創により、どのような事業を創りたいと考えていらっしゃいますか?
小坂氏 : 私たちが現在連盟として行っていることは、選手の育成や、ある程度のスキルを身に付けたいという人のための教育事業です。その間口を広げて、多くの方にスキーレッスンを受けていただけるようにしていきたいと考えています。
昨年、デモンストレーターという最高資格を持つ8名の協力を得て、スキーとスノーボードのショートムービーを作成しました。そのデータアーカイブなどを使いながら、動画でお子様のスキーレッスンや、効果を検証できる仕組みをつくっていきたいです。そして、スキーをした後も雪山でかまくらを作ったり散策したりと、アフタースキーを楽しむ企画を長期的に取り組んでいきたいと考えています。
――単発の仕掛けではなく、継続的な視点を大事にされているのですね。
小坂氏 : 一貫性と継続性がなければブランドとして定着しませんし、信頼も実績もついてこないと思います。長野県はスキー場が多いことから全日本スキー連盟の中でも注目されているため、ここで事例を作れば全国展開ができるという自負もあります。
――この取り組みを通じてアプローチしたい層についても教えてください。
小坂氏 : まずは、30代半ばから50代の、かつてのファン層を呼び戻すことです。それから、お子さん連れのファミリーに親子で雪山を楽しんでいただきたいと考えています。
私たちのように、いつもスキーやスノーボードのことを考えていると、「楽しむ」ことから離れてしまうこともあります。今回は外部のパートナー企業と共創することで、楽しみながら雪山で生活をすることをプロモートしながら、スキーやスノーボードのレッスンも提供していく枠組みを考えていきたいですね。
――共創パートナーに提供できるリソース・アセットについてもお聞かせください。
小坂氏 : 評議委員会や常任理事会を通過した上でになりますが、長野県スキー連盟のパートナーとして認定を得られる可能性があります。また、今年はあらゆる事業リソースを白馬に集中しているため、世界的な選手やデモンストレーター、観光事業者など、様々なコア人材とコラボレーションする機会を提供できると考えています。
――最後に、応募を検討している企業にメッセージをお願いします。
小坂氏 : 長野県スキー連盟は、4000名の会員ネットワークはもちろん、ウインタースポーツや夏山・雪山に関わる人とのネットワークが豊富です。そういった人々とのコラボレーションにも関心のある方を募集しています。そして今回は、ウインタースポーツを上手くなる・強くなるということではなく、「楽しむ」ことを重視しています。私たちが気付いていない視点をいただけるような事業者との共創を切に願っております。よろしくお願いいたします。
「健幸、食、観光――バスケットボールを通じて信州をもっと元気に」―信州ブレイブウォリアーズ
日本のプロバスケットボールリーグ、B.LEAGUEのトップリーグで活躍する信州ブレイブウォリアーズ。今回掲げる募集テーマは、『プロバスケを日常に浸透させ「長野県(信州)全域」を健幸へ』。運営会社である信州スポーツスピリットの代表取締役社長 片貝雅彦氏、取締役 渡辺智之氏に、地域版SOIPで実現したいことを話していただいた。
――チームの概要と特徴、そしてお二人の役割についてお聞かせください。
片貝氏 : 信州ブレイブウォリアーズは長野県千曲市で誕生し、2011年からプロリーグに参戦するバスケットボールチームです。2016年のB.LEAGUE発足後はキャパシティの基準により、長野市をメインのホームタウンとし、地域に根差した活動をしています。バスケットボールは冬のスポーツです。冬の長野で自然のもとできる観光をスポーツチームとして発信しながら、地域経済に貢献したいと考えています。
私、片貝はクラブ運営会社である信州スポーツスピリットの代表取締役社長として、セールスやビジネスオペレーションを担当しています。そして取締役の渡辺は、主に広報、ホームゲーム、ホームタウン活動や育成カテゴリーの管理担当を担っています。
▲株式会社信州スポーツスピリット 代表取締役社長 片貝雅彦 氏
――『プロバスケを日常に浸透させ「長野県(信州)全域」を健幸へ』という募集テーマを、なぜ設定したのでしょうか。
片貝氏 : 健幸は、スポーツから得られる大きな力です。時間とお金を健幸のために費やしてもらえるようなきっかけを、私たちが作ることができればと思っています。健幸のために、バスケットボールをはじめとするスポーツをすることが理想ですが、実生活の中でアスリートではない方が運動をするのはハードルが高いでしょう。
そこでまずは、プロアスリートの興行を見てもらい、選手たちが観客に元気を与えていきたいです。また今回のテーマでは、信州ブレイブウォリアーズが地域にあることで幸せを提供したいという想いを込め、「健幸」という字をあえて使っています。具体的には幼稚園や保育園に訪問して園児と交流したり、街のお祭りや地域の行事に参加したり、引退した元選手なども含めた人々と協力しながら、輪を広げていく活動をしたいと考えています。
――今回の募集テーマをもとに、どのような共創をしていきたいと考えていますか?
