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「ファッションテック」登場で10兆円市場の行先は?AI×ファッション・アパレルの共創事例

「ファッションテック」登場で10兆円市場の行先は?AI×ファッション・アパレルの共創事例

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多くのビジネスパーソンが注目するAIビジネスですが、AIには多用に細分化された用途があります。ですから「どの領域のAI活用がアツいか?」に注目するのが正しいビジネス洞察眼と言えるでしょう。TOMORUBAの連載「Break Down AI」では、期待される【AI×○○】の実態を深堀りし、どのような共創が行われているかに迫ります。

今回は、ファッション・アパレル業界のAI活用にフォーカスします。ファッション・アパレルにまつわる仕事は生産や物流だけでなく、販売店舗やブランディング、メディアなど多岐にわたります。日々の生活に欠かせない要素だけに、市場は大きくデータも豊富でAI活用の余地も大きいファッション・アパレル分野ではどのような共創が行われているのでしょうか。

市場全体は10兆円で横ばい。一方で急激に拡大するファッションテックのシェア

ファッション・アパレル業界の市場規模は、バブル期の14兆円をピークに減少傾向が続き、2010年に10.1兆円となり底を打ちました。それ以降は10兆円のまま横ばいをキープしている状態です。

しかし、市場規模がピークだった1991年の供給量が20億点だったのに対し、ここ数年は40億点前後を推移しています。市場規模は減少したのに、供給量は2倍に増えたわけですから、衣料の購入単価が下がっていることがわかります。


出典:繊維産業の現状と経済産業省の取組

この傾向の原因は、ファストファッションの台頭などいくつか考えられますが、大きい要因は衣料販売のEC化があります。衣類・服飾雑貨等のEC市場は2018年に1.77兆円で、EC化率は約13%にのぼります。また、メルカリなどのフリマアプリにおける衣類・服飾雑貨等の市場規模は2018年時点で6000億円を超えています。


出典:繊維産業の現状と経済産業省の取組

これらのことから、ファッション・アパレル業界は急激にテクノロジー活用に向かっているのがわかります。

AI×ファッション・アパレルの共創事例

ここからは、ファッション・アパレル業界のAIを活用した共創事例を紹介していきます。

【ローランド・ベルガー×ABEJA】アパレル業界向けにAIを活用した「需要予測コンサルティングパッケージ」を共同開発

AIの社会実装を手がけるABEJAと経営コンサルティングを行うローランド・ベルガーは2020年10月、アパレルの需要予測におけるAI活用の浸透に向け、業務提携を行いました。

今回の共同開発によりアパレル業界の「作り過ぎ」「在庫過多」という業界課題を解決していきたい考えとのことです。具体的には、ローランド・ベルガーが現行MD業務の分析・課題抽出を行い、ABEJAがデータ分析と予測モデルの開発を行うことで、機械学習モデルを活用した「需要予測コンサルティングパッケージ」を提供します。ローランド・ベルガーが持つ経営コンサルティングの知見と、ABEJAが持つAI技術力をかけあわせ、業界全体の課題解決に繋がる価値創出を目指します。

参照記事:ローランド・ベルガー×ABEJA | アパレル業界向けにAIを活用した「需要予測コンサルティングパッケージ」を共同開発

【ヤフー×三越伊勢丹】ビッグデータとAIを活用し子育てママ向けのファッションアイテムを開発

ヤフーと三越伊勢丹は2019年9月、三越伊勢丹のECブランド「arm in arm」にて、Yahoo! JAPANのビッグデータとAIを活用し、子育て中の小柄な女性向けのロングスカートを開発しました。商品は「arm in arm」のECサイトにて発売を開始しています。

両社は、「Yahoo!検索」の検索キーワードや「Yahoo!知恵袋」の質問書き込みといったビッグデータを統計化した上でAI技術により解析し、「arm in arm」のターゲットでもある子育て中の女性の服装に関するトレンドや悩みを抽出しました。その結果、小柄な女性のロングスカートへの関心が高く、着こなしや自転車の利用、抱っこひもとの合わせ方、静電気などに悩んでいるという子育て中の女性のインサイトを得たとのこと。また三越伊勢丹は、得られたインサイトをもとに、子育て中の女性との座談会を行い、仮説の検証を進め、ロングスカートの開発につなげたといいます。

今後も両社は、同商品の反響を踏まえながら、ビッグデータを用いたアパレル商品のさらなる開発、ファッションとテクノロジーを掛け合わせた「ファッションテック」の推進に挑戦していく予定です。

参照記事:ヤフー×三越伊勢丹 | ビッグデータとAIを活用し子育てママ向けのファッションアイテムを開発、9月下旬より販売開始

【AOKI×AI Shift】「AI Messenger Chatbot」を「ORIHICA」のECサイトに導入し、有人チャット機能を活用したデジタル接客の強化

AI対話カンパニーのAI Shiftは2021年4月、AOKIが運営する次世代スーツショップ「ORIHICA」に、チャットボットサービス「AI Messenger Chatbot」の有人チャット機能を導入しました。

チャット機能を用いた「チャットスタイリングサービス」を導入することで、店舗スタイリストがユーザーの目的や希望に沿った商品を提案するなど、オンライン上でも店舗同様の接客体験を実現することができるというものです。

「チャットスタイリングサービス」を利用した顧客へのアンケート調査では、91%が「悩みは解決した」と回答したほか、有人チャットによるオンライン接客の満足度は97%、再利用意向率は97%という結果が出ています。

参照記事:チャットボットサービス「AI Messenger Chatbot」、株式会社AOKIが運営する「ORIHICA」のECサイトに導入 有人チャット機能を活用したデジタル接客の強化で顧客満足度向上の実現へ

【DROBE×ユナイテッドアローズ】DROBEの「スタイリング AI」にユナイテッドアローズが参画

DROBEが展開するAIを活用したパーソナルスタイリングサービス「DROBE(ドローブ)」に、2021年4月よりユナイテッドアローズが参画しました。

「DROBE」は、ファッション誌や芸能人のスタイリング、店頭での販売などを経験したプロのスタイリストとDROBE独自の「スタイリング AI」がユーザーの嗜好や体型、予算に応じた商品を協働でスタイリングし、セレクトした商品を定期的に届けるパーソナルスタイリングサービスです。

今回の参画により、DROBEで取り扱う既存の19社132ブランドに加え、ユナイテッドアローズが運営する「UNITED ARROWS green label relaxing」の各種アイテムが配送可能となります。

参照記事:パーソナルスタイリングサービスDROBEに株式会社ユナイテッドアローズが参画

【編集後記】パーソナライズが加速するファッション・アパレル業界

紹介した共創事例はtoBもtoCもありましたが、いずれの事例も適切に顧客に商品を届けるための最適化をAIがサポートしている側面があります。冒頭でも述べたように、近年では供給量が増加している傾向がありますが、AIの導入が進めば需要を的確に捉えて、顧客にパーソナライズされた形でデリバリーされる形になりそうです。

そうなれば生産の無駄が減るので供給量は減少して、顧客満足度も上がっていくでしょう。ファッション・アパレル業界も、家電市場のように「脱・大量生産」の波が来るのかもしれません。

TOMORUBA編集部


シリーズ

Break Down AI

多くのビジネスパーソンが注目するAIビジネスですが、AIには多用に細分化された用途があります。ですから「どの領域のAI活用がアツいか?」に注目するのが正しいビジネス洞察眼と言えるでしょう。「Break Down AI」では、期待される【AI×○○】の実態に迫り、どのような共創が行われているかに迫ります。