バイオベンチャー企業群 “ちとせグループ” | 9業種20機関と共に、藻類を活用した企業連携型プロジェクト『MATSURI』を始動
バイオベンチャー企業群 “ちとせグループ” は、9業種20機関と共に、藻類を活用した日本発の企業連携型プロジェクト『MATSURI』を2021年4月より始動したことを発表した。今後、光合成を活用した藻類の生産(独立栄養方式(※1))を通じて、カーボンニュートラル実現を推進する。同時に、パートナー企業間で連携して事業開発を行い、燃料をはじめプラスチックや食品、化粧品など人々の生活を支える藻類製品を社会に普及させていくという。
二酸化炭素を吸収しながら、様々な物質を生み出す生物「藻」
藻類は、太陽光のエネルギーを用いて、二酸化炭素を吸収しながらタンパク質・脂質・炭水化物などを生成する。それらの生成物は、化石資源を代替・補完し、燃料やプラスチック、食品、化粧品などの原料となる。また、藻類は、光合成を通じてカーボンニュートラル実現や、SDGs「GOAL13:気候変動に具体的な対策を」に貢献するという。
藻類を活用した日本発の企業連携型プロジェクト『MATSURI』
MATSURIは、多種多様な業界から様々な企業が参加し、藻類培養に関わる設備の開発や物流網の整備、最終製品の開発・販売など、藻類の生産から販売に至るまで、全ての段階でそれぞれの事業を展開し、パートナー企業が一体となって藻類産業の構築を目指していく企業連携型プロジェクトだ。
MATSURIの名の通り、人類史上に残るお祭りとするべく、藻類の活用を通じたサステナブルな社会づくりを志し、共に新産業を創っていくパートナー企業を、今後も広く募っていくとのこと。
『MATSURI』の特徴
1.パートナーシップを活用した、経済的な藻類製品の展開
現在、健康食品や化粧品といったいくつかの高付加価値製品の市場においては、藻類から得られる成分を用いた製品が既に販売されているが、燃料やプラスチックなど、比較的単価が安い製品は、藻類原料の生産コストと製品価格が折り合わないため、事業化が難しいといった課題がある。
MATSURIでは、それぞれ異なる分野で藻類製品の開発を志すパートナー企業と共に、藻類を構成するタンパク質・脂質・炭水化物など全ての成分を最大限活用することで、あらゆる分野で収益性が確保できる産業構造の構築を目指す。
2.透明性のある情報発信
近年、欧米を中心に、環境へ配慮していることを装いながらも、その実態はごまかしである「グリーンウォッシング」な取り組みが問題視され始めている。藻類製品は、現在、有機JAS認定のような基準や規定はなく、製品中の藻類原料の含有量や生産方式を明示する義務もないが、MATSURIでは、これらの定量・定性的な情報を開示し、サステナブルな社会づくりに向けた透明性のある取り組みを徹底していく考えだ。また、藻類を消費者により身近に感じてもらえるよう、事業化や研究開発の進捗についても、Webサイトやプレスリリースを通じて積極的に情報を発信していくという。
『MATSURI』のロードマップ
MATSURIでは、2025年に世界最大となる2,000haの藻類培養設備を建設し、様々な製品の原料として300円/kg以下の生産コストで140,000トン/年(乾燥重量)の藻類を供給できる体制を確立する方針だ。そして、藻類由来の製品を社会に届けることを目指すという。
パートナー企業と『MATSURI』参加の目的
■ENEOS株式会社:低炭素・循環型社会実現のため、燃料のみならず参加企業と共に多様な製品開発を行い、持続可能な藻類事業を目指す。
■三井化学株式会社:「カーボンニュートラル」の実現に向け、原料転換の方策の1つとして藻類の活用に取り組む。自社製品・技術の藻類産業への応用。
■日本精化株式会社:藻類由来素材の探索・評価と、サステナブルな化粧品原料や特徴ある化成品などの藻類由来素材製品の開発と販売。
■株式会社富洋海運:海外での藻類の大規模培養・藻類由来燃料の購入、運輸。
■日本特殊陶業株式会社:環境持続性のある藻類事業に対する調査検討。
■本田技研工業株式会社:藻類由来の石油代替樹脂原料の可能性を参加企業と共に探索すること。
■三菱ケミカル株式会社:藻類培養、加工への自社技術の応用による新規事業の開発。
■興和株式会社:藻類由来の製品の販売網構築。
■DIC株式会社:オープンイノベーションの推進・既存事業の拡大。
■富士化学工業株式会社:自社事業で得られる藻類残渣の活用、藻類を活用した新規事業探索。
■株式会社日立プラントサービス:藻類加工プラントエンジニアリングへの自社技術の応用・新規事業を見据えた顧客への新たなソリューションの開発。
■池田糖化工業株式会社:食分野における藻類由来の製品の開発・販売。
■武蔵塗料ホールディングス株式会社:塗料分野における藻類由来の製品の開発・販売。
■新潟県長岡市:バイオエコノミーの推進、検討会における参画企業(団体)との情報交換、地域企業における事業参画機会の創出。
■佐賀県佐賀市:バイオマス産業都市構想の実現に向けた、藻類事業によるCO2利活用及び藻類の多段階利用によるパートナー企業との共同事業の展開。
■山梨県北杜市:脱炭素社会の実現を目指す「ゼロ・カーボンシティ宣言」の取り組みの一環として、科学的知見に基づく様々なアイディアを取り入れること。
※独立栄養方式:太陽光をエネルギー源、二酸化炭素を炭素源とする、光合成による生産方式。生産時に二酸化炭素を吸収する、サステナブルな生産方式。
※従属栄養方式:糖などの有機化合物をエネルギー源・炭素源とする生産方式。安定した生産が可能な一方、糖の生産や輸送において二酸化炭素を排出すること、エネルギーやコストも必要となることが、サステナブルな視点からは評価されていない。
※本文中の「藻類」は全て「微細藻類」を示す。
※関連リンク:プレスリリース