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【unicorn VISION】石から作るプラスチック。日本が誇るユニコーン企業 TBMが仕掛ける次の挑戦

【unicorn VISION】石から作るプラスチック。日本が誇るユニコーン企業 TBMが仕掛ける次の挑戦

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昨今、SDGsなどの影響でビジネス界でも注目を集める環境問題。しかし、これまでは「環境への配慮とビジネスは両立しない」というのが通説で、環境ビジネスの会社は儲からず、成長する企業は環境を蔑ろにしているケースがほとんどでした。

「今は消費者や投資家の意識も変わり、環境への配慮は必須項目になりつつあります」

そう語るのは、石灰石を主原料とするプラスチックや紙の代替となる新素材「LIMEX(ライメックス)」などを開発・製造・販売する株式会社TBMで、資源循環プロジェクトの責任者を任されている大場氏。前職の環境系ベンチャーの上場に貢献した同氏は、新たな挑戦の場としてTBMを選択しました。

ユニコーン企業の次なる挑戦を探る「unicorn VISION」第一弾では、TBMにフォーカス。環境を巡るビジネスの市況はどのように変わってきたのか、環境ビジネスを成功させるために必要なこととは何か。キャリアのすべてを環境ビジネスに注いできた大場氏を掘り下げます。


▲株式会社TBM 資源循環イノベーション部 部長 兼 プラント事業部 部長補佐 大場 健太郎氏

沖縄の変わり果てた風景が環境ビジネスの道へ進むきっかけに

ーーまずはTBMに入社するまでの経緯を聞かせてください。

大場氏 : 私は新卒で環境系のベンチャー企業に入社し、環境コンサルティングやリサイクルプラントの立ち上げ、再生可能エネルギー発電所の新規事業開発などの仕事をしていました。会社が成長し、東証一部に上場、会社が0→1、1→10のフェーズから、10→100のフェーズに移行した頃、再度ベンチャー企業で挑戦したいと思い、14年いた前職の会社からTBMに転職したのです。

ーーなぜ新卒で環境系のベンチャーに入社しようと思ったのでしょうか?

大場氏 : 環境問題に興味を持ったのは、15歳の時に師として仰いでいた動物学者の方に沖縄の写真を見せられたのがきっかけです。「こんなにきれいな自然と、ゴミの不法投棄の現場が隣り合わせにあるんだよ」と対極的な写真を見せられたのがショックで、それから地球環境を守りたいと強く思うようになりました。

大学も農学部で環境について学び、就活でも環境の事業をしている会社を探すことに。しかし、当時はまだ本気で環境ビジネスをしている企業は少なかった。環境課題にアプローチをしている会社はあっても、ビジネスとして捉え、環境課題解決とビジネスとしての成長を両輪として考えている企業はほとんどありませんでした。

前職の会社は環境もビジネスも本気で取り組んでいる数少ない会社だったのです。

ーー転職活動では、なぜTBMを選んだのでしょうか?

大場氏 : 転職活動では環境系のベンチャー企業に絞って探しており、TBMの事業が私の希望にマッチしたからです。決め手となったのは「感謝を大切にする社風」。面接前後の皆様の対応や、丁寧なお礼メールなど、会社全体から感謝する姿勢を感じたんです。

環境ビジネス、特にその中でも新規の事業をしていくのに「感謝の気持ち」が欠かせないことは、前職での経験で感じていました。感謝があるから輪が繋がり、新しいビジネスが始まったりパートナーともつながっていくのです。TBMでは来訪者の方がオフィスに見えると、全員が席を経って挨拶をするなど、徹底して礼儀を重んじます。その姿勢に大きな可能性を感じると同時に、是非一緒に同じ船で未来に進んでいきたいと考えました。

LIMEXを資源循環することで期待できる地球規模のメリット

ーーTBMでの仕事内容を聞かせてください。

大場氏 : TBMに入社してからは、資源循環の仕組みを作る仕事をしています。TBMが開発したLIMEXはリサイクルして何度も使えるのが強み。リサイクル工場を新たに立ち上げたり、使用済みのLIMEXや廃プラスチックを回収・再資源化するためのサービスを作るのが私の仕事です。

ーーLIMEXが普及することで、社会にどのような影響があるのでしょうか?

