1. Tomorubaトップ
  2. ニュース
  3. 農業・建設・工場でこそ、高次の仕事を――川崎重工業が模索する「無人自律運搬車両」の利活用
農業・建設・工場でこそ、高次の仕事を――川崎重工業が模索する「無人自律運搬車両」の利活用

農業・建設・工場でこそ、高次の仕事を――川崎重工業が模索する「無人自律運搬車両」の利活用

  • 7737
  • 7722
  • 7708
5人がチェック!

神戸市主催のオープンイノベーション・マッチング事業「Flag(フラッグ)」では、ホスト企業として地元に拠点を構える10社が参画。各社がどのようなテーマを提示しているのかを取材していく(※)。――今回は、三大重工メーカーの一角を成す川崎重工業株式会社を取り上げる。

輸送用機器、エネルギー、産業用設備、レジャーなど多岐にわたる製品を開発・提供している同社は、無人自律運搬車両(多用途UGV)の自動走行による工場内物流の実証実験を行った実績を持ち、多用途UGVがオフロードに適していることなどから、さらに活躍の場を広げることを目指している。

「Flag」で同社が募集テーマとして掲げているのが『移動の無人・自律化による農業・建設・工場の新たなワークフローの創出』。これを受け、社長直轄プロジェクト本部 近未来モビリティ統括部 システム開発部 担当部長 原 純哉氏に、共創で実現したいことや「Flag」参画にかける想いについて話を聞いた。

※「Flag」インタビューシリーズの記事一覧はこちらをご覧ください。


事業化のスピードアップを図ると共に、多用途UGVの可能性を広げたい

――まずは今回、「Flag」に参画をした背景や目的をお聞かせください。

原氏 : 大きく二つあります。一つはスピーディーな事業化のためです。これまで当社は自社で多用途UGVの開発を行ってきました。しかし、世の中を広く見ると、スタートアップを中心に独自性のある技術で自動運転を手がけている企業が少なからずあります。そうした企業と共創したほうがより迅速な事業化を目指せるはずです。

もう一つは多用途UGVの可能性を広げるためです。当社が昨年に明石工場内で行った実証実験に使用した車両は、オフロード四輪車「MULE」をベースにしています。工場に限らず、オフロード四輪車という特性を活かせば、もっとさまざまな場の課題解決ができるはずです。

一方で、自分たちで用途を考えるのは限界がありますので、オープンイノベーションを通じ、「こういう場面で使えるのではないか」「こんな課題を解決できるのではないか」というヒントを得ることに期待を寄せています。


▲川崎重工業株式会社 社長直轄プロジェクト本部 近未来モビリティ統括部 システム開発部 担当部長 原 純哉氏

――それで募集テーマ『移動の無人・自律化による農業・建設・工場の新たなワークフローの創出』としたのですね。

原氏 : はい。地面がデコボコしたところ、一般車両が入り込めないところ、たとえば、農場や建設現場にこそ、当社の多用途UGVが本来の力を発揮できるのではないかと考えています。

農場、建設現場、工場の困り事の発見・解決を目指したい

――どのような企業とどんなアイデアを実現したいとお考えですか。

原氏 : 自動運転の技術を持ち、かつ課題解決に向けて一緒にチャレンジしていただける企業です。たとえば、農業で困っている人を自動化で助けたいが、ハードがないという企業との共創を視野に入れています。

当社の持つ課題感と似ているけれども、「ちょっとズレがある」という企業とディスカッションを重ねると、思いもよらなかった、お客様の困り事が発見できるのではないでしょうか。

他方で、現状では自動運転とは少し距離のある方たちとの共創も積極的に行いたいと考えています。たとえば、農業や建設のDXや、業務フローの効率化などを行っている方たちとも、力を合わせることができるのではないでしょうか。現状ではあまり考慮していなかったとしても、多用途UGVを使用することで全体の業務フローを効率化できる。そういうチャンスが生まれるのではないかと思案しています。


