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#PEOPLE | hacomono ・蓮田氏――"フィットネスクラブ×テクノロジーの"仕掛け人が語る「選ばれるサービス」の作り方

#PEOPLE | hacomono ・蓮田氏――"フィットネスクラブ×テクノロジーの"仕掛け人が語る「選ばれるサービス」の作り方

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新型コロナウイルスの影響で、苦境に立たされているフィットネス業界。活路を見出すためのデジタル化が早急に求められている。そのような中、業界の多くの企業が注目を集めるのが店舗向けの予約・決済システムを展開する「hacomono」だ。

代表の蓮田健一(はすだけんいち)氏は、業界に先んじてオンライン予約やデジタル決済に対応したことでも知られている。

数々の店舗ビジネスのデジタル化をプロデュースしてきた蓮田氏。過去にも多くの新規事業を成功させてきた「勝ちパターン」とはいったいなんだろうか。ビジネスシーンで注目される人物にフォーカスするシリーズ企画「#PEOPLE」では今回、蓮田氏にインタビューを実施。取材を通して見えてきた新規事業開発のTipsをお届けする。

25歳で事業立ち上げ。失敗から学んだ教訓とは

初めて新規事業に携わった経験について教えてください。

蓮田氏 : 25歳の時、当時働いていた株式会社ソフトクリエイト(その後、株式会社エイトレッドとして分社化)で、ワークフロー製品 「X-point」というサービスを立ち上げました。ワークフローはグループウェアシステムの1機能でしかありませんが、当時はそこには大きな課題が眠っていたのです。

例えばワークフローで申請にかかる業務をデジタル化しても、人事異動や入退社で組織が変われば決裁する相手も変わります。当時は組織が変わる度に手動で修正していたため、ある程度以上の規模の組織では対応しきれませんでした。

「X-point」は人事部や総務部のシステムと連携し、組織の変化にも対応できるワークフローシステムとして開発しました。

ー事業を立ち上げる上でのポイントはありますか。

蓮田氏 : 特定の企業の受託開発として作りました。競合となるシステムを導入していた企業に、課題をヒアリングしながら作っていったのです。その会社でしか使えなければ意味がないのでバランスが重要ですが、課題に即したプロダクトを作れました。

使いやすいプロダクトだったら、すぐにヒットしそうですね。

蓮田氏 : いえ、実はローンチしてもしばらくは拡大しませんでした。2、3年かけて導入した企業は10社程度だった記憶があります。当時はまだワークフローの市場ができあがったばかりでした。どんな売り方が適当なのか試行錯誤の連続でしたね。

その経験から、ビジネスはいかにタイミングが重要なのか痛感しました。ワークフローの市場が伸びたのは、その後アメリカ型の会計基準(SOX法)が上陸したのがきっかけです。優れたプロダクトを作るだけでなく、社会の波を読まなければ成功できないと学べました。

ーそれにしても、若い頃に事業立ち上げに携われたのはいい経験ですね。

蓮田氏 : 当時の上司が若い人にチャンスをくれる方だったので、上司のおかげですね。私も入社前から経営者になりたい、事業を作ってみたいと思っていたので、チャンスには積極的でした。

エイトレッドではチャンスも失敗も、いい経験ができましたね。

ー 一番の失敗について教えてください。

蓮田氏 : 2つ目に立ち上げた「AgileWorks」というプロダクトの開発した時のことです。外部の人間をプロダクトオーナーに招聘し、開発メンバーも20人近く揃えた会社としても大きな投資をしたプロジェクトでした。

ローンチ前から大手の企業2社とも契約でき、納品日も決まって後は開発した製品を待つだけの状態でした。しかし、納品まであと3ヶ月という時期になっても一向に製品が完成する気配がなかったのです。結局チームを再編成し、1から作り直すことになり、半年間は家に帰れない日が続きました。

なぜそのような事態が起きたのでしょうか。

蓮田氏 : プロダクトオーナーに開発を任せて、途中で成果を確認していなかったからです。今でこそMVP(Minimum Viable Product:実用最小限の製品)を作るのが主流ですが、当時はいきなり完成形のプロダクトを作ることしか考えていませんでした。

