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レシピの会社から、料理の会社へ。横浜に本社を移転したクックパッドがベンチャー企業との共創で実現したいこととは?

レシピの会社から、料理の会社へ。横浜に本社を移転したクックパッドがベンチャー企業との共創で実現したいこととは?

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2021年5月、恵比寿から横浜みなとみらいに本社を移転したクックパッド株式会社。食の「つくり手」や生活者と密接にかかわることで、料理を取り巻く社会課題の解決に本気で取り組んでいる。

2018年に新規事業として立ち上げた生鮮食品EC「クックパッドマート」は、地域の生産者や販売者の新鮮な食材をアプリで購入し、自宅近くの生鮮宅配ボックスで受け取れるサービス。現在は東京・神奈川を中心に展開しているが、将来的には全国に展開し、「つくり手」と「生活者」をつなぐ生産・流通・買い物の新しいプラットフォームをつくろうとしている。

神奈川県が主催する「ビジネス・アクセラレーター・かながわ(BAK)」で共創の軸となるのが、このクックパッドマートである。つくり手、生活者、双方に価値を提供し、日本の食をより豊かに楽しくしていこうという試みに、ベンチャー企業の力が必要だという。

クックパッドがオープンイノベーションで実現したい世界、そして各テーマで具体的にどのような共創を考えているのだろうか。クックパッドのオープンイノベーションを牽引する住 朋享氏と、クックパッドマート事業グロースを担う則俊 慶太氏にBAKに対する意気込みを聞いた。

BAK NEW NORMAL PROJECT 2021…コロナ禍で顕在化した様々な課題を、神奈川県の企業とベンチャー企業との共創で解決を目指すプロジェクト。

【インタビュー対象者】

・クックパッド株式会社 Biz Dev and Strategy Manager 住 朋享 氏

・クックパッド株式会社 買物事業創造部部長 則俊 慶太 氏

神奈川という地から「日本の食卓を豊かにする『つくり手』と毎日の料理を楽しみにする」世界を創りたい

――クックパッドさんは、アクセラレータープログラムなど、オープンイノベーションを積極的に行っていらっしゃいますが、その理由をお聞かせください。

住氏: 2016年頃、クックパッドはそれまでのレシピの会社から、大きく方針転換を行いました。料理をつくることは、地球のこれからをつくることであると認識し、レシピだけではなく、料理全般の課題を解決する会社を志したのです。


▲Biz Dev and Strategy Manager 住 朋享 氏

そして、料理を取り巻く課題を明らかにするために経営層とディスカッションし、「食と料理にまつわる社会課題マップ」を作成しました。すると、食糧生産や流通、環境問題など、実に多様な課題が見えてきたのです。ただ、解決すべき課題があふれているとはいえ、クックパッドだけの力では限界があります。そこで様々な課題を解決し、ビジョンを実現する手段として、オープンイノベーションを選択しているのです。

――今回、なぜBAKへの参画を決めたのでしょうか。

住氏: クックパッドは2021年5月、本社を恵比寿から横浜の「WeWorkオーシャンゲートみなとみらい」へ移転しました。今回のテーマにも掲げていますが、当社のミッションである「毎日の料理を楽しみにする」を実現するためには、「つくり手」を活性化させていく動きが重要です。ここで言う「つくり手」とは、家庭で料理を作る人はもちろん、食材の生産や流通に関わる人、料理の道具をつくる人など、食の楽しみを広げるすべての人を指します。

彼らと共に料理に関わる様々な課題に対応していくためには、実際に現場に足を運び、膝を突き合わせて会話をし、そこで得たものを速やかにオフィスに持ち帰って社員同士が議論をする必要があります。神奈川県には昔ながらの商店街や市場など、多くの「つくり手」がいることや、都心部よりも職住近接の実現が可能なことから、私たちは横浜に移転しました。そして、神奈川県に根を下ろす企業として、地域とともに「日本の食卓を豊かにする『つくり手』と毎日の料理を楽しみにする」世界を創っていきたいと考え、BAKへの参画を決めました。

――今回メインで共創を行う「クックパッドマート」事業について教えてください。

則俊氏:クックパッドマートは、生産者と生活者をつなぐ生鮮食品ECプラットフォームです。地域の精肉店や鮮魚店、野菜農家などの食材をアプリでまとめて注文できます。1品から送料無料で必要な分だけを購入でき、コンビニやドラッグストアなどに設置された共用冷蔵庫「マートステーション」の中から好きな場所・好きな時間にピックアップが可能です。


