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大きな非効率が眠るプラント建設現場。解決を目指し日揮グループが走り出す

大きな非効率が眠るプラント建設現場。解決を目指し日揮グループが走り出す

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世界中のエネルギープラントの建設を行う日揮グループ。これまで80を超える国で、2万件以上ものプロジェクトを遂行してきました。総合エンジニアリング業界では国内ナンバーワンの実績を誇っています。

世界トップクラスの技術とノウハウを持つ同社ですが、既存のやり方を成熟させ、改善していくことには長けていても、これまでにない斬新な発想を生み出せないことに問題意識を抱えていました。

「自分たちの分野とは一見遠い存在、ベンチャー企業や異業種の人たちと、より一層コミュニケーションする必要性を感じています」

そう語るのはサステナビリティ協創部の田中悠太氏。これまで社内で部分的に取り組まれていたオープンイノベーションの本格的な導入と仕組み化を図っています。今回は田中氏に、神奈川県のアクセラレータープログラム「BAK NEW NORMAL PROJECT 2021」への意気込みを聞きました。

 BAK NEW NORMAL PROJECT 2021…コロナ禍で顕在化した様々な課題を、神奈川県の企業とベンチャー企業との共創で解決を目指すプロジェクト。


限定的だったオープンイノベーションが自然に起きる仕組みを作る

まずは、オープンイノベーションの取り組みを改めて強化している背景から教えてください。

田中:社内の議論や検討だけでは真にブレイクスルーを生み出す発想が生まれにくいため、社外により目を向け新しいアイディアや技術を取り入れなければいけないと考えているからです。

私達、日揮グループはソリューションプロバイダーとして、これまで顧客の様々な課題解決をしてきました。特にコア事業であるプラントEPC(設計・調達・建設)においては、自社で工場や商品を持っているわけではなく、世界中のあらゆる技術やノウハウを集結させて課題を解決します。つまり、私達のサービスの本質は、ソリューションを考えることに根ざしているとも言えます。


▲サステナビリティ協創部・田中悠太氏

しかしその一方、自分たちでソリューションを考え抜いてきた経験が弊害になる時もあります。それは非連続なイノベーションを起こそうとした時に、既存の枠組みを超えた発想がしづらいこと。たとえば、既存の業務のプロフェッショナル人材ばかりを集め、いくら「自由にアイディアを出していい」「これまでにないアイディアを」と促しても、既存の手法や成功例に囚われて、従来と抜本的に異なる手法を自由に発想するのは容易ではなく、行き詰ることがあります。

そのため、これまでコミュニケーションした頻度が少なく、組み合わせの検討をあまりしてこなかった遠い存在、つまりベンチャー企業や異業種との協創が必要だという考えに至りました。私個人としては、経済産業省・JETRO主催「始動 Next Innovator 2019(グローバル起業家等育成プログラム)」のシリコンバレー派遣選抜メンバーとして、世界中の大企業がベンチャー企業とのオープンイノベーションを志向し動いている実態、成功例や失敗例を含めて、現地で見聞きしてきた体験に依るところがあります。

これまでは他業界との付き合いはなかったのでしょうか。

田中:いえ、これまでも社内で内製できない分野について、例えばITベンダーさんに開発を依頼するといった事例はありました。しかし、基本的には自社内で検討し、仕様を決めて発注するという形が基本でした。今後は、既存手法の課題をありのまま開示し、ベンチャー企業や異業種にゼロベースの発想を求めるなど、全く新しい価値を生み出すアプローチを増やしていく必要があると考えています。

また、これまでもベンチャー企業や異業種等とオープンイノベーションの試みは行われてきたものの、一部の部門の取り組みに限られ、社内でもあまり注目されてこなかった面があります。今後は、世界の多くの企業で実践されているように、全社的かつ戦略的なベンチャー企業との連携を模索していきたいと思い、行動しています。

これまでベンチャー企業と組んできて、どのような実感を得ているか聞かせてください。

田中:自分が関わり実装に至った事例はまだないのですが、ベンチャー企業と連携模索する度に、自分たちの視野の狭さを感じますね。社内では知られていない技術シーズ、マネタイズの発想などがあり、自分たちが探しているつもりでも見つけられなかったものも少なくありません。

