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【資生堂、共創始動】美への価値観が変わる今、見据える未来――心・肌・身体から、1人ひとりのBeautyを共創する

【資生堂、共創始動】美への価値観が変わる今、見据える未来――心・肌・身体から、1人ひとりのBeautyを共創する

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「世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニー」を目指し、世界中の「美」を支えてきた資生堂。2019年には横浜みなとみらいに「多様な知と人の融合」をコンセプトにした研究開発拠点「資生堂グローバルイノベーションセンター(S/PARK)」をオープンし、お客さまと研究員の交流や様々な企業・研究室とコラボレーションできる仕組みを整えた。共同研究のための設備や共創パートナーが入居できる共同研究室などを完備するS/PARKは、オープンイノベーションの取り組みを象徴する拠点と言えるだろう。

そんな資生堂の研究所が主導するオープンイノベーションプログラム「fiBona(フィボナ)」の取り組みの一環として、「SHISEIDO OPEN INNOVATION 2021」の開催を決定。10月18日の応募締切(10月4日:早期応募締切)に向けて、共創パートナーの募集を開始した。

”心・肌・身体から、1人ひとりのBeautyを共創する”というコンセプトを掲げた同プログラムは、美に関連する企業だけではなく、「ウェルネス/インナーバランス」に関わる企業なら、業界・規模に関わらず、募集対象として考えているという。また今年度は、研究所や事業部門・ブランドの連携も強化し、サービスの社会実装に向けて実現可能性を高める本格体制で実施する。

新型コロナウイルスの影響で美への価値観が大きく変動する今、資生堂はいかにして新しい価値を生み出そうとしているのか――。今回は、資生堂において、中長期のシーズ開発および新領域の価値・事業開発を行う「みらい開発研究所」の柳原茜氏と、グローバルマーケティンググループ 伊藤優氏に、今の美容市場に求められていること、それに対して資生堂が取り組んでいることを語ってもらった。

また、記事の後半では、「SHISEIDO OPEN INNOVATION 2021」で求める企業像と、資生堂が提供できるアセットについても詳しく紹介する。


▲【写真左】みらい開発研究所 柳原茜氏、【写真右】グローバルマーケティンググループ伊藤優氏

今、市場がBeautyに求めていること

――新型コロナウイルスの影響で美容業界にも大きな影響があったと思いますが、資生堂としてその変化をどのように受け止めているのか聞かせてください。

伊藤氏 : 最も大きな変化は外出する機会が減り、外出する際もマスクが手放せなくなったこと。それにより化粧する機会が減り、化粧や美容に対する意識が大きく変わりました。

しかし、人々の「美しくありたい」という気持ちは変わりません。そこで、資生堂は「スキンビューティーカンパニー」として、肌にフォーカスしていくことを全社的な方針として定めました。

柳原氏 : もう一つ着目しているのが、コロナ禍における心身の不調です。生活スタイルが大きく変化したことでストレスを感じ、それもまた肌に大きな影響を及ぼしていると考えられます。

健康的で美しい肌を提案していくには、直接塗布する化粧品以外にも、食生活や生活環境など様々な要因にも目を向けていかなければいけません。化粧品に限らず、トータルで肌を支えていくためのプロダクトやサービスの開発にも力を入れているところです。

――『美容』における考え方や求めるものは、時代によってどう変化していると感じますか?

伊藤氏 : いまは商品が溢れている時代となり、それぞれ様々な効果があるとうたわれています。お客さまは商品の効果だけではなく、その先に繋がる充実感や心が満たされることを望むようになっています。

そのため、Beautyに対する考え方は、肌に直接影響を与えるものだけではなく、心や身体から美しくあることが求められる時代になってきていると考えます。

――そのような市場やお客さまの変化を受けて、現在どのような研究を進めているのでしょうか?

柳原氏 : 私たちの強みである肌に関する研究は、以前よりもさらに力を入れて進めています。肌研究に携わる多くの部署があり、あらゆる角度から細部にわたるまで研究をしています。ここまで肌について突き詰めて研究している会社は他にないのではないでしょうか。

また、心理学と肌を組み合わせた研究も加速しています。化粧品を使っている時の心理状態などを研究し、メイクアップやスキンケアによってどんな体験が生み出されるのか参考にしています。いい商品を開発して提供するだけでなく、お客さまがどんな心理状態になるかまで考えた商品・サービス開発をするようになりました。



「スキンビューティーカンパニー」として、化粧品に限らずウェルネス/インナーバランスなどトータルで肌を支えていく。

――今後、資生堂が取り組んでいくべき課題や、注目しているトレンドやテクノロジーなどについても聞かせてください。

伊藤氏 : キーワードは「パーソナライズ」です。これまで日本では国民性もあり長らく「みんなに合う商品」が求められてきました。しかし、最近では「自分だけに合う商品」を求める傾向が強くなってきたのです。