▲買物事業創造部部長 則俊 慶太 氏 


各家庭に配送するのではなく、共用冷蔵庫を活用することで、配送コストを大幅に抑えています。かつクックパッド独自の流通網を作ることで、消費者にとってはお手頃な価格を、そしてつくり手にはより多くの収益を実現可能に。まずは一都三県を中心に展開して成功モデルをつくり、将来的には全国に広げていきたいと考えています。

クックパッドマートを軸に、つくり手や生活者を支える3つのテーマを設定

――今回、3つのテーマを設定していただいています。まず「圧倒的に多くの魅力的な食の『つくり手』を生み出す、活性化する」のテーマで実現したいことについて聞かせてください。

則俊氏:先ほど住も話していましたが、クックパッドは今後レシピの会社から料理の会社になっていきたいという想いがあります。そして「つくり手」の枠を料理に限定せず、食に関わる様々な担い手に広げていきたいと考えました。

クックパッドマートは、事業を通して食材のつくり手を支援していくことを目指しています。なぜかというと、稼げずに辞めていく人や、稼げないために継ぎ手がいない人が多いからです。特に顕著なのが少量多品種栽培の農家さん。規格外の野菜は流通に乗ることもできず、自分で販路開拓していかないと生産しても利益が上がりません。どれだけ頑張っていいものを作っても、稼げない職種になってしまっています。

そのため、つくり手の数は減少傾向に。その結果、日本の食はますます画一的になり、豊かさが失われていくことを危惧しています。こうした危機感からクックパッドマートでは、つくり手の仕事を経済的にも持続可能にすること、そしてイキイキ輝きながらつくる姿を支えたいと考えています。

そこで、クックパッドマートは売上の多くをつくり手に還元。クックパッドマートが広がるほど、つくり手は稼げるようになり、生活者ともつながることでやりがいも感じられ、経済的な持続可能性も手に入れることができるのです。そのためのプラットフォームづくりを、ベンチャー企業の方々と共に行っていきたいと思っています。

――次に、2つ目のテーマである「より多くの生活者へ、より豊かで楽しい食卓を」で実現したいことをお聞かせください。

則俊氏:クックパッドマートは、食材のつくり手と生活者という、2種類のユーザーがいます。1つ目のテーマでは、食材のつくり手を支援したいという話をしましたが、2つ目のテーマは生活者にフォーカスしています。


たとえば共働きの家庭で、仕事が終わった後に毎日献立を考えて、保育園にお迎えに行った後にスーパーで買い物をして、というのは面倒ですよね。しかもスーパーが混んでいたり、いい食材が手に入らなかったりと、ストレスを抱える場面も多いと思います。

クックパッドマートは、この”負”を解決するサービスです。アプリ1つでいつでも注文でき、帰宅する導線上に設置されているマートステーションで受け取ることができます。最近では、みなとみらい線と連携協定を締結し、全駅に共用冷蔵庫を設置しました。また、総戸数100戸以上のマンションへの設置を進めるなど、利便性の向上に努めています。サービスが広がることで、生活者の毎日の負担を軽くしていく。それが、豊かで楽しい食卓へとつながっていくはずなので、ぜひ実現させていきたいですね。

――3つ目のテーマ、「圧倒的に便利になる受け取り場所の増設・展開 価値の向上」についてはいかがでしょうか。

則俊氏:現在、東京都・神奈川県に設置された宅配ボックスは、500カ所ほど。これを将来的には全国へ展開し、首都圏だけでも1万カ所を超えるような規模に広げたいと考えています。クックパッドマートを利用すれば、少し離れた場所で収穫された新鮮な野菜や、毎日買いに行けない場所にある精肉店の名物串焼きなどを、送料無料で自宅の近くで受け取ることができます。

最近では、調布市の道の駅が出店してくださっていて、都心のユーザーから「新鮮な野菜が手に入る」と好評です。安くて美味しい新鮮な食材、しかも自分が求めている食材が、自宅の近くで手に入る。この便利なサービスを広げることは、生活者にとってメリットが大きいことはもちろん、共用冷蔵庫の設置場所であるコンビニやドラッグストアにも、来店数の増加など貢献できると考えています。こうした、価値の向上にも努めていきたいと考えています。

 

食、流通、生活など、多様なベンチャー企業と共創の可能性が広がる

――続いて、各テーマでどのようなベンチャー企業との共創を考えていらっしゃるのか、お聞かせください。

則俊氏:まず1つ目のテーマ、「圧倒的に多くの魅力的な食の『つくり手』を生み出す、活性化する」では、独自のつくり手支援をしている企業と組みたいですね。つくり手とは、決して農家だけではありません。