また、ベンチャー企業と組むことにより、自社にとっては多少飛び地とも言える分野にも挑戦しやすくなるので、新しい可能性を感じています。

今回、BAKに参加しようと思った背景についても教えてください。

田中:自社では実施例のないアクセレータープログラムに、地元である神奈川県とeiicon companyさんのサポートを得ながら参加できることは非常に有難く、とても有意義なプロジェクトだと思いました。

まず、神奈川県の主催ということで、横浜みなとみらいに本社を構える当社にとって、地理的にも身近なところで共創を進めるというのは、アクセラレータープログラムに慣れていない私達にとってハードルの低さに感じました。

また、パートナー企業として、ソリューションではなく、共創テーマとなる課題を掲げる経験をすることで、社内だけで検討や発想しがちな頭を一度切り替えてみることができると考えています。

現場での仕事を効率化する2つのテーマ

今回、BAKで募集するテーマについて教えてください。

田中:今回、2つのテーマに分かれて募集するので、それぞれのテーマの責任者に詳細を語ってもらいます。

資材管理システム

鈴木:私達グループ1が掲げているテーマは、「人手を必要としないプラント管理システム」。


▲エネルギーソリューションズ・プロジェクト部 鈴木博也氏

私達は様々な事業領域を展開していますが、そのメインとなるのが海外のエネルギープラントの設計・調達・建設です。巨大なプラントを建設するには、何十万点という資材が必要で、それらを各メーカーに問い合わせて購入し、現地に輸送して、大きな敷地を借り、主に人の手で管理しなければいけません。

大変なのが、現地でのチェック作業です。世界中から届けられた資材に過不足がないか、不具合がないか人力でチェックするのです。その数が数十万点にも及ぶものですから、それを人の目でチェックするのは容易ではありません。


時には数キロ四方にも及ぶ広大な敷地が必要になる上に、そこに煩雑に置かれた資材を管理しなければいけない時もあります。資材がどのような状態であっても、効率的に資材を管理するためのシステムを作るのが、今回私達が募集しているテーマの一つです。

これまで同じ課題に対して解決を試みたことはあるのでしょうか。

田中:これまでもRFID(電波によって、範囲内のタグを複数一気に読み取るシステム)やQRコードを使って管理しようと試行錯誤してきました。しかし、私達が扱っている資材には鉄鋼製品が多く、たとえば配管や鉄骨にタグやQRコードを貼り付けても、コンテナなどで輸送している最中にこすれて剥がれてしまうこともあります。また、鉄鋼製品は電波を通しづらいため、製品同士が重なりあって保管されているとうまく読み取りすることができません。

屋外の広大な敷地に、資材をばらばらに置いて保管する場合もあり、その中からQRコードを探して読み取る作業は効率的とは言えません。

鈴木:極めつけは温度環境。砂漠やジャングルを思い浮かべてほしいのですが、天然資源を原料とするエネルギープラントの建設現場は日本では考えられないような高温多湿な場合が多くあります。そのような環境でも正常に作動するタフさも求められます。

今回のプロジェクトでは、以上のような既存手法の課題を部分的にでも解決できるアイディア、あるいは全く別のアプローチなど、解決の糸口を見つけられればと期待しています。

位置情報管理システム

大里:私達グループ2が手掛けるテーマは「広大な敷地における動的位置情報管理システム」の開発です。


▲EPC DX部 大里英理雄氏

私達の作業現場は数キロ四方に及ぶ広大な敷地になることも多く、その中で数千人、時には1万人を超えるスタッフが行き交いながら働いています。それぞれのスタッフがどのように動いているのか把握するため、各スタッフにもたせたIDで位置情報を把握する「フィールドオプト」というシステムを、これまで開発してきた経緯があります。


しかし、実際に現場で導入を進めてみると、様々な課題が見えてきました。例えばビーコンで位置情報を把握しようとすると、ビーコンを読みとるためのレシーバーを現場の至るところに置かなければなりません。付随してWi-Fiのアクセスポイントを用意する必要もあり、その電源を確保するにはバッテリーとケーブルも必要となります。