しかし、数ある化粧品を全て試して自分に合う商品を探すのは現実的ではありません。そうした中で私たちが注目しているのが最新のセンシング技術です。個人のデータを測定することで、お客さま一人ひとりに合ったソリューションの提供を目指しています。

そこで私たちがこれまで研究してきたデータや、サイエンスの力を使って「あなたにはこれがいいですよ」と提案するのが目指すべき世界です。しかし、それを実現するためには、自前主義の研究開発では限界があります。他社が持つセンシング技術と私たちの肌研究の成果を組み合わせ、新しい価値を作り出すのがこれからの課題ですね。

今やデータ分析の技術も急速に進化しており、以前よりも遥かに高度なパーソナライズが可能になりました。海外に目を向けても、中国をはじめデジタルセンシングを活用したサービスが普及しはじめている国も少なくありません。グローバル展開を考える上でも、「センシング」「パーソナライズ」は非常に重要なキーワードだと捉えています。

――具体的に、どのようなセンシング技術が必要になるのでしょうか?

柳原氏 : 一口にセンシングと言っても、その用途は二つあります。一つは研究に使うもの。私たちは肌研究こそ世界トップレベルの自負はありますが、他の研究も肌研究のレベルまで高めるためには、細かく正確なデータを収集するセンシング技術が欠かせません。

一方で、消費者の方に使ってもらうセンシングもあります。例えば今のApple Watchは心拍数や血中酸素など様々な項目を測れますよね。この場合、研究に使うような正確なデータを測定できることよりも、普段の生活のなかで気軽に測れることが重要です。

このようにシーンや用途によっても、必要な技術は全く異なります。そのため私たちが「こんな技術がほしい」と絞りすぎず、広く新しい技術に触れて、資生堂とどのようなシナジーを生み出すことができるのか考えていきたいと思います。

伊藤氏 : ユーザーが使うセンシングに限って言うなら、負荷なく素早く計測できることが重要ですね。海外では既にセンシングを使ったサービスもありますが、わざわざ手間をかけた計測時間が長いサービスは使ってもらえません。いかに普段の生活・行動の中で、自然にデータを習得していくかもポイントになってくるかと思います。

また、単に計測できるだけではユーザーは満足してくれません。計測した結果を使ってどんなポジティブな結果を得られるのか提示してあげることが重要です。加えてポジティブな結果を得るために楽しみながらサービスを使い続けられるゲーム性も求められているように感じます。


イノベーションは異質な組み合わせから生まれる―「美容業界」とは無関係な企業からの応募も歓迎。

――今回、fiBonaが主催するオープンイノベーションプログラムとしては二期目となる「SHISEIDO OPEN INNOVATION 2021」を開催されますが、前回の実績について教えてください。

柳原氏 : 前回のプログラムでは3社を採択し、共同研究を進めています。そのうちの一社を紹介すると、センサーを靴に内蔵した「スマートフットウェア」を開発する株式会社ORPHEです。現在、歩き方がどのように美しさに影響するのか研究を進めています。

運動が美容に良さそうなことは多くの人がなんとなく感じていると思いますが、私たちとしてもこれまでしっかり研究したことはありませんでした。ORPHEさんからの提案(歩行データとBeautyを繋げる価値研究)は、私たちの予想外のものだったので、これまでにない新しい価値を生み出せると思っています。

――靴×美という組み合わせは意外に感じますが、今回のプログラムにおいても募集している技術領域は絞っていないのでしょうか。

柳原氏 : はい、募集する技術領域は絞っていません。むしろ、私たちが想像していないような技術の提案を歓迎しています。実は資生堂は今回のプログラムを始める前から積極的に共創に取り組んできましたが、「私たちが求める技術」を絞りこんで、探索し、共創につなげることがほとんどでした。

今回のプログラムでは、私たちの思い込みを排除し、予想していなかった企業との出会いで、可能性を広げることができると思っています。一見美容業界に関係がなくても、心身の健康に繋がるようなご提案をいただける企業にはぜひ積極的に応募してもらえると嬉しいです。

伊藤氏 : そもそもイノベーションは、異質に思える組み合わせから生まれるものです。健康や美とは直接関係のない企業との組み合わせこそ、これまでにない価値を生み出せると思っているので、ぜひ幅広い企業のご応募をお待ちしています。


■募集テーマ

①データ 「心・肌・身体の状態を知る」

日常生活・運動時・睡眠時などあらゆるシーンや、店頭での接客時において、身体の動きや体内・心の状態を、センシングして可視化。サイエンスとテクノロジーをかけあわせ、心身のコンディションが美に与える影響を紐解きます。

