共創とは?そのメリット・デメリットと成功事例も併せて紹介
変化が激しく、次々と新しいサービスが生まれている現代。競争を生き抜くには、これまでよりもスピーディに事業を作っていかなければなりませんが、一社の力ではそれにも限界があります。そこで現在注目を浴びているのが「共創」という考え方。
自社だけではなく、顧客や外部の組織と組んで新しい価値を創り出していくという概念です。今回は共創について、どのような事例やメリット・デメリットがあるのか紹介していきます。
共創とは
共創という概念が正式に発表されたのは2004年のこと。米国ミシガン大学ビジネススクール教授のC.K.プラハラードとベンカト・ラマスワミの共著『価値共創の未来へー顧客と企業のCo-Creation』の中で述べられています。Co-Creationの日本語訳が「共創」というわけです。
企業がそれまで自社内だけで行ってきた企画や開発などの活動を、社外の組織と一緒に進めていくのが共創だと説明されています。共創パートナーとなり得るのは法人にとどまらず消費者や教育機関、研究機関、自治体など様々な組織が考えられます。そのような様々なステークホルダーと協力しながら、既存事業の改善や新規事業の創出を進めていくのが共創です。
共創ビジネスの種類
一口に共創ビジネスといっても、相手との関係性から次の3種類のタイプに分別されます。
双方向(インタラクティブ)関係
これまでのビジネスの多くは「企業→ユーザー」という一方向的な関係性が一般的でした。しかし、ユーザーを共創相手として新たな価値を生み出していくのが「双方向関係」です。
代表的な取り組みでいえば「コミュニティマーケティング」。ユーザーの中から熱狂的なファンをコミュニティ化し、一緒に事業を作っていきます。新規サービスをいち早く利用してもらうことで改善に活かしたり、アンバサダーとしてPRの一旦を担ってもらうことも。
コミュニティが発展すれば、それ自身が新しいビジネスの源泉になる可能性も秘めています。
共有の関係
様々な組織が、一つのテーマについて集まりコンソーシアムやコミュニティを組成する関係です。具体的に事業化するだけでなく、特定の課題について知恵を絞ることで、一社では解決が難しい課題についても取り組めます。
コンソーシアムに参加することで「あの会社は〇〇という課題に対して取り組もうとしているんだな」というアピールにもなるため、採用やPRに活動でも有利に働くでしょう。
提携の関係
自社で不足しているファクターを備えている組織と保管的な関係を築くこと。これまで他社と組むと言えば、受発注のような関係が一般的でした。しかし、共創における提携とは企業の規模などによる上下関係をなくし、対等な立場で協力しあうことをいいます。
例えば、最近増えている大企業とスタートアップの共創も対等な関係でなければ成功しません。大企業の方がアセットを持っているのは明らかでも、アイデアや技術など、大企業の足りない部分を補完してくれるスタートアップにリスペクトを持って接するのが成功の秘訣といえます。
共創が注目を浴びている背景
なぜ、近年になって共創が重要視されているのでしょうか。その背景には人々の価値観が多様化し、求められる商品やサービスも画一的ではなくなっていることが挙げられます。多様な価値観を持つユーザーに求められるには、企業も多角的な視点で新しい商品・サービスを開発しなければいけません。
また、グローバル化や人々が触れる情報量の増加も大きな要因の一つ。社会の変化スピードは加速し、それに伴い商品やサービスの消費サイクルも速まっています。一度は業界で優位なポジションを築いても、市場が変われば優位性を失うケースも珍しくありません。常に優位なポジションを維持し続けるには、常に新しい価値を生み出し続けなければいけないのです。
そのような時代の変化に対応するには、一企業の力では無理があります。そのため、様々なステークホルダーと協力しながら新たな価値を生み出していく考え方が注目を集めているのです。
共創ビジネスのメリット
共創を実現することでどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
消費者の「生の声」を商品に反映できる
ユーザーと共創する場合、消費者の生の声を聞きながら商品・サービスを作れるのは大きなメリットです。事業づくりにおいてユーザーの声を聞くのは重要な工程ではあるものの、ユーザーの本音を聞くのは容易ではありません。
