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NTTドコモ×ミナカラ×メドレーに見る”理想的な連携”を紐解く――新規事業交流会「Innovation Trigger #02」レポート

NTTドコモ×ミナカラ×メドレーに見る”理想的な連携”を紐解く――新規事業交流会「Innovation Trigger #02」レポート

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2021年12月14日、WeWork 渋谷スクランブルスクエアにて、「新規事業に携わる人たちの、新規事業に携わる人たちによる、新規事業に携わる人たちのための交流会」をテーマにしたイベント「Innovation Trigger」が開催された。(eiicon company・IntraStar・WeWork Japanによる共催)

同イベントは新規事業担当者たちがリアルに交流することで、偶発的な出会い(セレンディピティ)を生むことを一つの狙いとし、定期的に開催している。会場には大企業やスタートアップなどで新規事業に関わる担当者たち約50人が集い、交流の輪を広げた。 

 第2回目となる今回は、2021年10月に患者の医療活用を支援する新規事業の早期開始を目的に事業連携を果たし、新規事業・イノベーションに携わる人たちを驚かせた株式会社 NTT ドコモ、株式会社メドレー、株式会社ミナカラからゲストを招き、連携の意義や裏話などをディスカッションした。


登壇したのは、出井京子氏(NTTドコモ ビジネスクリエーション部 ヘルスケアビジネス推進室長)、中村隆之氏(メドレー 執行役員)、喜納信也氏(ミナカラ 創業者 取締役 薬剤師)。あわせて、新規事業やイノベーションに造詣の深い、足立佳丈氏(WeWork Japan)、荒井宏之氏(キュレーションズ/IntraStar 主催)、中村亜由子(eiicon company)を交えて活発に意見交換した。以下にその様子をレポートする。

※関連記事:新規事業は”総力戦”で行うべきーー各界の先駆者6名が組織・環境・人材を語る。新規事業交流会「Innovation Trigger #01」レポート!

3社でメディカル分野のイノベーションを目指す

 NTTドコモ、メドレー、ミナカラの連携は、オンライン診療を進めるNTTドコモとメドレーが、医療系ベンチャー企業であるミナカラの全株式を共同取得することで実現された(参考:ニュースリリース)。

早速、「なぜ3社が連携することになったのでしょうか」との問いがeiicon・中村から出された。

ミナカラ・喜納氏は「ここ数十年で、ITなど新しい技術やツール・手段を活用することで私達の生活全般が非常に便利になってきたように、医療においてもより良い医療体験を患者に提供したり、医療機関の価値を高めるなど、仕組みをより良くすることができると考えています。そこで医療業界への貢献をコミットして、起業し、様々な新規事業や新しい取り組みへの挑戦を7年続けました。さらにスピード感を持って事業を拡大することを目指し、圧倒的な規模・アセットと、メディカル業界での実績を持つ両社と連携することに決めました」と回答した。

また、ちょうど資金調達を考えていたタイミングだったことも大きかったという。「毎年、資金調達をしていましたが、調達した金額のほとんどをマーケティングと人材採用に使っていました。それならば、もともとユーザー基盤を豊富にもち、かつ優秀な方がいる大手企業と提携したほうが良いとも考えました」と話した。


▲株式会社ミナカラ 創業者 取締役 薬剤師 喜納信也氏

他方、NTTドコモ・出井氏は医療のオンライン化を進める中で、薬局についても視野に入れていた背景があったと明かす。「NTTドコモとして自社で行う選択肢もありましたが、スピード感に欠けます。既に実績のあるミナカラさんの力を借りたほうがメリットが大きいと判断しました」と答えた。