片貝氏 : まずは、「日々の健幸増進によるファン獲得」です。地域の人々とバスケットボールや体操、ウォーキングを、最初はホームゲームの会場で出来ればと思っています。ゆくゆくは、私たちも長野市の市街地に本社機能を持っているため、そこを拠点に情報発信や多目的スペースの運営などをしていきたいと考えています。
2つ目は、「食を起点にした体験による観戦価値の向上」です。長野県ならではの食の企業とコラボレーションをしながら、商品の開発を進めていきたいと考えています。また、選手の身体づくりの基本は食ですから、食材、食品を扱う協賛企業から食材を提供していただき、そこからリカバリーや身体づくりの情報発信をする取り組みも進めていきたいです。
3つ目は、「世界に誇れる観光資源と試合観戦による観光モデル」です。スキーやスノーボードのために長野を訪れる方々に、バスケットボール観戦も観光要素として提供していきたいと思います。逆にウォリアーズの試合観戦に来ていただけるお客様に対し、ホームアリーナ周辺の観光情報も発信できるでしょう。
私たちは東京に後援会支部を立ち上げていますし、中京圏にもファンベースを作る取り組みをしています。北陸新幹線を利用すれば東京からのアクセスもいいため、ぜひ東京や中京圏からのお客様も増やしていきたいですね。
――パートナー企業に、どのようなリソースやアセットを提供できるのでしょうか。
片貝氏 : ひとつは情報発信力です。自社メディア媒体としての発信も行っていますし、SNSではトータルで6万人以上のフォロワーを擁しています。これをさらに増やしながら、スポーツ、観光、健幸に関するコラボレーションについて情報発信をするなど、パートナ―企業のお役に立てるのではないかと考えています。
そして、バスケットボールはインターナショナルなスポーツです。当チームでも、海外のバックグラウンドを持つ選手が多数所属しています。所属選手を活用して、国際的な観光や語学教育などの点で地域に還元できると思います。
――最後に、応募を検討している企業にメッセージをお願いします。
渡辺氏 : 先ほど片貝がお話しした3つの共創事例について、「健幸」においては日常的に関わっていきたいと思っています。ヘルスケア関連のイベントもそうですし、スタジオやトレーニングルームを保有している企業とコラボレーションしながら、関わっていったり、ファンの方を含め一般の方との交流を進めたいです。日常と非日常を織り交ぜた企画を考えていけるパートナー企業さんがいれば、ぜひご応募ください。
▲株式会社信州スポーツスピリット 取締役 渡辺智之 氏
片貝氏 : アフターコロナを考えると、街の元気を生み出す要素として、スポーツの力は非常に大きいはずです。今回SOIPに参画される長野県スキー連盟さんや松本山雅FCさんも含めてコラボレーションし、その取り組みを発信できるハブ的な機能を将来的には作っていきたいと思っています。
今は、それぞれの競技やクラブ団体が単体で頑張っていますが、もっと県や国を交えてできることがあるはずです。地域版SOIPをきっかけに、大きなビジョンを描けるような共創を進めていきたいですね。
「Jリーグ随一のファンエンゲージメントを活かし、さらに地域貢献を進める」―松本山雅FC
設立以来、地域貢献活動や社会連携に力を入れ、Jリーグの中でもファンエンゲージメントの高いチームといわれる松本山雅FC。今回掲げるテーマは、『地域に根差し地域と共に成長し続けるサッカークラブを目指す』。これまでの活動をさらに進化させるという松本山雅FCが見据える未来について、取締役 事業推進部部長 小澤修一氏に聞いた。
――チームの特徴と、小澤さんの役割についてお聞かせください。
小澤氏 : 松本山雅FCは、1965年JR松本駅前にオープンした「純喫茶山雅」に集まったメンバーを中心に創設された、Jリーグの中ではちょっと珍しい生い立ちを持つクラブです。そして2002年の日韓ワールドカップをきっかけに、地元でプロサッカークラブを作ろうという気運が高まり、2004年頃から真剣にJリーグを目指し始めました。アマチュア時代から3000~4000人のお客様が集まる、珍しい地域クラブです。それも、強いサッカークラブを作るというよりは、地元の人々が集まったところにたまたまサッカーがあり、スタジアムがあったところが起点なので、「地域のために何ができるか」が軸となっているからだと思います。
私は、もともと選手として松本山雅でプレーをしていました。現在はクラブのホームタウン活動や地域貢献活動、そして試合の集客プロモーション、飲食事業の責任者を任されています。
▲株式会社松本山雅 取締役 事業推進部部長 小澤修一 氏
――今回の地域版SOIPでは、『地域に根差し地域と共に成長し続けるサッカークラブを目指す』という募集テーマを設定していますが、その理由について教えてください。
小澤氏 : クラブの成り立ちにつながるのですが、「何のために存在するのか」を日々問い続けて活動をしています。興行として成り立たせることももちろん重要ですが、試合以外の時間に何をするのかも大切です。そこで、地域に根差した活動をすることで地域を元気にして、それがやがてクラブの強化につながっていくというサイクルを作りたいと考え、このテーマを設定しました。
――具体的に、地域貢献活動はどのようなことをしているのですか?