その時の教訓から、今の会社でも2週間というスプリント(開発期間)を区切って、小さな目標を決めながら成果物を確認するようにしています。評論や紙ベースでの設計書ではなく、具体的アウトプットを軸としたプロダクト開発スタイルを重要視しています。


▲株式会社hacomono 代表取締役 蓮田健一氏

信頼で繋がる商売を教えてくれた父の会社での経験

次に携わった事業について教えてください。

蓮田氏 : 2011年の東日本大震災で傾いた家業を継ぐことにしました。父親の電気工事の会社が仕事がなくなったので、母親がやっていた介護の仕事をもとに、介護タクシーの事業を立ち上げたのです。

私の実家は最寄りの駅からバスで20分かかり、交通弱者にとっては不便な街です。お年寄りも多い地区だったので、病院に通院するにしても、買い物に行くにも大変でした。そこで訪問介護とタクシーをセットで提供し始めました。

介護タクシーは収益構造にもメリットがあります。介護事業は介護保険の制度を使うため、利益が出しづらい仕組みになっています。タクシーをセットにすることで、介護保険以外の売上を上げることで収益性を高めたのです。

ー介護タクシーは成功したのでしょうか。

蓮田氏 : 最終的には地域で一番大きな事業者にまで成長しました。私が継いだ時は借金も返せず返済を止めてもらっていたのですが、1年半後には事業も軌道にのって返済できるようになりましたね。

タクシーはリースできたので、初期投資はそこまでかかりませんし、訪問介護だけでなくレンタル事業も展開しました。当時で10台以上のタクシーを走らせていたのですが、各車にiPhoneを搭載することで本社が位置を把握し、効率的に配車できるようにしたのです。

ー立派な親孝行をしたのですね。

蓮田氏 : いえ、資金を入れたりはしましたが、父の会社からは学ぶことばかりで、何かをしてあげたという気はありません。当時学んだことは、私の経営観に大きく影響しました。

父の会社は挨拶や掃除をしっかりする会社で、自分たちの会社だけでなく近隣の掃除までしていました。地域との繋がりを大事にしていたので、近く農家からは野菜をもらうことも珍しくありません。昼食は社員といっしょにとり、まるで家族のような付き合いをしていました。

その前のIT企業では挨拶もろくにせず、仕事も黙々としていました。信頼で商売をしていた父の会社での経験は、私に多くのこと学ばせてくれました。その影響から稲盛和夫さんや松下幸之助さんの経営哲学を学ぶようになり、今の経営にも大きく活きています。

紙のカルテに予約表。レガシーなエステをDX

お父さんの会社を立て直した後について教えてください。

蓮田氏 : 事業が軌道にのった会社を父親に返し、私は自分の得意なIT領域で再びビジネスをすることにしました。ただし、プロダクトが決まっていなかったので、まずは受託開発で細々と始めることにしました。父の会社で資金繰りが厳しいことを経験したので、プロダクトが決まるまでは借り入れや資金調達をする気になれなかったのです。

ーどのような仕事をしていたのですか。

蓮田氏 : 最初のクライアントは脱毛サロンでした。当時はまだ6店舗しかなく、運営もレガシーな状態でした。お客さんのカルテも紙で管理していたため、保管のために部屋が一つ埋まり、お客さんもカルテを作った店舗にしか通えません。

加えて予約や日報も全て紙で管理していたのでミスも多発していました。店舗にはアナログな管理が数多く残っていたため、デジタル化による業務改善を求められたのです。

ーどのように改善したのか教えてください。

蓮田氏 : まずはカルテをデジタル化し、クラウドで管理できるようにしました。どの店でもカルテを確認できるので、お客さんはどの店でも施術を受けられます。もちろん、カルテの保管のための部屋も空きました。