▲株式会社NTTドコモ ビジネスクリエーション部 ヘルスケアビジネス推進室長 出井京子氏

メドレーは2009年に創業し2016年ごろからオンライン診療を手がけ始めた経緯を持つ。メドレー・中村氏は「当社は医療機関向けのSaaSシステム提供をメインに事業展開しています。オンライン診療を今後、さらに広げていく上では、患者向けのアプローチを強化していくことが重要と考えました。そこで、まずはNTTドコモさんと提携しました。さらにオンライン診療に限らず、医療全般に市場を広げたいという話をドコモさんと進めていく検討の中で、ミナカラさんとの連携の検討を進めて、共創させていただくことになったんです」と付け加えた。


▲株式会社メドレー 執行役員 中村隆之氏

 

互いの強み・弱みを補完する理想的なオープンイノベーションを実現

 ここでIntraStar・荒井氏から「メドレーさんのいがなくても、NTTドコモさんと提携していたでしょうか」との質問が飛び出した。ミナカラ・喜納氏は「難しかったかもしれません」と打ち明けた。

「NTTドコモさんは規模があまりに大きく、小さなベンチャー企業でしかなかったミナカラ単独で関係構築して共同事業で成果をあげていくのは難易度が非常に高いと思っています。でも、メドレーさんは、瀧口さん(メドレー創業者・代表取締役社長 瀧口浩平氏)を中心にNTTドコモさんと既に良好な関係を築いて、実際に大きな成果をだせそうな状態でした。

また、3社で目指す方向も一致していました。逆に言えば、メドレーとドコモというこの2社がセットでなければ実現し得なかったと思います」と述べた。

eiicon・中村は「お互いの強みと弱みを補完し合っています」と3社の関係を理想のオープンイノベーションだと強調した。


▲eiicon company 代表/founder 中村亜由子

IntraStar・荒井氏も「スタートアップと大企業は企業文化が違いすぎるので、お互いのことがなかなか理解できず、苦労するケースは多くあります。今回の場合は両方の立場を理解するメドレーさんの存在があり、非常にハッピーな連携が実現できたと考えられます」と同意した。


▲キュレーションズ株式会社 Innovation Process Design / Principal、IntraStar 主催 荒井 宏之氏

真摯な姿勢が、会社を動かす

ディスカッションは登壇者と参加者がインタラクティブなやり取りが行われる中で進められている。会場から「オンライン診療や薬局をNTTドコモさんだけで進められるのではないか、という話はなかったでしょうか」との質問が出された。

NTTドコモ・出井氏は「社内を含め、さまざまなところで同様のことが聞かれました」と内情を明かした上で、「私自身は自社だけでオンライン診療や薬局はできないと思っています。もしかしたら時間をかければできるのかもしれませんが、メディカルは当社の事業とかけ離れ過ぎています。こうしたことを理解してもらうため、いわば『社内ロビー活動』(笑)を行い、何度も、何人もコミュニケーションを重ねました。

一方、奇しくもNTTドコモグループには『あなたと世界を変えていく』というスローガンがあります。連携を頭から拒絶することはなかったように感じます。『連携の意義やメリットをしっかりと説明してほしい』ということはよく言われました。数値や事業計画はシミュレーションでしかありませんが、それでも真摯にしっかりとした根拠を示せれば、会社の上層部の方々も話を分かってくださるようになるのではないでしょうか」と語った。

あえて医療という参入障壁の高い産業への進出を図ったことについては「通信事業者として、医療のインフラを整えることは使命だと捉えました」とNTTドコモ・出井氏は熱意を込めた。


連携を考える前に、パートナーから何を得たいかを整理する

続いて、話題は「パートナーを探し」に及んだ。大手企業での勤務経験もあるメドレー・中村氏は「パートナー探しは目的を達成する手段の一つです」と指摘。

「自社でやれるならやったほうがいいでしょう。ただ、多くの大手企業は誤解していて、『ウチならできるだろう』みたいな感覚を持っています。仮にできるなら、その理由を明示しなければならないはずです。

裏を返せば、パートナー探しをするということは、パートナーを通じて得たいものがあるということです。技術なのか信頼なのかマーケットなのか時間なのか。そのことをはっきりさせるのが、パートナー探しの第一歩です。特に大企業はこの点を明確にしないと、良好なリレーションシップは築けないでしょう」と主張した。

