オンライン完結型紛争解決のミドルマン × 新日本法規出版 | 「司法のDX」に向け業務提携、5000万円の資金調達も実施
「Teuchi®️」を開発・提供するミドルマン株式会社は、新日本法規出版株式会社との資本業務提携を見据え2021年7月に基本合意していたが、業務提携に先んじて2021年8月18日に投資契約を締結、新日本法規出版を引受先とするJ-KISS型新株予約権による資金調達を実施したことを明らかにした。
本資金調達はプレシリーズAラウンドに位置付けられるもので、シードラウンドからの累計調達金額は8,000万円となる。今後、両社は、司法のDXを推進するためのODR(Online Dispute Resolution)社会実装に取組むとともに、ODR関連サービスにおける業務提携の検討を進めていく考えだ。
資金調達について
近年、あらゆる業界においてデジタルトランスフォーメーション(DX)が推進されている。司法分野も例外ではなく、「2割司法」という言葉で揶揄されるほど人々にリーガルアクセスが確保されていない現状を改善するため、民事裁判手続きのIT化を政府が推進しているが、完成は早くても2025年とされており、その工程は長きに失する感があるという。
一方で政府は、裁判外紛争解決手続き(Alternative Dispute Resolution=ADR)のオンライン化(ODR)にスタートアップの参入を促すことでリーガルアクセスの改善に弾みをつけるため、2019年度以来3年連続で「成長戦略フォローアップ」の重要施策としてODRを位置づけ、現在は法務省に設置された「ODR推進検討会」において、広くODRを社会実装するための政策について議論が交わされている。
このような政府の後押しを背景として、ミドルマンはユーザー本位の視点から法的紛争解決のあり方をリデザインし、ユーザビリティの高いリーガルサービスを提供するため、国内初となるチャットによる本格的なODRシステム「Teuchi®︎」を開発。時間や場所の制約を受けることなく、スマホひとつで法的トラブルを解決することができる手続きを実現し、2020年1月からシェアリングエコノミー領域で実証実験を開始し、2020年9月には「Teuchi for 敷金」、2020年12月には「Teuchi for 離婚」をリリースした。
ミドルマンは2020年3月にシードラウンドでの資金調達を実施し、コロナ禍を追い風とした国内のODR社会実装をリードしてきたが、新型コロナウィルスと社会との調和にはもう少し時間がかかることを考慮すれば、このような状況はODRの社会実装をもう一段加速させるための千載一遇のチャンスであり、ここでアクセルを目一杯踏み込んで事業を推進するためには更なる資金調達が必要との経営判断に至ったとのことだ。
今回の新日本法規出版からの資金調達により、ユーザーの利便性向上に向けた「Teuchi®︎」の機能強化および新たな対象領域向けサービス開発を進めるための開発およびマーケティング体制を強化する。併せて、Win-Winの解決を目指すエンジン開発のためのR&D部門を立ち上げる。
なお、ミドルマンはADR認証取得を予定しており、現在、法務省による最終審査を受けているところで、今後、シリーズA調達に向けた準備を開始する予定だという。
基本合意について
新日本法規出版は、1948年の創業以来、法律関係書籍を中心とした出版事業を通じて信頼のおける法律情報を提供しており、近年は、イノベーション創出を推進し、新しいアイデアやテクノロジーを活用した法律実務サービスの開発・提供に取り組むため、自社でアクセラレーションプログラムを実施し、積極的にリーガルテック系スタートアップに資本参加するなど、既存サービス領域に囚われないチャレンジを続けている。
この度の新日本法規出版とミドルマンの基本合意は、ODR領域における業務提携に向けた検討を進めるためのものであり、両社の知見とネットワークを最大限に活かせるODR関連サービスの開発に共同で取組む予定だ。
両社は協業を通じて、SDGsやsociety5.0によるリーガルアクセス改善の社会的要請に応えるため、共に司法のDXを更に加速させ、ユーザビリティの高い新たなリーガルインフラサービスとしてのODRの社会実装を推進することで、紛争解決のデジタル化およびオンライン化を実現し、ビジネスとしてのODRを成立させるとともに安心安全な社会構築を目指していく考えを示している。
各社コメント
■新日本法規出版 総合経営企画室 室長 本多誠氏
『ODRは、IT・AIといったテクノロジーの活用により、これまで法的サービスを受けられなかった層に対し、そのアクセシビリティを改善し、将来の日本の法的サービスを、身近で充実したものにしていく上で、非常に大きな役割を担う紛争解決手段だと考えています。また、これまで対面でのコミュニケーションを前提としていた紛争解決実務も、コロナ禍により、デジタル活用の方向へとシフトへの期待が一層高まっており、今後ますます社会インフラとして注目されるものと思います。
このデジタル時代の紛争解決インフラとして期待されている、日本初のチャットによるODRシステム「Teuchi」を開発・提供しているミドルマンは、「法的な紛争解決を身近にする」というミッションの実現に向けて、法律及び技術の観点からの検討とサービス(システム)の実証を重ね、オンラインによる紛争解決をサポートする会社として躍進が期待されています。
当社は今回の引受けを契機として、同社との協業関係を深め、ODRの実証や社会実装のための取組みを支援し、ODRの普及に向けて尽力してまいります。ミドルマンの提供するサービスが、法的サービスの利用を後押しし、広く一般的なものとなることで、法的トラブルを抱える人々の課題解決の一助となることを期待しています。』
■ミドルマン 代表取締役 三澤透氏
『私たちが挑んでいる領域は「司法」という「規制産業」で、今後ODRシステムやサービスを開発していくうえで、弁護士法や裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律をはじめとする法令との整合性を図りながら進めていくことは不可避とみています。
このような規制にアプローチするために、行政や関係機関と「戦争」を始めるようなやり方は望ましくなく、協調的アプローチにより一緒になって変化を起こす方法を私たちは迷うことなく選択します。そこで重要となる戦略が士業に大きな影響力を持つ企業との連携で、この業界で信頼と実績のある新日本法規出版との提携は、これ以上ない最良のパートナーと巡り会えたと心から感じております。
ODR領域に新日本法規出版が資本参入することそのこと自体が、大きなインパクトを生み出すものと期待しています。また、このような出会いを提供していただいた愛知県主催のビジネスマッチングプログラム「Aichi Matching 2020」には大変感謝していますし、新日本法規出版が本社を置く名古屋は私が高校卒業まで育った地域でもあり、今後、名古屋の経済に貢献できることについてもとても楽しみにしています。』
「Teuchi®︎」について
「Teuchi®︎」は、デジタル時代のバーチャル裁判所として期待されている日本初のチャットによるODRシステム。紛争ジャンルごとに解決プロセスをデザイン思考でパターン化(類型化)したうえで、合理化された交渉から調停人とのマッチング、そして合意書の締結までをオンラインで完結させる仕組みを提供している。
顧客からのクレーム対応や債権回収トラブルに労働問題、あるいは離婚や相続等の家事領域まで幅広い活用を想定し、既にシェアリングエコノミー、敷金トラブル、離婚の領域への導入実績がある。 ODRは政府も社会実装を推進している注目分野であり、ミドルマンは政府の検討会にゲスト参加している。
※2019年度 第3回ODR活性化検討会:参考ページ
※2021年度 第10回&第11回ODR推進検討会:参考ページ
※サービスサイト:https://www.teuchi.online
※関連リンク:プレスリリース