予約管理やワークフローのシステムも作り、店舗の業務を全てデジタル化したのです。今でいうDXを実現したことになります。

「1000人中3人に選ばれるフィットネス」を目指した理由とは

ーエステサロンの仕事を終えた後について教えてください。

蓮田氏 : エステサロンだけでなく、多店舗のDXを複数社サポートしました。

その後に転機となったのが、フィットネス事業の立ち上げに関わったことです。システムだけでなくサービス作りからブランディングまで手伝うことになりました。

ーどのようなコンセプトで始めたのでしょうか。

蓮田氏 : 当初考えていたのは”1,000人中3人をターゲットにしたサービス”です。

当時の日本のスポーツジムはコモディティ化しており、どこも似たような店舗でオリジナリティのない状態でした。「選ぶ理由のあるブランド」を作るために、誰にでも使われるサービスではなく、一部の人にしか響かないけど、その一部から圧倒的に愛されるような尖ったサービスを考える必要があったのです。

ー実際にオープンしていかがでしたか。

蓮田氏 : ブランディングは格好いいものの、実際にはプログラムにエッジが足りず、接客もコモディティ化していました。差別化を図るため、プログラムをよりハードにし、クロージング営業をあえて無くすなど、業界の常識とは真逆の施策を打ち出したのです。体験した人が「こんなの無理」と思うようなハードなプログラムにして、一部のついてこれる方だけが入会するようなジムを目指しました。

受託開発の経験が「選ばれるプロダクト」の下支えに

ーhacomonoを開発するに至った経緯を教えてください。

蓮田氏 : リアル店舗×DXの実績が業界で話題になり、その後店舗のブランディングやデジタル化の相談が増えました。様々な店舗の受託開発をしていたのですが、このままではスケーラビリティに限界があると思いプロダクト開発に乗り出しました。

特定の店舗や業界に特化しないで、店舗ビジネスなら汎用的に使えるように作り直したのです。


ープロダクトの評判はいかがでしたか。

蓮田氏 : 展示会でデモをしたところ、多くの企業から好評を頂き導入していただきました。プロダクトが開発してからは、順調に導入者数を伸ばしています。

その理由は、それまで長らく続けてきた受託開発にあります。プロダクトを作るまでに様々な店舗のDXを支援してきたので、「使いやすいプロダクト」を十分に検証できたのです。これから起業する方は、まずは受託開発から始めるのもおすすめですね。

店舗ビジネスはデジタル化が遅れているとのことですが、スムーズに導入してもらうための工夫があれば教えてください。

蓮田氏 : 予想以上にちゃんとシステムを使ってもらっているのですが、その理由は2つあると思っています。

一つは成功事例です。代表例があるので「システムを入れれば、これくらい業務が効率化される」とイメージしやすくなります。まずは大きな事例を作ることが重要です。

もう一つは簡単さを強調しないことです。「使い慣れるまで3ヶ月は大変だけど、1年後にはこんなに仕事が楽になるよ」と伝えています。最初から大変だと思えばがんばれますし、その先にいい未来が見えることで、多くの店舗が使い切ってくれています。

加えてコロナも後押ししました。店舗ビジネスの多くが厳しい戦いを強いられ、システムを導入しなければ生き残れないと肌で感じているようです。コロナ以前にくらべて問い合わせが5倍以上に増えています。

ー最後にこれからのビジョンについて教えてください。

蓮田氏 : 数年以内に実現したいのが、公共施設のDXです。県や市が運営している運動施設の多くは、未だに手書きの管理をしているため非効率が眠っています。デジタル化によってより使いやすい施設にできればと思います。

地域によっては市民に割引していることもあるので、マイナンバーとAPI連携して自動で割引できるようなシステムにしたいですね。

さらにその先には、個人でやっているような小さなエステや床屋などにも、サービスを使ってもらえるようにしていきたいです。お客さん自身がスマホで予約し、事前決済を済ましておけば、店側は接客とサービスに集中できます。事前に顧客情報がわかればお客さんに合わせたサービスもできるはずです。

いわゆる狭域ビジネスを盛り上げることで、日本を元気にしていきたいですね。

(取材・文:鈴木光平)

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  • 眞田幸剛

    眞田幸剛

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