JAXAとavatarinによる「AVATAR X Program」が内閣総理大臣賞を受賞!――「第4回 日本オープンイノベーション大賞」で選ばれた各賞の取り組みとは?
内閣府は「第4回 日本オープンイノベーション大賞」の受賞者を発表。内閣総理大臣賞を始めとする13の賞が14の取組・プロジェクトに授与された。同賞は日本のオープンイノベーションをさらに推進させるために、内閣府が主導。今後のロールモデルとして期待される先導性や独創性の高い取り組みを称えるものだ。
2018年度より開始された「日本オープンイノベーション大賞」は、オープンイノベーションの取り組みの中で、模範となるようなもの、社会インパクトの大きいもの、持続可能性のあるものについて、担当分野ごとの大臣賞、経済団体、学術団体の会長賞の表彰をすると共に、各賞の中で最も優れたものを内閣総理大臣賞として表彰している。
内閣総理大臣賞
科学技術政策担当大臣賞、総務大臣賞、文部科学大臣賞、厚生労働大臣賞、農林水産大臣賞、経済産業大臣賞、国土交通大臣賞、環境大臣賞、スポーツ庁長官賞、日本経済団体連合会会長賞、日本学術会議会長賞 、選考委員会特別賞
――本記事では、内閣総理大臣賞及び各賞の受賞プロジェクトについて紹介していく。
「AVATAR X Program」が、『内閣総理大臣賞』を受賞
極めて顕著な取組等が認められる個人又は団体に対して授与される『内閣総理大臣賞』には、JAXAとANAホールディングス発のスタートアップであるavatarinが取り組む、アバターによる宇宙開発・利用の実現を目指す「AVATAR X Program」が選ばれた。
同プログラムでは、約35社の官民連携コンソーシアムを構築。大分県から実証フィールドの提供等で協力を得ながら、アバター市場の拡大を狙うため、活動の枠を広く位置づけ、宇宙航空分野のみならず異分野やスタートアップも含めた連携を実施している。
また、2020年11月に「きぼう」に設置される宇宙アバターを約400名の一般の方が街中から操作する技術実証を実施。その他、2020年度に延べ100件ほどの地上アバター実証を実施しコロナ禍における幅広い分野で社会的ニーズに貢献している。
▲取り組みの概要(※出典:JAXAプレスリリースより)
▲2月22日に開催された表彰式の様子(※出典:JAXAプレスリリースより)
「第4回 日本オープンイノベーション大賞」の受賞取組・プロジェクト一覧
「第4回 日本オープンイノベーション大賞」では、13の賞が14の取組・プロジェクトに授与された。以下にその概要を紹介していく。なお、各取り組みの詳細や受賞ポイントなどは、「日本オープンイノベーション大賞」のWebサイトにも掲載されている。あわせてご覧いただきたい。
内閣総理大臣賞
<取組・プロジェクト名称>
産学官連携によるアバター技術(遠隔存在技術)の宇宙開発/事業への活用と培われた技術による地上の課題解決を実現する取組
<概要>
アバター技術(遠隔存在技術)を活用した宇宙開発・利用関連事業の創出を目指す「AVATARXプログラム」を立ち上げ、大分県を始め約35社による産官学連携によるコンソーシアムを発足。宇宙における「探す」、「楽しむ」、「建てる」、「暮らす」、「衣食住」の分野において各社の強みを生かした新規事業を検討。
<受賞者>
・深堀 昂( avatarin㈱ 代表取締役 CEO)
・梶谷 ケビン(avatarin㈱ 取締役 COO)
・市川 千秋(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)新事業促
進部 J-SPARC プロデューサー)
・林 孝憲(大分県 先端技術挑戦課 副主幹)
科学技術政策担当大臣賞
<取組・プロジェクト名称>
腸換気(EVA)技術の実用化
<概要>
肺に非依存的な画期的な呼吸メカニズム、「腸換気技術(Enteral Ventilation:EVA法)を世界に先駆けて確立。
<受賞者>
・武部 貴則 (国立大学法人東京医科歯科大学 教授)
・尾﨑 拡 (㈱EVA セラピューティクス 代表取締役)
・井上 勝人 (丸石製薬㈱ 代表取締役社長執行役員)
・宗 泰一 (ムネ製薬㈱ 取締役副会長)
総務大臣賞
<取組・プロジェクト名称>
携帯電話基地局データから生成される人口流動統計
<概要>
携帯電話基地局の運用データ(基地局で取得される携帯電話の約7,600万台のサンプルから法人契約を除いて個人情報・プライバシーを保護した所在エリア情報:注GPSではない)を活用した「人口流動統計」を共同開発。
<受賞者>
・池田 大造 (㈱NTTドコモ サービスイノベーション部 担当部長)
