1. Tomorubaトップ
  2. ニュース
  3. 培養フォアグラ、CO2相殺アプリ。気候変動対策に挑むユニークなEUテック企業10社を紹介
培養フォアグラ、CO2相殺アプリ。気候変動対策に挑むユニークなEUテック企業10社を紹介

培養フォアグラ、CO2相殺アプリ。気候変動対策に挑むユニークなEUテック企業10社を紹介

  • 7954
  • 6023
  • 6019
4人がチェック!

EUでは、特定のプラスチック製品の販売禁止を含む「プラスチック指令」の発行や電気自動車、自転車の普及、グリーンテック業界の盛り上がりなど、気候変動対策がより一層、本格化している。

世界的に叫ばれる食糧危機や異常気象などを踏まえれば当然ともいえるが、北欧の地に滞在している筆者の感覚では、日本とは本気度が段違いのように見える。そこで、世界のスタートアップが取り組むイノベーションの"タネ"を紹介する連載企画【Global Innovation Seeds】第17弾では、EU諸国で気候変動対策に取り組むテックスタートアップ10社のビジネスモデルを紹介したい。

なお、本記事で紹介するスタートアップの選定は、ヨーロッパのスタートアップをテーマとするオンラインマガジン「EU-Startups」の記事を参照した。

「カーボン・オフセット」を達成できるアプリ【Klima】


▲「Klima」が提供する気候変動対策アプリ(同社の公式HPより)

2019年にドイツ・ベルリンで創業した「Klima」は、個人が排出したCO2を気候変動対策に資金援助することで相殺できるアプリを提供している。使用方法はシンプルで、いくつかの簡単な質問に答えると年間のCO2排出量が自動で算出される。その排出量に見合った気候変動対策プロジェクトを選び、資金援助をすることでカーボン・オフセットが達成できるのだ。

プロジェクトは「自然」「技術」「ソーシャル」の3つのカテゴリーがあり、いずれか1つを選ぶ、あるいは3つすべてを支援することもできる。「自然」は植樹、「技術」は太陽光発電、「ソーシャル」は発展途上国への調理用ストーブの普及に関するプロジェクトだ。

同アプリでは、CO2排出量を削減するためのアイディアの提供もしている。アプリを活用することで、CO2削減の意識を向上させ、地球環境への自身の責任を考える機会が得られそうだ。

世界初の16トン級フル電気トラックを開発【Volta Trucks】


▲予約販売を開始している世界初の16トン級フル電気トラック「Volta Zero」(写真提供:Volta Trucks)

2019年にスウェーデン・ストックホルムで創業した「Volta Trucks」は、都市部での貨物輸送に特化して作られた世界初の16トン級フル電気トラック「Volta Zero」を開発した。気候変動対策に配慮されただけでなく、トラックそのものをドライバーファーストに設計し、運転時の安全性を高めた点もユニークだ。

同社のトラックは運転席を中央に配置し、低くすることでドライバーの視界を最適化、運転時の死角をなくすことで、歩行者や自転車などとの接触を避けやすいという。また、降車時の段差を少なくして、開閉の速いスライドドアとすることで、ドライバーの乗降を容易にした。トラックというよりバスの設計に近いかもしれない。

「Volta Zero」は、2023年納車に向けて予約を受け付けている段階で、2021年9月の時点で予約注文は2,500台を超え、注文額は6億ユーロ(約800億円)を超えたという。総資金調達額は6000万ユーロ(約80億円)となり、成長が加速している注目企業だ。

輸送用の低炭素バッテリー普及を目指す【Verkor】


▲「Verkor」が開発する低炭素バッテリー(同社の公式HPより)

2020年にフランスで創業した「Verkor」は、運輸業界の気候問題に対応すべく電気自動車用の低炭素バッテリーの普及を目指している。同社の製品は、中国で製造するバッテリーと比較して、CO2排出量が1/4〜1/5になる予定とのこと。これは、低炭素エネルギーのミックス、製造の垂直統合、デジタル化、リサイクルなど革新的なビジネスモデルを採用しているためだ。

同社は、ヨーロッパのバッテリーの主要メーカーになるという明確な目標を掲げて誕生しており、国際的な専門家を含め、14ヵ国から集まった60名の社員が在籍する。全員の経験を統合するとバッテリー業界で400年の経験値があり、出願した特許は100にのぼるという。