様々なものが行き交う建設現場では、安全を最優先する観点からも、最終的に撤去するレシーバーやWi-Fiアクセスポイント用仮設ケーブルの引き回しはできるだけ省かなければいけません。仮に電源をバッテリー(蓄電池)にすればケーブルは必要ありませんが、砂漠のような高温多湿の環境ではバッテリーの性能も大幅にダウンしてしまいます。

続いてGPSも検討していますが、こちらもバッテリーが問題に。みなさんもスマホでGPSを使うことがあると思いますが、バッテリーの減りが早くなりますよね。そのため、スタッフには数日に一度は充電をしてもらわなければなりません。

業務を効率化するためのシステムなのに、スタッフの仕事を増やしては本末転倒です。スタッフが持っていることを意識しないようにするためにも、1~2年は充電なしで使えるような仕組みやバッテリー性能が好ましいです。

このように、私達のアイディアや既に知っている技術の組み合わせでは理想のシステムを完成させることが難しく、今回のプロジェクトでベンチャー企業の力を借りたいと思いました。

これまでは他社の技術を使ったことはないのですか。

細谷:ベンダーさんに依頼することはあっても、ベンダーさんが作ってくれるのは私達の依頼通りのもの。そもそも私達の中に完璧な解決策が見つかっていないので、それ以上の解決策は出てこないわけですね。

今回は私たちが出したテーマに対して提案をしてもらえるとのことで、社内の想像や検討の範囲を超えた解決策を持っている企業さんに出会えるのを楽しみにしています。


▲EPC DX部 細谷龍馬氏

実際の現場に近い環境を提供可能

今回のプロジェクトで共創相手に提供できるリソースを教えてください。

田中:一つは茨城県の大洗町にある技術研究所です。そこには広大な敷地があるため、今回のプロジェクトの実証実験に使うことも可能です。例えば第一グループのテーマなら、実際に資材を用意し、実際に管理できるのか現場に近い状態で確認してもらうことができます。

また、国内であれば実際の建設現場での実証が検討可能です。このご時世なので海外の現場は難しいかもしれませんが、国内で実際に稼働している現場で実験することで、シミュレーションでは捉えづらい課題の本質をつかむ貴重な機会になるのではと考えています。


最後にプロジェクトに参加するベンチャー企業に対してメッセージをください。

鈴木:資材の管理は本当に頭が痛い問題で、今回のような試みは初めてながら期待しています。海外で仕事をする際には現地の技術者と一緒に働くことになりますが、日本のような優秀な技術者は多くありません。それでも高いパフォーマンスを生み出すには、資材管理が大きなポイントになるため、一刻も早く解決できればと思っています。

細谷:建設現場では人とモノの管理をデジタル化する変革が起き始めていますが、まだまだ人間が作業しなければならないことが多く残っています。どんなに機械が自動化されても、それを扱う人間は必要です。

そのような人たちに如何に安全かつ効率的に働いてもらうか、それを実現するためにも今回のプロジェクトには大きく期待しています。私達がまだ知らない技術、気づいていない発想を持っているベンチャー企業と出会いたいですね。

田中:私達はプラントEPCというコア事業において、自社工場・自社製品を持ち合わせていません。自分たちの製品を持っていないからこそ、「この製品、この技術を使ってください」と押し付けることもありません。しがらみなく、いい技術、いいアイディアがあればフラットに取り入れることができます。共創相手とは、そのような姿勢でプロジェクトを進めていけると確信しています。

●「BAK NEW NORMAL PROJECT 2021」のパートナー企業・日揮の詳しい募集テーマはこちら(応募締切:7/26まで)


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  • 上辻 勇

    上辻 勇

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    小島 秀藏

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BAK NEWNORMAL PROJECT2021

BAK NEW NORMAL PROJECT 2021とは、新型コロナウイルスの感染拡大により、顕在化した様々な課題を神奈川県の企業とベンチャー企業との共創で解決を目指すためのプロジェクトです。