・今井 龍一(学校法人法政大学デザイン工学部 教授)
・重高 浩一(国土交通省 国土技術政策総合研究所 評価研究官)
・新階 寛恭(国土交通省 国土技術政策総合研究所 室長)
・関谷 浩孝(国土交通省 国土技術政策総合研究所 室長)
文部科学大臣賞
<取組・プロジェクト名称>
次世代を担う学生・若手自ら未来社会へのロードマップを描き、研究開発エコシステムを創造する「人工知能研究会/AIR」
<概要>
学生や若手研究者・エンジニアなど、20 代(Z世代)自ら次世代の人工知能研究・応用を推進することを目指して、2015年に設立された学術交流・人材育成コミュニティ。大学や研究機関、コラボレーション企業と連携しながら、将来の日本に貢献するため継続的に活動。
<受賞者>
・佐久間 洋司(国立大学法人東京大学大学院総合文化研究科修士 1 年、国立大学法人大阪大学グローバルイニシアティブ機構 招聘研究員)
・浅谷 学嗣(㈱エクサウィザーズ AI エンジニアリングフェロー、AI 技術推進室 室長)
・井上 昂治(国立大学法人京都大学大学院情報学研究科 助教)
・兼平 篤志(㈱Preferred Networks リサーチエンジニア)
・堀口 修平(国立大学法人東京大学大学院情報理工学研究科博士 1 年)
厚生労働大臣賞
<取組・プロジェクト名称>
e-mask; 飛沫を防ぐ検査・処置での簡便・安価・使い捨て・実用的なマスクの開発と実装プロジェクト
~with / post コロナ禍での新しい安全な検査・処置スタイルを目指した大学若手医師と企業の有機的連携による開発・実証・実装の取り組み~
<概要>
医療の現場で日常的に広く使える検査用飛沫防止マスク(e-mask; 内視鏡検査時の簡便・安価・実用的な飛沫感染予防マスク)の開発と事業化を実施。
<受賞者>
・佐藤 和秀(東海国立大学機構名古屋大学 高等研究院・医学系研究科呼吸器内科 S-YLC 特任助教)
・岡地 祥太郎(東海国立大学機構名古屋大学 医学部附属病院・呼吸器内科 病院助教)
・古川 和宏(東海国立大学機構名古屋大学 医学部附属病院・消化器内科 病院講師)
・寺澤 彰規(㈱白鳩 開発営業グループ チームリーダー)
・西久保 賢(㈱スズケン ケンツ事業部営業推進一課 主任)
農林水産大臣賞
<取組・プロジェクト名称>
ゲノム編集技術を用いた品種改良×スマート養殖による地域振興
<概要>
水産業は長らく技術を有する企業の参入が少なく品種改良やデジタル技術の実装(スマート化)が進んでいないことから、水産業を競争領域ではなく協調領域と位置づけ、関係者で連携しゲノム編集育種(品種改良)、スマート養殖、加工・販売の各領域で連携体制を構築した。
<受賞者>
・梅川 忠典(リージョナルフィッシュ㈱ 代表取締役社長)
・松井 寛樹(㈱荏原製作所 マーケティング統括部 次世代事業開発推進部 マリンソリューション課 課長)
・田口 幸敬(東日本電信電話㈱ 経営企画部営業戦略推進室 主査 ビジネスコーディネーター)
・藤 孝司(㈱電通 京都ビジネスアクセラレーションセンター ビジネス戦略部 シニアコンサルティングディレクター)
・木下 政人(国立大学法人京都大学大学院農学研究科 准教授)
経済産業大臣賞
<取組・プロジェクト名称>
革新的連続生産システム iFactory®の開発と普及販売
<概要>
機能性化学品(医薬原体等)を持続的に供給可能な産業構造に変革すべく、省エネ・省人型革新的連続生産システムの開発、普及、販売を目指す。
<受賞者>
・齊藤 隆夫(㈱高砂ケミカル 会長/㈱iFactory 代表取締役)
・鶴本 穣治(㈱高砂ケミカル 技術開発部 iFactory 準備室 専任課長)
・池谷 勝俊(テックプロジェクトサービス㈱ プロジェクト工事統括本部 医薬ファインプロジェクト部 副部長)
・佐藤 正浩 (大成建設㈱ エンジニアリング本部 ファインケミカルプロジェクト部 部長)
・甲村 長利 ((国研)産業技術総合研究所 触媒化学融合研究センターフロー化学チーム 研究チーム長)
国土交通大臣賞
<取組・プロジェクト名称>
リアルタイム自動配筋検査システム
<概要>
配筋検査の生産性向上ニーズと高精細カメラを用いた画像解析技術シーズとのマッチングによりシステムを開発し、配筋検査における生産性向上・省人化、安全性向上を実現。
<受賞者>
・吉武 謙二(清水建設㈱ 社会システム技術センター インフラ技術グループ グループ長)
・藤井 彰(清水建設㈱ 東北支店 土木部 工事長)
・中野 貴公(清水建設㈱ 北陸支店 土木部 主任)
・吉田 直樹(清水建設㈱ 東北支店 土木部 主任)