小澤氏 : 幼稚園の巡回や、松本市との連携によるお年寄りの健康体操教室、福祉施設で障がい者の方にスポーツの楽しさを体験していただく活動など、年間900回ほどの地域貢献活動をしています。
また最近はSDGsの観点から、地域の課題解決と持続的な発展のために、農家の方々との取り組みも進めています。農家の方々の一番の困りごとは、遊休農地です。そこで塩尻特産の青大豆「あやみどり」を植える作業をしています。日々のメンテナンスは、地域の障がい者施設にお仕事として依頼をして、収穫した商品を販売し、その売り上げをその方々の賃金に充てています。
――地域版SOIPでは、どのようなことを実現したいとお考えでしょうか。
小澤氏 : 私たちの活動自体は、もともとSDGsに沿っていると思います。しかし一方で、地域の困りごとは聞いているものの、クラブ単体ではリソースが割けない、ノウハウがないといった壁にぶつかることも現実です。そこで、一緒に地域課題の解決に取り組むパートナーさんを募集しています。
具体的な共創アイデア例としては3つ。ひとつは、地域として掲げるゼロカーボンに向けたCO2削減量の可視化です。そして、消耗品や備品のアップサイクル環境の実現。クラブでは選手の練習着やボール、ゴールネットなど、廃棄物が多く出ています。そこに付加価値を加え、再利用できる仕組みも考えていきたいです。また、スタジアムに足を運んでもらう参加型SDGs企画などをパートナーと共に実現していきたいと思います。
――今回の取り組みで、パートナー企業に提供できるリソースやアセットについてお聞かせください。
小澤氏 : 情報発信力が、私たちの一番の強みです。年配の方が多い地域ですので、SNSなどというよりは、スタジアムでリアルな接点のもとで、共創パートナーのテクノロジーを紹介できると考えています。
私たちにはクラブの活動に理解があり、一緒にあゆんでいただけるサポーター、スポンサーなどステークホルダーがたくさんいらっしゃいます。そういった方々に強いメッセージとして伝えていくことができるのです。さらには、私たちは最近「ハブになる」という言葉を使っているのですが、自分たちがアクションを起こすだけではなく、「つなぐ」ことでも貢献できると考えています。
――最後に、興味を持っている企業にメッセージをお願いします。
小澤氏 : 「地域のために何ができるか」を一緒に考えて取り組んでいただけるパートナーさんを求めています。地域のために真剣に動く企業こそが、その地域の理解を得ることができると考えています。ぜひ、色々なアイデアやテクノロジーを共有いただき、一緒に成長していきたいですね。
取材後記
オリンピック開催地として、地域にスポーツが根付いている甲信越・北陸エリア。スポーツクラブや団体の地域貢献にかける意識も、非常に強いと感じた。地域が抱える課題も日常的な活動から把握していることから持続的な取り組みに繋がりやすいと考えられるし、地元の人々からも強力な後押しが得られることだろう。地元長野県やテレビ局など、自治体や地元企業の強力なサポートを得られることも心強い。応募締め切りは10月14日が予定されている。共創の可能性について、ぜひ検討をしてみてほしい。
※「INNOVATION LEAGUE SPORTS BUSINESS BUILD 2022 KOSHINETSU-HOKURIKU」の詳細についてはこちらをご覧ください。
(編集・取材:眞田幸剛、文:佐藤瑞恵)