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【連載/4コマ漫画コラム(19)】スタートアップとの話し方 ①  こんなところは注意!

【連載/4コマ漫画コラム(19)】スタートアップとの話し方 ① こんなところは注意!

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バカみたいに、でもバカはみないように

前回の「大企業との話し方①」「大企業との話し方②」に続いて、今回・次回は立場を変えて「スタートアップ(ベンチャー)との話し方」です。オープンイノベーションに慣れていない大企業の方がスタートアップと話す時にはどうすればいいか、そのポイントをお話しします。

これまでこのコラムでは、大企業の方はすぐに「自己防衛」に走ってしまう傾向があるので、「まずは自分自身がオープンに!」というようなメッセージを送ってきました(第2回コラムなど参照)。いかに会社の立場などを脱ぎ捨てて、かつ、楽し気にオープンな雰囲気を醸し出してスタートアップと話をするかがとても大事だと言ってきました。

じゃ、「バカみたいにやればいいの?」かと言うと、「バカみたい」は大事ですが、「バカ」はダメです。今回書くことは、スタートアップに対しての話だけには限りませんが、「押さえるところは押さえないと、『バカ』を見る」という、これまで言ってきたこととちょっと違う感じのことを書くことにします。

目の前にいる人がいい人でも

当たり前ですが、スタートアップは不安定です。すごく成長していると思っていたら、ちょっとしたことで躓いて倒産してしまうこともよくあります。倒産してしまえば、それはそれで諦めもつくのですが、それ以上に理解しておかなければならないことは、「経営陣が入れ替わる」ことが(割と簡単に)起こるということです。それは、スタートアップの経営状況が悪くなってくると、投資家が現経営陣を追い出して、新たな経営陣を送り込むというようなことがよく行われます。当然、経営の方針や、外部(例えば大企業)との窓口担当者なども変わってしまいます。

せっかく、あるスタートアップと志を共有し、具体的な開発プロジェクトなどを進めていても、ある日突然、これまで一緒にやってきたスタートアップの人から「私、クビになりました。すいません」というような話がやってくる可能性があります。そして、後任者からは、それまでの契約の不備などの指摘をされて、訴訟になったりして、「戦友」だったはずのスタートアップがいつの間にか「戦う相手」に変わってしまうかもしれません。

目の前にいるいつも仲良くやっている相手が突然いなくなるかも……というケースの想定を忘れないようにしなければなりません。

契約は契約、そして変な約束はしない

スタートアップの方が突然いなくなることを考えると、「契約」が大事になります。

仲が良くなると、文章化しないまま、「なんとなく」プロジェクトを進めてしまいがちですが、それは残念ながら危ないやり方です。訴訟などになった場合は、「文章化された契約」だけが頼りになります。「でも、ガチガチの契約書を作ろうなんて言いだすと、これまでのせっかくのいい関係が壊れちゃうかも」と心配する気持ちは分かります。決して、不愛想に&強面に「『契約が必要だ』と言え」と言っているわけではありません。いい関係が築け、本当の信頼まで行けば、契約の必要性も理解してくれます。

加えて、気をつけなければならないのは、「変な約束」をしないことです。契約書に書かなくても、ホワイトボードに書いたり、極端な場合は口頭で言ったりしてもダメです(最近は録音をされていることもありますので)。例えば、「事業化になった場合の責任の所在も決まっていない」ような事業が始まるよりもまだだいぶ前の段階にも関わらず、勢いで利益配分やライセンス料の具体的な数字を言ったりすると、それを言質に取られ、事業化の時に大きな足かせになってしまうケースもあります。

大企業には生息していないタイプの人も

大会社の人はそれなりの教育や監視を日々無意識のうちに受けているので、完全なウソを平気で言う人は殆どいません(「殆ど」ですが)。特に技術者は真面目な傾向が強いので、ウソは言わないのが普通です。

ところが、スタートアップの中には、平気でウソを言う人がたまに(本当にたまに)いることは覚悟しておきましょう。特に技術が全くできてもいないのに、「できた」と断言するようなケースがあります。恐らく、その技術内容を小さなスタートアップの中で分かっている人が他にはいないので、ウソを平気で言っても大丈夫だというようなこともあるのでしょう。また、「なんとか価値を分かってもらいたい」という気持ちが勇み足を生み出しているのかもしれません。対策としては、「技術」の話であれば、「技術自身はウソをつかない」ので、ちゃんと自分の会社で評価したり再現実験をすればいいのです。しかし、そういう人に限って「大丈夫だ!私を信じないのか!」とかの脅しモードに入っちゃったりするかもしれませんが、そこはニコニコしながら「だったら、大丈夫ですね。ちゃんとこちらでも評価してみますね」と乗り越えましょう。

でもね……

今回は「注意事項」みたいなことを書きました。その多くは私の実体験や失敗から来ています。でも、私の性格から言うと、こういうことを書くのはどうも気持ちが悪いです。「おかしなことになってバカを見るのを避けるために、注意深くできるだけ保守的にやる」なんてことを基本方針にしてしまうと、その先には「結局、スタートアップなんかと付き合わない方がいい」という結論に簡単に至ってしまう気がします。

「バカみたって、いいじゃん!」って「バカみたい」に多少ケガをしても、笑いながら前進していくのが……「好き」です(告白♡)


■漫画・コラム/瀬川 秀樹

32年半リコーで勤めた後、新規事業のコンサルティングや若手育成などを行うCreable(クリエイブル)を設立。新エネルギーや技術開発を推進する国立研究開発法人「NEDO」などでメンターやゲストスピーカーを務めるなど、オープンイノベーションの先駆的存在として知られる。

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