・有田 真一(シャープ㈱ 研究開発事業本部 ソリューション事業推進センター 主任研究員)
環境大臣賞
<取組・プロジェクト名称>
メタ・アクアプロジェクト(水処理産業の DX、AI・IoT 製品の共同開発 PJ)
<概要>
水処理の技術・知見・蓄積データや実証プラント等と、インフラ向けAI・ソフトウェアの技術・知見・人材を組み合わせることで、水処理産業のデジタル変革(DX)の実現に取り組んだ。
<受賞者>
・門田 道也(栗田工業㈱ 代表取締役社長)
・加藤 崇( Fracta, Inc. CEO)
・水野 誠(栗田工業㈱ デジタル戦略本部 副本部長)
・北林 康弘(Fracta Leap㈱ 代表取締役)
・羽鳥 修平(Fracta Leap㈱ CTO)
スポーツ庁長官賞
<取組・プロジェクト名称>
防災スポーツ
<概要>
「楽しんで、競い合って、身体で覚える」をコンセプトに、スポーツの要素(遊戯性、運動、競争性)を活用し、防災課題、スポーツ課題解決(普段スポーツに親しみのない人の参加によるスポーツ実施率向上、健康増進など)に寄与する「防災スポーツ」を推進。
<受賞者>
・篠田 大輔(㈱シンク 代表取締役)
・廣井 悠(国立大学法人東京大学大学院 教授)
・長ヶ原 誠(国立大学法人神戸大学大学院 教授)
日本経済団体連合会会長賞
<取組・プロジェクト名称>
「Structured Spin-in モデル」を活用したベンチャーキャピタルと大企業の連携によるイノベーション促進
<概要>
大企業における新規事業開発促進とイノベーション人材育成を目的としたStructured Spin-inモデル投資を開発、実践する。
<受賞者>
・大澤 弘治(Global Catalyst Partners Japan 代表マネージング・ディレクター)
・楢崎 浩一(SOMPO ホールディングス㈱ 執行役員 専務)
・藤川 修(日本電気㈱ 執行役員 常務)
日本学術会議会長賞
<取組・プロジェクト名称>
計算科学に基づく熱中症リスク管理と普及啓発【熱中症ゼロ社会に向けて】
<概要>
「熱中症ゼロ社会」を目指し、個人・団体・地域の救命救急活動を横断的にカバーする予測・リスク評価システムを開発し、熱中症患者の減少、救急体制の充実を実現する継続的な共創体制を構築。
<受賞者>
・平田 晃正(国立大学法人名古屋工業大学先端医用物理・情報工学研究センター センター長(教授))
・都甲 浩芳(日本電信電話㈱ デバイスイノベーションセンタ 主幹研究員)
・清水 将(名古屋市消防局 救急部救急課救急係 消防官)
・堀江 祐圭(日本気象協会 メディア・コンシューマ事業部 技師)
・小寺 紗千子(国立大学法人名古屋工業大学大学院工学研究科 特任准教授)
日本オープンイノベーション大賞選考委員会特別賞 ※2プロジェクトが受賞
<取組・プロジェクト名称>
産官学福による障がいのある人の創作物のパブリックデータ化「シブヤフォント」
<概要>
障がいのある人が描いた文字や絵から渋谷でデザインを学ぶ専門学校の学生がフォント・パターンデータを制作し、渋谷区公認の 「シブヤフォント」 として公開。データは公式サイトから自由にダウンロードでき、商用利用においてはデータ利用料を徴収し、売上の一部を障がい者支援事業所へ還元。
<受賞者>
・磯村 歩(㈱フクフクプラス/専門学校桑沢デザイン研究所 代表取締役/ 非常勤教員)
・古戸 勉(福祉作業所ふれんど 施設長)
・齋藤 貢司(渋谷区福祉部障がい者福祉課 課長)
・ライラ・カセム(国立大学法人東京大学先端科学技術研究センター 特任助教)
<取組・プロジェクト名称>
全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト(通称:DCON)
<概要>
全国高等専門学校生を対象として、「ものづくりの技術」と「ディープラーニング」を活用した作品から生み出される「事業性」を企業評価額で競う全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト(通称:DCON)を実施。
<受賞者>
・松尾 豊 (国立大学法人東京大学大学院 教授/(一社)日本ディープラーニング協会 理事長/DCON 実行委員会 実行委員長)
・岡田 隆太朗((一社)日本ディープラーニング協会理事 兼 事務局長/DCON 実行委員会 事務局長)
・谷口 功 (独立行政法人国立高等専門学校機構 理事長)
・川上 登福(㈱経営共創基盤(IGPI) 共同経営者マネージングディレクター/㈱先端技術共創機構(ATAC) 代表取締役)
・草野 隆史(㈱ブレインパッド 代表取締役社長)