仮にユーザーアンケートをしたとしても、多くの人は「嫌われたくない」という心理から、商品のポジティブな意見しかくれないことも。しかし、それでは本当に求められる商品を作ることはできません。
共創して関係性を築くことで、ユーザーもより深い意見をくれるようになります。ファンだからこそ「もっとこうした方がいい」という意見も出してくれますし、時には事業へのアイデアも出してくれることもあります。
ファンづくりになる
ユーザーとの共創を続けていくことで、商品・サービスのファンづくりにも繋がります。例えば、競争の取り組みを発信することで「私もファンだからコミュニティに入りたい」「面白そうだから私もファンになった」という方が現れてもおかしくありません。
ユーザーとの距離が近いということは、それだけユーザーからも親近感を得やすいもの。ファンとの共創との取り組み自体が、商品・サービスの価値として上乗せされていくのです。
新しいビジネスアイデアが生まれる
ユーザーや外部の組織と組むことで、新しいアイデアが生まれることはよくあります。自社にはない視点で考えられるので、これまでになかった斬新なアイデアが生まれることも珍しくありません。
リソースの補完
外部組織のリソースを活用することで、自社では不可能なビジネスの広がりを作れるでしょう。
単に発想力の問題だけでなく、自社にないアセットを利用できるのも大きなメリット。自社にはない技術や施設などを活用することで、自社ではできないビジネスを作れるようになるでしょう。
例えば海外の販売網を持っている会社と組めば、それだけで新しい市場を開拓することができますし、自社にない技術を持っている企業と組めば、新しい製品を生み出せるでしょう。ゼロから販売網を作ったり、技術を生み出すのに比べて時間も費用も大幅に省略できます。
生産シナジー・販売シナジー
共創することで生まれる様々な相乗効果のことを「シナジー効果」と呼びます。様々なシナジー効果がある中で、代表的なものは生産シナジーと販売シナジーの2つ。
生産シナジーとは、生産拠点のラインや倉庫、営業所を共に利用することで物流費用やの削減や稼働率を向上させられること。一方で販売シナジーとは、販売店や販売スペースを共有することで企業同士の統一ブランドイメージを作ることで売上げアップさせることを言います。
共創のデメリット
共創には様々なメリットがある一方で、デメリットも確実にあります。事前にどのようなデメリットがあるのか把握して対策しましょう。
共創相手に依存してしまうリスク
共創によって自社にはないアイデアを求める姿勢は素晴らしいですが、それが続くと自分たちでアイデアを考える力が失わていきます。もしもユーザーと共創して、ファンからの意見を商品やサービスに反映していた場合、もしも自分たちでアイデアを考えられなければ、それはユーザーの御用聞きということに。ユーザー同士が正反対の意見を出した時も、どちらの意見を優先すべきか決断できないでしょう。
また、他社と共創する場合も、相手のアイデアばかりを採用していると自分たちのイニシアチブが失われていきます。対等な立場で始まったはずの共創が、いずれ相手の意見を通さざるを得なくなってしまうのです。相手の意見を尊重する姿勢は重要ですが、対等な立場を保つために自分たちでアイデアを考える姿勢をなくさないようにしましょう。
ルールの管理が複雑になるリスク
共創には様々な利権がからんできます。例えば、ファンになったユーザーが「とにかく力になりたい」と無償で協力してくれる場合はいいですが、企業と組む場合はお互いの利益を考慮しなければいけません。お互いが利益を享受できるようにするには、様々なルールを作っておく必要があります。
また、共創をしていく上でも様々なルールが必要です。ルールを曖昧にしておくと、いざという時にトラブルに発展し、それまで積み上げてきたものが全て無駄になってしまうことも。相手を信頼するのも重要ですが、いざという場合を想定して、細かくルールを決めた上で共創を進めましょう。
風評被害のリスク
共創する際には、競争相手との距離が縮まります。それが印象アップに働くことがある一方で、悪印象を与えるリスクも考慮しなければなりません。