2021年7月には、創業から1年足らずで1億ユーロ(約132億円)の資金調達を実施。この資金は、低炭素バッテリーを構成する製品の開発、革新的なデジタル製造プロセスの本格的な検証を行うVerkorイノベーションセンター(VIC)の建設など、事業拡大に当てられる。

家庭用の低コストな太陽光発電システムを提供【Zolar】


▲「Zolar」が提供する太陽光発電システム(同社の公式HPより)

2016年にドイツで創業した「Zolar」は、屋根用の太陽光発電システムを構築し、クリーンエネルギーの供給をサポートしている。

同社は、月額54ユーロ〜(約7,000円)と手頃な価格帯で太陽光発電システムのレンタルサービスを提供することにより、家庭における太陽光発電の導入障壁を取り除くことを目指している。同社のシステムを取り入れることで、ユーザーは初日から電気代を節約することが可能になるという。

同社は、2021年11月に2,000万ユーロ(約26億円)の資金調達を実施し、総資金調達額は5,900万ユーロ(約78億円)に。現在はドイツ全土にサービスを展開しているが、この資金調達により他のヨーロッパ市場へも事業を広げる見込みだ。

ビル運営時のCO2削減のためのプラットフォーム【Metrikus】


▲「Metrikus」が提供するスマートビルディングプラットフォームのイメージ(同社の公式HPより)

2019年にイギリス・ロンドンで創業した「Metrikus」は、ビルの管理者に向けて、ビル運用におけるCO2排出量を削減するためのスマートビルディングプラットフォームを提供する。

同社では、IoTソリューションを活用して、スペースの占有率や室内の空気質、エネルギーのモニタリング、清掃頻度の追跡、データセンター管理(過熱防止、湿度監視、リーク検出など)、正確な温度監視など、さまざまな状態確認を行い、そのデータをプラットフォーム上で確認できる。イメージを見ると、視覚的にわかりやすく設計されているのがわかる。

ビル運用時のCO2排出量を削減するだけでなく、ビル全体のパフォーマンスや安全性の向上、コスト削減、データや原料などの品質管理まで、さまざまなメリットがありそうだ。

動物細胞から育てた培養フォアグラを開発【Gourmey】


▲柔らかく、本物のフォアグラに近い味が再現されているという培養肉(GourmeyのLinkedIn投稿より)


2019年にフランス・パリで創業した「Gourmey」は、動物細胞から育てた培養肉を開発・生産している。同社がユニークなのは、高級食材のフォアグラの開発を最初にスタートさせ、高級レストランのシェフへの販売を目指していること。さらに、培養鶏肉の開発にも言及している。

現状は食材を大量生産・販売するフェーズではないようで、同社のHPにはくわしい情報は掲載されていない。ただ、Bloombergが運営するグローバル向けストリーミングニュース「Bloomberg Quicktake」では、同社が開発した培養フォアグラを記者が食べる様子が放送され、記者は「驚くべき味。従来のフォアグラと変わらないおいしさだ」と感嘆していた。

培養肉はクリーンミートと言われることもあり、その研究開発は近年加速しているようだ。

というのも、従来の畜産と比較して、培養肉はエネルギー・水・土地の使用、CO2排出量を大幅に削減できるためだ。「Gourmey」は、培養肉はおいしさを維持しながら環境にもやさしいと主張している。

企業・政府向けAI気候情報プラットフォーム【Cervest】


▲「Cervest」が提供する気候情報プラットフォーム「EarthScan」のイメージ(同社の公式HPより)

2015年にイギリス・ロンドンで創業した「Cervest」は、AIを活用した気候情報プラットフォームを提供しており、将来的な気候リスクと脅威を資産レベルまで定量化するという。

データベースは、公共、および民間のデータソースを組み合わせて取得したデータで構成され、膨大な査読付き論文(※)と機械学習や統計科学を使用して、資産に対する気候リスクを洞察する仕組みだ。

※査読付き論文……査読を通過した信頼性の高い論文

最初の製品である「EarthScan」は、洪水、干ばつ、異常気温、山火事などが資産に与える影響について、企業や政府機関に情報を提供する。その見解は1970年〜2100年の長期にわたり、現在から50年前までの過去を振り返り、80年先までの未来を見通すことができる。同社は、2021年5月に2700万ユーロ(約36億円)の資金調達を実施しており、欧州と米国での事業拡大を目指す。

