アフリカで事業展開する「WASSHA」| 約11億円の資金調達、第一生命、ダイキン、ヤマハ発動機、Mistletoe、UTECから出資を受け事業を加速
アフリカ最大の小売店プラットフォーム構築を目指すWASSHA(ワッシャ)株式会社は、新規投資家として、第一生命保険株式会社、既存投資家として、ダイキン工業株式会社、Mistletoe Japan合同会社、ヤマハ発動機株式会社、東京大学エッジキャピタルパートナーズが運営するファンド、計5社を引受先とする第三者割当増資を実施し、2022年6月10日に、シリーズCラウンドとなる総額11.4億円の資金調達を完了したと発表した。今回の調達を含めた2014年2月からの累計調達額は約35億円となる。
資金調達に至った背景
WASSHAは、ビジネスを通じて社会課題を解決し人々をエンパワーする「Power to the people」をミッションに掲げ、2013年の創業以来、アフリカで事業を展開している。アフリカ市場では、急速な人口増加を背景に世界各国のスタートアップが多数参入し、最先端のテクノロジーの活用と革新的なビジネスにより、従来の先進国の発展プロセスを飛び越えたリープフロッグ型の発展が起きており、急速な成長を続けている。
この成長著しいアフリカ市場において、WASSHAは現地の購買行動の起点である小売店(以下キオスク)を活用したプラットフォーム事業に取り組んでいる。最初にローンチした未電化地域向けの電力サービス事業(Energy as a Service事業、以下EaaS事業)では、東アフリカのタンザニア・ウガンダ・モザンビークにて、合計約5,100店舗(2022年5月末時点)のキオスクを介し、自社開発した太陽光充電式のLEDランタンを、所得の安定しない一般消費者にレンタルしている。
▼LEDランタンの利用シーン
レンタルに特化して開発されたLEDランタンは、電源スイッチがAndroidアプリによって制御されており、現地で普及する電子マネーの送金サービス「モバイルマネー」で利用料金をプリペイドした場合にのみ1泊分だけ利用できる仕組みを構築し、2022年5月末時点で、1日あたりのレンタル回数が10万回を超えるサービスに成長している。
また、キオスクの与信判断を自動化するアプリケーション、キオスクでの在庫管理を効率化するアプリケーション等を自社で開発、オペレーションで活用することにより、アフリカ未電化地域での効率的な事業運営が可能となり、2023年内には、タンザニア、ウガンダ、モザンビークに加え、西アフリカへの進出も予定している。
事業共創にも着手
この度、合計5社の既存株主および新規引受先を通し、資金調達を実施した。事業会社各社との間では、キオスクのプラットフォームを活用した各種新規事業の検討を進めていく。
ダイキン工業株式会社との間では、2019年に設立したジョイント・ベンチャーであるBaridi Baridi株式会社を通じた開発途上国におけるエアコンのサブスク事業を共同で展開しており、ヤマハ発動機株式会社との間では物流ビジネスの共同検討が、Mistletoe Japan合同会社との間では他の投資先企業と連携したキオスク活用事業の検討がそれぞれ始まっているそうだ。
なお、今回調達した資金は、自社主導の新規事業への投資や、既存事業のアフリカ域内での他国展開の費用に充当する。また、IPOに向けての人材獲得、組織強化への費用にも充てる予定だという。
WASSHAは、「Power to the people」のミッションのもと、国内外の様々な企業との連携を図りながらアフリカ最大の小売店プラットフォームを構築し、プラットフォームを活用した新たな事業の創出に取り組んでいく考え。また、アフリカ市場での事業展開を通し、現地における社会課題解決を目指す。
▼提携するキオスクのオーナー
WASSHA株式会社 代表取締役CEO 秋田智司氏のコメント
『当社は「Power to the people」をミッションに掲げ、2013年の創業以来、ビジネスを通じたアフリカの社会課題の解決に取り組んでいます。
創業期から展開している未電化地域向けの電力サービスは、コロナ禍でも堅調な需要が下支えとなって成長を続け、タンザニアのみならずウガンダ、モザンビークにも拡大し、コンゴ民主共和国でも年内に事業を開始する予定です。