例えばユーザーと共創する際に「商品が好きだから協力したけど、担当の態度が悪くて嫌いになった」というケースも考えられます。ファンを一人失うのも大きな痛手ですが、もしもSNSなどで発信されればその影響は計り知れません。
それは法人相手も一緒。「あの会社と共創してもメリットがない」という噂されれば、次回以降の共創が難しくなるでしょう。無理に自分たちを飾る必要はありませんが、相手に悪印象を与えないよう気をつける必要もあります。
情報漏洩のリスク
共創では、競争相手の技術などを利用できる一方で、自分たちの技術やノウハウも開示しなければいけないこともあります。事前に調査して、信頼できる相手だから共創に至ったのだと思いますが、技術を盗まれたり、ノウハウが漏洩してしまう可能性はゼロではありません。
自分たちの技術やノウハウを守るためにも、信頼できる相手をパートナーにするのはもちろん、NDA(秘密保持契約)を結んで法的な強制力をもちましょう。
自社都合で共創を解消できないリスク
何かしらのメリットがあると思って始めた共創も、いざ始めたら想定していたよりもメリットがない、もしくは大きなリスクが潜んでいるケースも珍しくありません。それ以上共創を続ける気がない場合でも、自社の都合だけで契約を解消できるものではありません。
自分たちにメリットはなくとも、相手にはメリットがあって共創を続けたいと言われる場合も。無理に共創を解消すれば、印象も悪く禍根を残すことになるかもしれません。共創前にしっかり調査、分析をしてメリットとリスクを考えておくのはもちろん、仮に共創を止めたい場合も誠実な対応を心がけてください。
共創型DXでイノベーションを起こす
最近注目されている「DX」も共創によって実現することが可能です。そもそもDXを自社の力だけで進めるのは容易ではありません。単なるIT化であればいいですが、DXでは業務内容そのものを見直さなければならないからです。それまで同じ働き方をずっと続けてきた会社が、いきなり効率を求めて業務改善するのは至難の業でしょう。
そこで有効なのが「共創DX」。例えばレガシーな業界の大手企業と、その業界のDXサービスを開発するスタートアップが共創するとします。その際には、DXサービスで本当にDXでを実現できるのか、大企業の現場で実験しながら改良していくでしょう。
スタートアップにとっては、実際の現場で生の声を集められますし、実際にサービスをリリースしてから大企業の販売網を活かせるかもしれません。大企業にとっては自社のDXを進められる上に、スタートアップのサービスを販売することで自社の価値も高められます。
このような共創のケースが、様々な業界で起こっておりイノベーションを引き起こしているのです。逆に言えば、共創なくして業界をイノベーションするのは不可能とも言えるかもしれません。
共創の事例紹介
実際にどのような共創事例があるのか、オープンイノベーションプラットフォーム「AUBA」経由で生まれたケースを見ていきましょう。
株式会社ami
誰でも簡単にオンライン打ち合わせができるオンラインコミュニケーションツール「meet in」を販売することで、中小企業のDX化・業務効率化・働き方改革の支援しているami。大手印鑑メーカーと提携することで、印鑑をつくる中小企業や個人事業主にDXを勧めるという取り組みをはじめました。また、メール一斉配信システムの会社と組むことで、一緒にサービスを拡大する取り組みも行っています。
https://tomoruba.eiicon.net/blogs/1301
熊本大学
健康寿命の研究をしている熊本大学もまた、積極的に共創相手を探しています。システム会社の協栄産業株式会社と組むことで、定量的に寿命を測る技術「C-HAS」のレポートを自動で作成する新規事業を立ち上げました。現在も年間100件以上の面談を実施し、積極的に共創のチャンスを探っているようです。
https://tomoruba.eiicon.net/blogs/1281
株式会社シーズ
共創をうまく活用することで、異業種への参入もスムーズに行えます。バンダイナムコのグループ会社シーズは、玩具づくりの技術を活かして医療機器業界に参入しました。医療分野において様々な事業を展開しているメディカル・プリンシプル社と組んで、病室で使える便利グッズを作っています。他にも大手食品会社など、様々な業界との共創を進めています。