特許技術を用いた生分解性マイクロカプセルを提供【Calyxia】


▲特許技術を持ち、生分解性のマイクロカプセルを提供(同社の公式HPより)

2015年にフランスで創業した「Calyxia」は、特許技術を活用した生分解性のマイクロカプセルを提供している。マイクロカプセルとは、名前のとおり「小さなカプセル」であり、「芯物質」と呼ばれる中身と、それを内包する「壁材」と呼ばれるカプセルから成り立つ。代表的な利用例として柔軟剤があり、中身に香料が入ったマイクロカプセルが利用されている。圧力や摩擦に壁材が反応して、芳香を放つ仕組みだ。

同社では、「世界初のカスタマイズ可能で高度なサスティナブルマイクロカプセル化技術」とアピールしており、特許技術を持つ。従来の製品とは異なり、極限環境下での機能性成分の保護と封じ込めが初めて可能になったという。

カスタマイズ性に加えて、生分解性の機能により、マイクロプラスチックの汚染に対処し、産業界でのマイクロプラスチックの利用方法を根本的に変えることを目指す。現在までの総資金調達額は、2300万ユーロ(約31億円)に達している。

40の工程で中古電子機器を新品同様に【Refurbed】


▲中古の電子機器が並ぶ「Refurbed」(同社の公式HPより)

2017年にオーストリア・ウィーンで創業した「Refurbed」は、ヨーロッパで中古電子機器を販売するマーケットプレイスだ。スマートフォン、パソコン、タブレット、スマートウォッチ、オーディオ機器、カメラを扱い、新品に近い製品を競合他社よりも安い価格帯で販売することに注力している。

特徴的なのは、40の工程を経て、中古品でありながら見た目も機能も新品に近い状態に近づけていること。さらには、30日間の試用期間と最低12か月の保証が付いており、製品を販売するごとに植樹する活動も行っている。割引価格は、最大で新品の40%オフとなる。

サイトを見ると、例えば新品同様のiPhone 11 Pro(256GB)は約87,000円で販売されていた。他社の中古品と比較して驚くほど安いわけではないが、状態が良く12ヵ月の保証が付いていると考えれば、お得かもしれない。気候変動への配慮が見られる点も、消費者が選びたくなるポイントといえそうだ。

気候変動対策ファンドに少額投資できる「Carbon Equity」


▲気候変動技術のイノベーションを後押しする気候フィンテック(同社の公式HPより)

2021年にオランダ・アムステルダムで創業した「Carbon Equity」は、気候変動対策に取り組む企業に10万ユーロ(約1,300万円)の少額から投資できる仕組みを提供する気候フィンテック・スタートアップだ。投資のハードルを下げることにより、気候変動技術のイノベーションを発展させるための資金を集めやすくするのが狙いだ。

同社では、独自の気候影響パフォーマンス評価プロセスに基づいて、一流のファンドのみを選択している。投資額は少額であっても、個々のチケットを集約することで、一流の気候ファンドの高い投資基準に到達することができるそうだ。今後は、さらに最小投資額を下げる予定とのこと。これまでに、120万ユーロ(約1億6,000万円)を調達した。

編集後記

どれも惹かれるビジネスモデルだったが、個人的に深堀りしたくなったのは、電気トラックを販売する「Volta Trucks」と培養肉を開発する「Gourmey」だった。安全性にも考慮した新時代の電気トラックは、さすがイノベーション大国スウェーデンが生んだ製品だと感じた。また、培養フォアグラは単純に食べてみたい。あらゆる肉に応用できるのか、大量生産の実現性が気になるところ。また、気候変動対策アプリは自治体や政府が開発し、市民が利用することで割引等のインセンティブが付くような仕組みがあれば、浸透しやすい気がした。

(取材・文:小林香織) 

新規事業創出・オープンイノベーションを実践するならAUBA(アウバ)

AUBA

eiicon companyの保有する日本最大級のオープンイノベーションプラットフォーム「AUBA(アウバ)」では、オープンイノベーション支援のプロフェッショナルが最適なプランをご提案します。

チェックする場合はログインしてください

コメント4件


シリーズ

Global Innovation Seeds

世界のスタートアップが取り組むイノベーションのシーズを紹介する連載企画。