従業員数は左記の4か国に加えて日本も含め200名超となり、提携する現地小売店(キオスク)は5,000店舗以上に達しました。この店舗網を活かした新たな事業検討も進んでおり、今後は電力だけでなく金融・物流など各種領域で社会性と事業性を両立したサービスを展開する会社へと成長していくフェーズに入っていきます。シリーズCとなる本ラウンドでは、既存投資家各社からの追加出資に加え、インパクト投資の分野で日本を代表する第一生命保険株式会社様にも新たに資本参加頂きました。
当社の事業が、アフリカの人々が日々直面する課題の解決に繋がり、テクノロジードリブンの社会変革の契機になる事をご期待頂き、また、アフリカ市場で日本企業の存在感を高めるために必要な事業となるという点に共感頂き、各社投資を決定頂いたのだと考えています。
今回の増資によって調達した資金は、ご期待・共感頂いた未来を実現するための更なる事業開発、人材獲得・育成、研究開発のために投資する予定です。また、今回のラウンドでは、最終的には出資に至りませんでしたが、複数の投資家の方々とも議論をさせて頂きました。
様々なスタートアップを見てこられた投資家の方々との議論は、事業上の気付きを得る貴重な機会になりました。ご縁を頂いた全ての投資家の皆様に、この場を借りて、改めて御礼を申し上げます。これからも、Unlock humankind's limitationというビジョンの実現、ミッションの遂行に全力を尽くして参ります。』
シリーズCラウンド第三者割当増資の引受先からのコメント
■第一生命保険株式会社 オルタナティブ投資部 イノベーション投資室 室長 乙部真太郎 氏
『弊社はWASSHAのアフリカの社会課題解決に挑戦する姿勢に強く共感し、経済的なリターンの獲得と社会的インパクトの創出の両立を目指すインパクト投資として出資を決めました。今後、WASSHAの更なる発展を通じて、未電化地域に暮らす人々のQOLが向上するだけでなく、アフリカ社会に貢献できる新たなビジネスモデルの構築により、未電化地域をはじめとしたアフリカの人々の生活をますます豊かにする事業を展開することに期待しております。』
■ダイキン工業株式会社 テクノロジー・イノベーションセンター 副センター長(兼)CVC室長 三谷太郎 氏
『2019年の出資以降、共同で合弁会社を設立するなど、WASSHAとの協創活動に取り組んできました。今回の追加出資により、両社の関係性を一層強固なものにし、新たな価値創造に向けた取り組みを拡大できることを大変嬉しく思います。今後、現在取り組んでいるエアコンのサブスクリプション事業に加え、現地の人材育成を起点とした新たな展開を進め、社会課題の解決と市場の創造に挑戦していきます。』
■東京大学エッジキャピタルパートナーズ 代表取締役社長CEO・マネージングパートナー 郷治友孝 氏
『アフリカの未電化地域で人々に電気を届けたいとおっしゃる秋田さんの夢を初めて伺ったのは、2013年のことでした。それが今や、アフリカのタンザニア、ウガンダ、モザンビーク3か国で5,000件ものキオスクに広がる、地域の方々の生活にとって、なくてはならないサービスに発展しました。ここまで本事業を発展させて来られたWASSHAの皆様のご尽力に心より敬意を表するとともに、WASSHAはより多くのアフリカの人々に灯りをともしていくだろうと確信しています。』
■Mistletoe Japan 合同会社 創業者 孫泰蔵 氏
『「アフリカで現地のお客さんと過ごしている時が彼らは一番幸せそうです」 - ある取材で私はWASSHAについて、このように話しました。それだけWASSHAは課題の最前線に飛び込んで活動しています。そしてその現場で発見した課題を、本場でテクノロジーやオペレーション、ノウハウを学んだメンバーが総力を挙げて解決しようとしています。WASSHAがアフリカに灯したイノベーションという火は、この「現場」と「本場」の行き来を通じて更に加速していくでしょう。彼らの持つ潜在的な可能性は、とてつもないものだと感じますので、私たちも引き続きこの挑戦を応援していきます。』
■ヤマハ発動機株式会社 取締役 技術・研究本部長 丸山平二 氏
『当社は1960年代からアフリカ市場の開拓と社会課題の解決を目的として、二輪車、船外機、ボート、発電機、小型浄水装置などの販売・サービス、技術指導などを重ねてきました。本出資を通じ、アフリカの社会課題解決と持続可能な成長に向けた現地雇用創出、および両社の事業拡大につながることを期待します。』
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