<例>

・心身データの取得・可視化

・感覚・感性とのつながりを科学

・様々なデータとの連携・分析


②コミュニケーション 「1人ひとりにあわせて届ける」

それぞれの生活リズム・習慣、心身の状態によって、手法に正解はなく、1人ひとりにあわせた答えがあるはず。よりパーソナライゼーションに特化、また最適なタイミングでの、自分らしいBeautyの届け方に挑戦します。

<例>

・よりパーソナライズされたオフライン体験

・デジタルを活用した新たなコミュニケーション

・ライフスタイルにあわせた行動変容


③ソリューション 「健康美を実現する」

肌への直接的なアプローチだけではなく、食べ物や運動、五感などあらゆる切り口やサービスと掛け合わせて、

心から身体から、1人ひとりにあわせたそれぞれの健康美につながるソリューションの創造を目指します。

<例>

・身体の内側からのアプローチ

・身体の外側からのアプローチ

・Beauty×新領域

共同研究室・共創スペースも無料活用可能。一緒にグローバルを目指していきたい。

――今回のプログラムに採択されることで、どのようなアセットやリソースを活用できるのか教えてください。

柳原氏 : 例えば、S/PARK内に共創パートナーが入居できる共同研究室を用意しています。共同研究をするとなると、何度も私たちのオフィスに足を運んでもらうことになるので、いっそのこと入居してもらった方が移動も省けますよね。

専用のスペースに大掛かりな研究装置も置くことができますし、私たち資生堂の社員も勝手に入れないのでセキュリティ面も安心です。同じ空間で仕事をしていると、偶発的な出会いもあって新たなビジネスチャンスが生まれることもありますね。

実際に、あるサービスで当社と共創していた企業が、別のサービスでも共創を始めることもありました。空間を共有しているからこそ生まれるチャンスですね。S/PARKには無料で入居できるので、ぜひご活用ください。

――実際に共創パートナーから喜ばれたアセット・リソースなどもあれば聞かせてください。

柳原氏 : 目に見えるアセットではありませんが、前回のときに採択させていただいた企業のうちの1社である株式会社ExtraBoldは「まさか自分たちの技術を美容に使えると思っていなかった」とおっしゃってくださいました。新しいビジネスチャンスを見つけられたのが、一番のメリットだったようです。

――最後にどんな企業からの応募を期待しているのか聞かせてください。

伊藤氏 : 私たちと同じ志を持っている企業とぜひご一緒したいです。美が本業じゃなくても、人の肌や美に何かしら貢献したいと思っている企業と出会いたいですし、一緒に学んでいければと思います。

また、私たちは「スキンビューティーカンパニー」としてグローバルNo.1を目指している会社です。そのため、同じくグローバルを目指している会社と共創したいですね。グローバルに目を向けると、美の基準はさらに多様化します。世界中の人に使ってもらえる商品、サービスを作りたいと思っているので、同じ気持ちで歩んでいける企業と研究を進めていきたいです。

今はスタートアップで国内市場しか見れていなくても、将来的にグローバルを視野に入れている企業と一緒に新しい価値を創っていけると思います。

柳原氏 : 伊藤さんが言うように、志を共有するというのは大事ですね。同じ目標に向かって挑戦するからこそ、一緒に高めあっていけますし刺激しあっていけます。ぜひ同じ志を持っている企業と技術を高めあっていけるといいですね。


取材後記

コロナ禍による自粛期間において、メイクをする機会は減った一方で、自分自身を見つめ直すといった傾向も見えている。そこには、「誰にも見られないから気にしない」ではなく「人に会わず、時間もある今のうちに髪や肌をキレイにしよう」という人々の潜在意識があるだろう。――どんな時代、どんな状況になっても人は美しさを求めるもの。資生堂がオープンイノベーションプログラムで、どんな意外な相手と組むのか、そしてどんな新しい価値を生み出すのか。引き続き、注目していきたい。

なお、プログラムの応募の締め切りは10月18日(10月4日:早期応募締切)。「自社のサービスや技術も、心身の美に繋がるかも」と思った企業は、ぜひ応募を検討してほしい。またオンラインでの説明会も実施予定とのことだ。

<プログラム説明会(オンライン)>

少しでもプログラム参加にご関心のある方は、お気軽に下記よりお申込みください。

□日時:2021年9月27日(月)16:00~17:00

□申込ページ: https://forms.office.com/r/e4YwWhXJ8X

「SHISEIDO OPEN INNOVATION 2021」の詳細は以下からご覧ください。


(編集:眞田幸剛、取材・文:鈴木光平、撮影:齊木恵太)

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