IntraStar・荒井氏は「パートナーが見つかっても上司から反対されるケースもあります。その際どのように説得するのが良いでしょうか」と疑問を投げかけた。

これに対しNTTドコモ・出井氏は「事前に情報を提供することもしますが、早い段階で直接会ってもらうことにしています。会って話してみることでお互いに理解が進みますし、百聞は一見にしかずで、コミュニケーションをとても大事にしています」と答えた。

メドレー・中村氏も同意し、「大手企業は数字やロジックだけでは動かないことが多々あります。その意味でも直接会うことはとても大事です」と付け加えた。

ミナカラ・喜納氏は「双方が、その事業やテーマを本当にやりたいのか。会社として本気出してコミットできるのか、実行できるのか。この点が見えていないと、パートナーシップを結ぶ議論にもならないのではないでしょうか。最低限この点をクリアしていることが、良いパートナーを探す条件だと考えます」と持論を述べた。


人間として信頼し合い友人になることが、コラボレーションの土台

最後にeiicon・中村から「出井さんは大企業の共創窓口という感じがしませんが、実際どんな担当者ですか?」という問いが投げかけられた。

メドレー・中村氏は「『人に気を遣わせない力』が高い人ですね。社外の人とはなかなか本音を話せないと思いますが、本音で議論できる環境を作るのがとても上手です。接していて壁を感じないので、正直に相談がしやすいです。『NTTドコモとしては』という押し付けみたいなものがありません。とても気持ちよく仕事を進められます」と語った。

ミナカラ・喜納氏は「ビジネスは冷静な判断も求められますが、とてもウェットで熱い部分があり、そうした面を見せてくれるのでこれからも力を合わせていきたいですね」と伝えた。

IntraStar・荒井氏も「スタートアップ側の目線に合わせてくれます。担当者によってプロジェクトの成否が大きく左右されることは少なくありません。どんなに良いプロジェクトでもダメになることがある。その意味で、出井さんに担当者になっていただければ、事業が成功するだろうと予感させます。出井さんには高い『寄り添い力』があると言えるのではないでしょうか」と熱弁を振るった。

パネルディスカッションの締めとしてWeWork Japan・足立氏は「自社内でもうまくコラボレーションできないという話を度々耳にします。理屈や理論はさまざまにありますが、本日の3社の連携を見て、この形が一つの理想だと確信しました。

各々がヘルスケアに関する思いやビジョンを持ち、その上で、三者が共通項を見出しています。かつ、これから3人でコミットしてグロースする未来が描けます。人間として信頼し合い友人になる。理屈や理論以前に、基礎としてこうしたチームを作れるか。このことが新規事業を成功へと導く最大の鍵ではないでしょうか」とまとめて会を閉じた。


▲WeWork Japan合同会社 Vice President -Regional General Counsel 足立佳丈氏

この後、登壇者を含め参加者たちの交流が行われた。活発な雑談の中にはイノベーションを引き起こす出会いもあったのではないかと感じさせられた。

取材後記

パネルディスカッション中も何度か触れられていたが、登壇したNTTドコモ、メドレー、ミナカラの連携はまさに理想と言える形態の一つだろう。それぞれの強み弱みをそれぞれが補い、規模の観点からもバランスが良い。何より、お互いの目指す方向が一致しており、今後の飛躍を予感させる。こうした理想が形作られるためには担当者一人ひとりの思いやパッションによるところが大きいはずだ。人との出会いはどのように起こるかわからない。Innovation Triggerは今後も定期的に開始される予定だ。イノベーション創出の一つの可能性として、「偶発的な出会い(セレンディピティ)」を誘発したいと考えるのなら、ぜひ足を運んでいただきたい。

(編集:眞田幸剛、取材・文:中谷藤士、撮影:加藤武俊)

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