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「しごと」に力点を置き、手堅いオープンイノベーション施策を仕掛ける熊本市

「しごと」に力点を置き、手堅いオープンイノベーション施策を仕掛ける熊本市

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九州における政令指定都市は福岡市、北九州市、そして熊本市の3つがあります。また、毎年森ビル系シンクタンクの森記念財団都市戦略研究所が発表している経済規模や文化度などを都市力として総合的にまとめた「日本の都市特性評価」で、熊本市は2019年度の調査で22位となっており、2位の福岡市、17位の北九州市についで九州勢では三番手につけています。 

これらのことから、熊本市は九州ではもちろん全国的に見ても高いプレゼンスを持つ市であることがわかります。2016年には熊本地震に見舞われたものの、市の長期ビジョンである「熊本市しごと・ひと・まち創生総合戦略」を着実に推進しています。

自治体のオープンイノベーション事情を解説する「CLOSEUP OI」。今回は、新産業の創出やオープンイノベーションにも積極的な熊本市の取り組みに迫っていきます。

参照ページ:日本の都市特性評価2019

AI、オープンイノベーションなどの文言が追記された「熊本市しごと・ひと・まち創生総合戦略」

熊本市の長期ビジョンである「熊本市しごと・ひと・まち創生総合戦略」は2017年からスタートし、現在は2020年〜2023年を期間とした第2期が推進されています。

基本的な方針は、減少傾向にある人口を維持するために“「しごと」に力点を置いた地方創生”を軸にするもので、安定した雇用を創出することで人口の自然減・社会減を抑制します。

第2期では、第1期で想定していなかった熊本地震による影響を加味して再構築されているのが特徴ですが、それに加えてリーディングプロジェクトとして追加された「創業支援と地場企業の強化によるくまもと創生」の中で以下のような文言が追記されています。

AIなどの先進技術が社会構造を大きく変化させていく中で、新たな技術に対応できる人材やイノベーションを生み出すためのビジネス交流などが求められています

このことから、産業面においてテクノロジーを軸に据えたオープンイノベーションを加速させることが明記されているのです。

参照ページ:第2期 「熊本市しごと・ひと・まち創生総合戦略」

神戸市のスタートアップ支援スキームを横展開した「URBAN INNOVATION KUMAMOTO」

熊本市では、スタートアップと行政が協働で地域課題の解決に取り組む枠組み「URBAN INNOVATION KUMAMOTO」を推進しています。この枠組みはもともと神戸市のスタートアップ支援の枠組みとして活用されていたものですが、スキームそのものを他の自治体でも横展開できるように「URBAN INNOVATION JAPAN(UIJ)」プロジェクトが立ち上がり、そのスキームを熊本市にも適用しているのです。


UIJの特徴は行政職員とスタートアップが協働することで地域課題を解決することです。具体的にはアナログ業務のDX、コミュニティづくり、実証実験サポートなどをテクノロジーを活用して支援してもらえます。

参照ページ:URBAN INNOVATION KUMAMOTO

URBAN INNOVATION KUMAMOTO2020年下期の採択企業

URBAN INNOVATION KUMAMOTOの2020年下期に採択された2企業を紹介します。

【Civichat】自分にあった公共制度をLINEで届けるサービス『Civichat』

募集テーマ「震災の経験を次代へつなぐ スマホで検索!被災者支援制度の案内ツールの開発」で採択されたのは、自分にあった公共制度をLINEで届けるサービス『Civichat』でした。

Civichatのコア機能であるLINEで公共制度を受け取る機能を利用し、熊本地震の被災者支援制度の案内ツールを開発し、検索性、利便性の向上を目指すというものです。2021年12月上旬から2月下旬にかけて、スタートアップと市職員との協働実験、試行導入及び実証実験を行い、3月にその成果報告を行う予定とのことです。

参照ページ:自分にあった公共制度をLINEで届けるサービス、「Civichat」が12月から熊本市との実証実験を開始

【ワイズ・リーディング】地域活動に注力するためのコミュニティセンターのデジタル化

募集テーマ「誰一人置いていかない!地域コミセンのデジタル化で、地域活動を活性化したい!」で採択されたのはワイズ・リーディングの提案した「施設のオンライン予約システムを皮切りにコミセンのデジタル化を進め、コミセンが地域活動に注力出来るようにする。」でした。

ワイズ・リーディングはAI開発や医療現場のDXなどを手がける企業で、URBAN INNOVATION KUMAMOTOでの提案内容に関する具体的な進捗は公開されていませんが、3月に行われたオンラインでの成果共有会で進捗が報告されています。

参照ページ:【熊本市】スタートアップとの協働実験に関する成果報告会を開催します

徹底して“本質的な”マッチングイベント『Kumamoto City Pitch』

熊本市が主催するマッチングイベント『Kumamoto City Pitch』は2021年度はオンラインでの開催になったものの、130名の申し込みがあり登壇者もあわせると総勢150名が参加する規模となっています。

ベンチャー企業がピッチを行い、参加している金融機関やベンチャーキャピタル、事業会社などとのマッチングを促進する、ピッチイベントとしてはオーソドックスな立て付けです。

ユニークなのは運営の立て付けで、主催は熊本市になっているものの、イベントのミッションは「熊本県内で優れたビジネスモデルや独自技術を有し、イノベーションを創出する意欲のある企業を応援する」となっており、熊本市だけでなく熊本県全体の繁栄を目標にしています。さらに、運営事務局は福岡市に設置しているなど、本質を追求しています。

参照ページ:Kumamoto City Pitch/熊本発の イノベーション創出プロジェクト

【編集後記】「仕事」に注力して人口減を食い止める

熊本市はソツのないオープンイノベーション施策を実施している印象があります。その根っこには、やはり長期ビジョンでも触れたように人口減を食い止めるために「仕事」に注力して産業振興を推進していることがあると思います。

転入を増やすために移住促進キャンペーンをしても、結局は安定して働くことができなければ良い効果は生まれません。決して冒険的な施策は打たずに神戸市で実績のある「URBAN INNOVATION JAPAN」のスキームを輸入していることからも、その手堅さが窺えます。施策の派手さではなく、徹底して仕事を生み出すための成果を求めているのは好感が持てますね。

TOMORUBA編集部

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