▲川崎重工業のグループ会社であるカワサキモータース製の多用途UGV「MULE」

――農場や建設現場で実証実験を行い、可能性を広げていきたいとお考えでしょうか。

原氏 : そうですね。実は昨年と一昨年に北海道の農場で多用途UGVを走らせました。とはいえ、畑の農道など限られた場所で走行試験を行ったのみです。一口に農業といっても畑作、稲作、牧畜があり、現状ではそれらの一部で多用途UGVの実証試験を行ったにすぎず、まだまだ検証の余地は残されています。

――工場での検証についてはいかがでしょうか。

原氏 : 工場については、弊社の明石工場で物資を無人輸送する実証試験を行いました。フォークリフトや自転車、人がいた場合はどう共生するか。また、工場には独自のローカルルールもありますので、対応しなければいけません。汎用化の面で課題が多く残されているのが現状です。今回のオープンイノベーションでさらなる前進を目指しています。

「自動走行」で働く人、社会をもっと幸せに

――貴社が提供できる強み、アセット、リソースについてお聞きします。改めて、多用途UGVについて教えてください。

原氏 : 車両サイズは全長3.39m、全幅1.63m、全高1.97mで、約500㎏の物を運べます。電気モーターとガソリンエンジン、いずれにも対応し、明石工場の実証実験では電気モーターを用いました。また、ベースの部分は残して、上物の部分は改造が可能です。


▲2022年3月に明石工場で実施された実証実験」の様子(参照:プレスリリース

――ベースとなるMULEはどのような車なのですか。

原氏 : オフロードの走行が得意で、いろいろな用途に活用ができる車です。日本ではあまり見られませんが、北米では人気で、MULEも主にアメリカで販売されています。販売されている自社製品ですので完成度は高く、改造にも柔軟に対応できます。

また、多用途UGVにロボットアームを取り付けることも、可能性としては考えられます。今すぐそうした活用を考えているわけではありませんが、幅広い技術にアクセスできることもぜひ覚えておいていただきたいと思います。

――原さんが所属しているのは、社長直轄プロジェクト本部ですので、意思決定も速いのではないでしょうか。

原氏 : そうですね。意思決定のスピード感も当社と共創するメリットと言いますか、良さの一つになると考えられます。

――最後にプログラムにかける意気込みと、応募を検討している企業へのメッセージをお願いします。

原氏 : 仕事をする過程で物を運ぶという作業が発生することがしばしばあります。その作業は必ず行わなければならないことですが、もしかしたら人も時間もかけたくないことかもしれません。そうした作業を自動化するのが私たちの狙いです。

自動化の結果、時間と人が解放されて、別の業務ができるようになり生産性をアップさせられる可能性があります。もしかしたら、労働者の自己実現を後押しできるかもしれない。会社や働く人、社会をもっと幸せにするのが私たちの最終的な目標です。ぜひ、力を合わせましょう。


KOBE OPEN INNOVATION「Flag」 10/13(木)応募締切

神戸市内企業と市内・全国のパートナー企業とのオープンイノベーションプログラム

(編集・取材:眞田幸剛、文:中谷藤士、撮影:加藤武俊)

新規事業創出・オープンイノベーションを実践するならAUBA(アウバ)

AUBA

eiicon companyの保有する日本最大級のオープンイノベーションプラットフォーム「AUBA(アウバ)」では、オープンイノベーション支援のプロフェッショナルが最適なプランをご提案します。

チェックする場合はログインしてください

コメント5件

  • 木元貴章

    木元貴章

    • 有限会社Sorgfalt
    0いいね
    チェックしました
  • 須原

    須原

    0いいね
    チェックしました
  • 眞田 幸剛

    眞田 幸剛

    • eiicon company
    0いいね
    チェックしました

シリーズ

KOBE-OPENINNOVATION-Flag

神戸市内企業と市内・全国のパートナー企業とのオープンイノベーション・マッチング事業「Flag」。新たな事業開発や課題解決に向けたテーマを神戸市内企業が旗(Flag)として掲げ、ともにチャレンジしたい共創パートナーを募集します。