大場氏 : 1つ目は原料の地産地消ができること。LIMEXの原料となるのは世界中、もしくは日本中で採掘できる石灰石です。現地で採った石灰石を現地で加工し、また回収して別の製品にする。海外や日本の遠い所から原料を運ぶ必要がないため環境に優しく、それぞれの地域で循環させられるので経済も安定します。



例えば資源を別の国や地域に依存していると、何らかの理由で資源を供給されないリスクもありますよね。LIMEXが普及すれば、他の地域に原料を依存することがなくなるので、経済的リスクを大きく減らせるんです。

加えてLIMEXは、プラスチックと違って劣化しにくいのも大きな特徴。プラスチックは劣化しやすいため、実は何度もリサイクルできません。そのため、日本のプラスチックのリサイクルのほとんどは「サーマルリサイクル」つまり燃やして燃料にしているんです。日本はリサイクル率が高いと言われていますが、実はそのリサイクルの方法自体が環境に優しくないんですね。

LIMEXなら、何度も使えるので燃やす必要がなく、環境に優しいリサイクルを実現できるのです。

ーー地産地消できて何度もリサイクルできるのは魅力的ですね。製造過程での特徴はあるのでしょうか。

大場氏 : 製造過程で水を使わないことも大きな特徴です。LIMEXは紙のようにも使えるのですが、紙はその製造過程で大量の水を使うことが世界的に問題になっているのです。海外では水がないことで命が危険にさらされることも少なくありません、

日本は水不足を感じることはありませんが、多くの食品を輸入していますよね。その食品を作るのにも大量の水が使われているので、世界の水不足は日本に関係ない話ではないのです。

LIMEXが普及することで世界中の水不足にも貢献できる可能性があると注目されています。

変わりつつある日本の環境ビジネスの市況。消費者の意識変革で市場拡大

ーー前職から環境ビジネスに携わってきた大場さんにとって、環境ビジネスの難しさを教えてください。

大場氏 : 経済合理性を保ちながらサービスを展開することです。環境ビジネスは協賛金や補助金をもらえることが多いのですが、そこに依存していては事業は長く続きません。継続的に事業を発展させていくために「儲ける」ことが欠かせないんです。

しかし、環境にいいことをしていることに満足して、経済合理性を置き去りにし、結果的に事業が続かないケースをよく目にしてきました。ビジネスを立ち上げるときに協賛金補助金を利用するのはいいですが、活動を続けていくには絶対に儲けることを忘れてはいけません。

ーーここ数年で環境ビジネスの市況も動いていると思いますが、大場さんはどのように感じていますか。

大場氏 : おっしゃる通り、ここ数年で環境ビジネスを取り巻く環境は大きく変わり、ビジネスがしやすくなったと思います。まず変わったのは消費者の意識。多くの人が「今のままだと地球が危ない」ということを意識しだして、多少高くても環境に優しい商品を買うようになりました。

同じように投資家の意識も変わってきたので、自然と企業も意識も変えざるを得なくなりました。環境に配慮しないビジネスには投資家たちが投資しないため、企業もビジネスを考える時に環境を考慮しなければいけなくなったのです。

ーー人の意識が変わったことで、環境ビジネスのしやすさも変わってきたのですね。

大場氏 : 私もこれまでビジネスを展開するのと同時に、情報を発信することで人々の意識を変える活動をしてきました。例えば前職では、環境ビジネス推進にかかる法律づくりにも携わっていましたし、TBMに入社してからは自治体を巻き込んだ業務にも参画させて頂いています。

法律や行政を変えることで人の意識を変えることで、私たちがビジネスをしやすくなり、ビジネスが発展することで、より人の意識も変わっていく。そのような循環を生み出すために活動も大切だと考えております。

ーー日本の法律は海外と比べて遅れているイメージがありますが、実際はいかがですか?

