DAC × Acompany | デジタルマーケティング領域での秘密計算を活用した、プライバシー保護データ分析の実証実験に成功
デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(DAC)と株式会社Acompanyは、国内でほとんど先例のない、デジタルマーケティング領域における「秘密計算」(データを暗号化したまま計算できる技術)を用いたプライバシー保護データ分析の実証実験を行った。
その結果、パーソナルデータを秘匿したまま統合分析を行うことが可能で、プライバシー保護に有益なことが明らかになった。また併せて、データ分析の精度や速度が実用レベルであるとの結果も得ることができたという。
今後両社は、秘密計算を用いたマーケティングデータ分析の手法確立に取り組み、これまで以上に安心・安全なデジタルマーケティングにおけるデータ活用の実現を目指す考えだ。
実証実験を実施した背景
デジタルマーケティング領域においては、企業自身が保有する顧客情報や、他社が保有する関連情報など、複数の組織が持つデータを突合し分析を行うことが多くなっている。その際、パーソナルデータをローデータ(生データ、無加工データ)のまま扱うと、万一データ漏洩が発生した場合のリスクが大きいことから、プライバシー保護が重要なテーマとなっている。
データを安全に統合分析する技術として、暗号化(秘匿化)したデータを使って計算処理ができる「秘密計算」が注目されている。秘密計算技術の活用により、プライバシー保護とデータ流通の両⽴が可能となり、Society5.0時代に必要な安⼼・安全なデータ社会の実現への貢献が期待されている。
このような状況を背景に、このたび、デジタルマーケティングサービスを提供するDACと秘密計算技術に強みを持つAcompanyは、秘密計算を用いたマーケティングデータ分析によって、安心・安全なマーケティング分析を実現するべく、今回の実証実験を実施したという。
実証実験の詳細
DACの顧客企業が保有するデータとDACのDMP「AudienceOne(R)」のマーケティングデータに対して、Acompanyの秘密計算ソフトウェア「QuickMPC」(※1)を用いて暗号化された状態で『データ分析が可能か』、また『従来手法の分析結果と比較し、有効であるか否か』を検証した。さらに、暗号化された状態でのデータ分析結果が実⽤レベルにあるかについても検証を行ったという。
<検証方法>
(1)クラウドサーバーに秘密計算環境を構築。
(2)分析対象のデータセットを、以下の通り準備。
◆DACの顧客企業が保有するユーザーに対する『アンケート結果データ』(20代・30代の2種類)
・218,436点(72,812⼈ x 3属性)
・637,212点(212,404⼈ x 3属性)
◆「AudienceOne(R)」の同一のユーザーに対する『各種属性値とコンバージョン値のデータ』(20代・30代の2種類)
・871,255点(28,105⼈ x 31属性)
・2,550,649点(82,279⼈ x 31属性)
(3)秘密計算環境下で、コンバージョン値と属性・アンケート結果の相関値を計算。
対照実験として、通常のローデータによる計算と比較。
<検証結果>
・暗号化された状態でマーケティング分析が可能であることが確認できた。
・データの暗号化から分析完了までの処理にかかる時間が数分であることが確認できた。
・本実証実験での平均絶対誤差は、下記の表のとおり0.001未満であり、実務レベルにおいても有用であることが証明された。(一般的に、相関係数の性質として、絶対誤差が0.001未満であれば実用上問題がないとされている。)
※1: 「QuickMPC」はデータを秘匿したまま統計分析・機械学習が実行可能な、マルチパーティ計算(Multi-party Computation:MPC)による秘密計算エンジンだ。データの内容を知られることなく計算が実行できるため、個⼈情報や顧客データなどの機密情報を外部に知られることなく活用することができる。
今後の展望
上記の通り、本実証実験では、秘密計算環境下において暗号化されたデータの突合および分析が可能であることが明らかとなった。今後、DACとAcompanyは、より高度な分析に対し秘密計算環境下での実証実験を継続するとともに、共同ソリューションの開発や企業へのサービス提供により、プライバシー保護とデータの流通によるビジネス推進の両立を推進していく考えだ。
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