食材が私たちの手に届くまでに関わる幅広いプレーヤーを「つくり手」と定義していますので、様々なベンチャー企業と協業の可能性があると思います。

住氏: 完全陸上養殖や、プラントベースフードなど、新しい食の技術で体験を作っているベンチャー企業、あるいは生産効率や継承問題など生産者の課題解決課題解決に取り組むベンチャー企業など、様々な切り口で協業が考えられます。特に、既存の流通で売ることは難しいけれど、魅力的なつくり手を活性化させたり、食べる人を圧倒的に楽しませたりできるようなサービス・プロダクトと組めると面白いですね。食の多様化という意味でも、新しい価値が提供できると思います。

――「より多くの生活者へ、より豊かで楽しい食卓を」「圧倒的に便利になる受け取り場所の増設・展開 価値の向上」のテーマについては、どうでしょうか。

則俊氏:この2つは共通していて、流通領域にチャレンジしているベンチャー企業と良い共創ができると考えています。たとえば、首都圏でも車社会のエリアでは、駅に共用冷蔵庫を置いてもユーザーにとって必ずしも便利になるわけではありません。そこで、自動運転のクルマに冷蔵庫を乗せて、各世帯を巡回できたら便利だな、というようなことを考えています。他にも、コロナ禍で非接触の何かに取り組もうとしているテック系ベンチャー企業や、家事代行など家庭に入り込んでいるベンチャー企業とは、相性がいいと思います。

住氏: 「ベンチャー企業×大企業×クックパッド」という共創パターンの可能性もあります。たとえばデベロッパーとテック系ベンチャー企業が組んで、新しい街や商業施設、ライフスタイル、住空間などを作ろうというときに、クックパッドが新しい食の体験を提供するという切り口で協業できると、面白い体験を提供できそうです。

――様々な共創の可能性を提示していただきましたが、そういったベンチャー企業に、クックパッドがどのようなリソースを提供できるでしょうか。

住氏: 今回、クックパッドマートを軸としてトライアルをしていくため、受け取り場所や配送ネットワークはもちろん、クックパッドマートのアプリ上での告知、またはライブコマース、YouTubeでの配信の場などを提供できます。独自の配送網を持つクックパッドマートのようなECは非常に珍しいので、ユニークなトライアルの可能性が広がっていると思います。


新しい価値観を生み出すためのプログラム。共に100年先の未来を創りたい

――最後に、お二人からこのプログラムにかける意気込み、ベンチャー企業へのメッセージをお聞かせください。

住氏: これまでクックパッドは、オープンイノベーションが得意ではありませんでした。「レシピの会社」というイメージが強いがために、どうしてもレシピを軸とした共創になりがちで、それは必ずしもユーザーにとって必要不可欠なサービスになるとは限らないからです。

 今回は、完全に新しい価値観を一緒に創るべく、模索していくプログラムです。だからこそ、我々もチャレンジしたいという意気込みを強く持っています。特にコロナ禍で、食に関わるチャレンジをしているベンチャー企業が増えました。そういう方々と共に100年続く未来を創っていきたいですね。

則俊氏:クックパッドが掲げる「料理の会社」を目指す上で、僕たち自身が一番変わらないといけないと思います。そうした「変わらなければ」という時に、新しいエネルギーや新しい価値観が、コラボレーションで生まれることが多いのではないでしょうか。用意された正解がない世界で、正解を創ろうという熱量や気概を持つ方と出会って、一緒に取り組んでいけたら嬉しいです。

 

取材後記

クックパッドマートは、これから本格的な拡大を目指す成長期にある事業だ。かつ、クックパッドのビジョンやミッションと明確に紐づくテーマ設定であることから、ダイナミックな共創が期待できる。クックパッドが目指す世界観に興味のあるベンチャー企業は、ぜひ積極的に応募して欲しい。クックパッドが新たに本社を構える神奈川で、これからどのようなイノベーションが始まるのか、楽しみだ。

●「BAK NEW NORMAL PROJECT 2021」のパートナー企業・クックパッドの詳しい募集テーマはこちら(応募締切:7/26まで)

(取材・編集:鈴木光平、文:佐藤瑞恵)

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BAK NEW NORMAL PROJECT 2021とは、新型コロナウイルスの感染拡大により、顕在化した様々な課題を神奈川県の企業とベンチャー企業との共創で解決を目指すためのプロジェクトです。