大場氏 : まだまだ日本の環境に関する法律は、海外に比べて遅れていますね。海外では環境に関するロードマップが敷かれており「○○年にはプラスチックゴミ0」という目標に向けて、段階的に規制が敷かれています。もちろん、ルールに反した会社には罰則もあるので、強制的に企業も環境に配慮しないといけないんですね。

日本ではそのような強制力のある法律はないので、なかなか変われない現状もあります。私たちが環境ビジネスのモデルになることで、規制も変えていきたいですし、日本発のサービスを作ることで海外にもアピールしていきたいと思います。


パートナーと組むことで、社会全体に行動変容を生み出していく 

ーー行政との取り組みについて教えてください。

大場氏 : 神奈川県横須賀市にリサイクルプラントを作ることをきっかけに、横須賀の市議会と一緒に資源循環の法律を一緒に作っていくことになりました。私たちのプラントを作ることで、地域経済の活性化にも繋がることが期待できるので、自治体も共感してくれやすいんです。

例えば私たちのプラントは単にリサイクルをするだけでなく、次の商品の拡販にも繋がるので、地域経済の活性化にも繋がります。加えて、プラントでは地元の人達を雇用するので、地域の就労率も高まるのです。単に経済に優しいだけでなく、地方経済の活性化も期待できるため、行政も注目してくれています


▲画像出典:プレスリリース 

ーー今後も各地にプラントを作っていくのでしょうか?

大場氏 : そうですね。既に国内だけでなく、海外のパートナーと一緒にプラントを作る計画も進めています。海外は日本と違って「廃棄物は燃やせばいい」ではなく、しっかり別の製品に作り変えるリサイクルをしているので、私たちのサービスに共感してもらいやすいのです。

日本でもプラントを増やすことで、意識の変革を起こせればと思っています。プラントが増えればそれだけコストを下げることができるので、よりパートナーへのメリットにもなるよう、国内のパートナー探しにも力を入れていきたいですね。

ーーどのような会社をパートナーにしているのでしょうか。

大場氏 : 例えば静岡の大手リサイクル会社エンビプロ・ホールディングスさんとも協業を果たしました。私たちはまだ若い会社で、プラントを立ち上げるための技術やノウハウを持ち合わせていないので、エンビプロさんに技術指導をしてもらっているのです。

他にもローソンと協働して、「CirculeX(サーキュレックス)」という再生素材を使った新商品の開発も行っています。CirculeXは再生素材を50%以上使用している素材で、ごみ袋や傘の素材として活用できるのです。



ーー素材を回収するのも課題かと思うのですが、どのような取り組みをしているのか教えてください。

大場氏 : おっしゃる通り、資源循環社会を作るには回収は欠かせない要素です。私たちも、効率的かつみなさんの価値観を変えられるような回収方法を日々考えています。

そのために始めたのが、オフィス等の事業所を対象とした法人向けの資源循環サービス「MaaR for business(マール・フォー・ビジネス)」というサービス。顧客企業のオフィスで使用されたLIMEX製品やプラスチックを回収し、オフィスで活用可能な環境配慮型製品に交換できるチケットを配布します。

これまで分別しても燃やされていたプラスチックを本サービスを通して再生利用を図ることで、オフィスで働く人々の環境意識を変えるのが目的です。今後は事業所だけではなく、個人が利用したプラスチックを回収するサービスも随時提供していきたいと思います。

ーー最後に、これからのビジョンを聞かせてください。

大場氏 : 「価値観」と「仕組み」そして「技術」の3つをうまく活用して、資源循環社会を作っていきたいと思います。私たちは圧倒的な技術力があるので、そこにフォーカスしてもビジネスは成立するのですが、仕組みを作り、人々の価値観を変える啓蒙活動も忘れてはいけません。

単に商品を作るだけでなく、その商品を回収してまた別の製品として生まれ変わる、みんなが自発的に環境に優しい商品を使う。そんな社会を作ることで、今よりも地球にやさしい時代を作っていきたいと思います。100年後に振り返った時に「TBMがいたから地球の環境がよくなったね」と誇れるような会社にしていきたいです。


(取材・文:鈴木光平)

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