フィリップス×東北大学 | 7年間の戦略的研究契約を締結、第一弾テーマに「麻酔科医の遠隔教育」と「慢性心不全病態のAIデータ解析」を採択
株式会社フィリップス・ジャパンと国立大学法人 東北大学は、 2020年10月にロイヤルフィリップスが主催するイノベーション推進のためのプログラム「Clinical Research Board(CRB)」の日本初の認定パートナーとして東北大学を選定したことを受け、共同で推進するプロジェクトとして「麻酔科医の遠隔教育」と「慢性心不全病態のAIデータ解析」を選択した。
今回の契約は、7年の長期契約となっており、今後も、東北大学が持つ高度医療と地域の医療に関する豊富な知識と経験、卓越したユーザーエクスペリエンスを生み出せる環境と、フィリップスのグローバルでの知見や研究開発機能を融合させ、超高齢化が進む日本において、医療現場、健康・予防領域のアンメットニーズ(未充足の課題)を解決し、さらに世界に向けて先進事例となるような新しいソリューションやサービスモデルの創出を推進していくという。
テーマ選定の背景と今後について
■麻酔科医の遠隔教育
日本は慢性的な麻酔科医不足の状態にある。麻酔科医の20-30歳代の半数以上が女性で、増加しているにもかかわらず、出産や育児に伴い、単位不足や専従医不足で専門医の更新に支障をきたす事例も少なくない。また、広大な面積の割に専門教育の施設が少ない東北地方では、引越しや移動等モビリティに関する課題も多く、人生とキャリアの重要な局面において、働き方を犠牲にせず専門性を高め、維持することは困難が伴う。加えて、コロナ禍で、臨床現場での実習が実施できず、確立された代替手段がない中で、医学生や研修医の育成が求められ、「教える側」の働き方にはかつてない大きなプレッシャーが生じている。
そこで、フィリップスと東北大学は、麻酔科医を取り巻く課題を解決する手段として、実習者と指導者が時間や地理的制約を受けず、現場実習相当の学びを再現できる仕組みを、AR/VR技術で実現したいと考えたそうだ。まずプロトタイプの開発と実証から開始し、将来的には、海外CRBパートナーと連携し、国際基準での教育を実現する次世代教育プラットフォームへと繋げて行くことを目指す。
■慢性心不全病態のAIデータ解析
心不全患者の増加は世界的な問題だ。日本の患者数はおよそ100万人で、超高齢化によりさらに増加すると言われており、病気と生きる患者と家族にとってだけでなく、医療提供体制の観点からも、社会的に大きな課題だ。
東北大学には、東北6県の関連24施設における心不全患者の病気の発症から進行を追いかけた日本最大の前向き登録観察研究のデータと、治療に携わってきた医師の知見に加え、このような医療現場での課題解決と人材育成の必要性にいち早く着目し、部門や診療科横断での研究を推進するために設立された「AI Lab」がある。東北大学のこの貴重な資産と、フィリップスの国内外におけるデータサイエンス領域での知見・技術力を掛け合わせることで、心不全患者の患者体験・アウトカムの向上や、医療提供体制上の課題を解消するための仕組みの開発を目指す。
両者代表のコメント
■株式会社フィリップス・ジャパン 代表取締役社長 堤浩幸氏
『東北大学とは、2018年に包括的提携契約を締結して以来、イノベーション創出のためのさまざまな取組を推進し、医療現場で起きているさまざまな課題を解決する過程において、このような戦略的なパートナーシップの土台となる強固な信頼関係を構築して来ています。この度、東北大学に、日本で初のCRBパートナーとなって頂いたことは、フィリップスにとっても非常に喜ばしいことです。
第一弾のテーマである「麻酔科医の遠隔教育」と「慢性心不全の病態のAIデータ解析」は、いずれも東北大学ならではの課題意識や強みに根差すものでありながら、東北地方以外の課題の解決にも寄与する可能性があるユニークなテーマとなっています。モノ売りからコト売りビジネスへの転換期にあるフィリップスのポートフォリオという観点からも、重要なテーマです。今後も、CRBのプログラムを通じて、東北大学としか実現できないユニークでかつインパクトのある取組を展開し、日本発のイノベーションの創出を更に加速して行きたいと考えています。』
■東北大学病院 病院長 冨永悌二氏
『東北大学病院では、2019年よりスマートホスピタルの実現に取り組んできました。これは、当院の理念である「患者さんに優しい医療と先進医療の調和」を深化させ、患者さんはもちろん、医療者にも居心地のよい場所にする、というものです。これを実現するために、広く産業界と連携(アライアンス)を構築しており、2018年にはフィリップス・ジャパンと包括的提携を締結いたしました。以来、さまざまなイノベーションの取組を推進しており、昨年から開始した東北大学ビジョン2030実現のための取組では、フィリップスの皆さんと医療者が「One Team」となり、手術部や放射線科の効率化に取り組んできています。
これまで医療者だけでは達成が難しかった現場課題に対して、残業の削減や業務効率の向上等、具体的な成果が出てきているだけでなく、フィリップスとのコラボレーションにより、部門横断での業務改善や多職種連携が進み、院内全体のエンゲージメントが高まってきていると感じます。今回のCRBの取組も、世界が今後経験するであろう大きな課題をフィリップスのみなさんと一緒に解決するもので、得られた知見が世界の医療現場における課題の解決に役立つよう、取り組んでいきたいと考えております。』
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