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”人事部のためのHRテック”から”社員・イノベーションのためのHRテック”へーーHRトップランナーが語る、「はたらく」に起こり始めた変化と未来像

”人事部のためのHRテック”から”社員・イノベーションのためのHRテック”へーーHRトップランナーが語る、「はたらく」に起こり始めた変化と未来像

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2月26日に開催されたオープンイノベーションカンファレンス「JAPAN OPEN INNOVATION FES 2020→21」のなかから、PLATINUM SPONSORであるパーソルホールディングスによるスペシャルセッション「HRの持つポテンシャル - HRtechnology × イノベーション戦略 -」のセッションの模様をお届けする。

同セッションに参加したのは、人材紹介や人材派遣、転職メディア運営、ダイレクトリクルーティング、アウトソーシングなど、HRの幅広い領域で国内市場をリードしてきたパーソルホールディングスの高橋氏、PERSOL INNOVATION FUNDの加藤氏、VISITS Technologiesの松本氏、エクサウィザーズの石山氏の4名だ。

日本のHRマーケットを牽引し、イノベーションの最前線に立つプレイヤーたちは、急速に変わりつつある日本のHRを取り巻く環境をどのように捉えているのだろうか?

――2020年以降のコロナ禍において新たに浮かび上がってきた「人・はたらく」の現状課題を踏まえ、それらの課題解決のために登場した最先端のHRテックの動向、企業がHRテックを導入する際に見落としてはならないポイントなど、様々な論点から展開された熱量の高いディスカッションの模様を詳しく紹介していく。

<登壇者>


▼写真左→右

・パーソルホールディングス株式会社 取締役副社長執行役員 兼 パーソルイノベーション株式会社 代表取締役社長 高橋広敏氏

・PERSOL INNOVATION FUND合同会社 代表パートナー 加藤丈幸氏

・VISITS Technologies株式会社 CEO/Founder 松本勝氏

・株式会社エクサウィザーズ 代表取締役社長 石山洸氏

・モデレーター:パーソルイノベーション株式会社 インキュベーション推進室 室長 森谷元氏

不自由なはずのリモートワークが逆説的に生み出したHRテックの可能性

本セッションにおいてモデレーターを務めたのはパーソルイノベーションの森谷元氏だ。――冒頭、森谷氏はコロナ禍において大きく変化した職場環境や業界によって濃淡が出始めている雇用の状況、リモートワークの拡大によって新たに生じているコミュニケーション不全の問題などについて提示し、現在のような状況で「HRテックは働く現場に対して何ができるのか」について、まずは石山氏、松本氏に意見を求めた。


「AIを用いた社会課題解決を通じて、幸せな社会を実現する」というミッションのもと、介護・医療・HR・ロボット・金融・カメラなど、あらゆる領域でAIプロダクトの開発と実用化に取り組む株式会社エクサウィザーズの代表である石山氏は、「リモートワークの拡大によって、今まではデータ化することができなかった働く人たち同士のコミュニケーションを、動画としてデータ化できるようになったことは歓迎すべき変化である」と説明した。

これにより「上司と部下の1on1動画などを分析することで、これまでは認識できなかったようなマネジメントの改善点を発見することも可能になる」という。さらに、「リモートワークで得られたデータを分析することで、働く人々のコミュニケーションのさらなる活性化・最適化に有効活用できる可能性がある」と語った。


VISITS Technologiesの松本氏は、リモートワークによって社員に対する企業側のマネジメントに遠心力が掛かることで社員のエンゲージメントが低下してしまう問題を取り上げ、「コロナ禍以前は共通言語化の必要がなかったビジョンやミッションなどについて、改めて共通言語化して擦り合わせていく必要がある」との見解を示した。

VISITS Technologiesはコンセンサスインテリジェンス(CI)と呼ばれる合意形成技術を用いたプロダクトを開発しているが、同社のアルゴリズムを活用することで、「これまで個々人で受け取り方に差異があった会社のビジョンやミッション、評価基準項目などを明確な形で共通言語化・形式知化できるようになるため、リモートワーク下の状況でも社員のエンゲージメントを高めるためのツールとして有効である」と説明。

ただし、「人間は同じ時間や空間を共有することでエンゲージメントが高まっていく性質を持つため、アフターコロナではこのようなツールと生身でのコミュニケーションの合わせ技でマネジメントの質を上げていくことが重要である」と補足した。


”人事部のためのHRテック”から”社員・イノベーションのためのHRテック”へ

リモートワーク環境における社員のマネジメントやエンゲージメントに関するHRテックについての意見を述べた石山氏、松本氏のディスカッションを受け、森谷氏は加藤氏と高橋氏に対し、昨今のHRテックのトレンドについて質問した。

加藤氏はパーソルグループのCVCであるPERSOL INNOVATION FUNDの代表パートナーであり、国内外のHRテック、フューチャー・オブ・ワーク領域の企業に40社以上の出資を実行している。高橋氏は長年日本のHR業界を牽引し続けてきたパーソルHDの副社長であり、グループ内のイノベーション組織であるパーソルイノベーションの代表者でもある。

加藤氏は、「HRテックには人事部門の効率化を図る領域と、社員全体のパフォーマンスをあげる領域の二種類に大別できる」と解説。「コロナ禍以前は前者のHRテックが盛り上がっていたが、会社が社員とのコミュニケーションに関して課題を持ち始めているコロナ禍においては、後者のHRテックが一気に注目を集め始めている」と現状を分析した。

高橋氏も2020年以降のHRテックの潮流に急激な変化が現れていると加藤氏の意見に同意し、石山氏と松本氏が語ったように、「社員の考えていることや社員の抱いている感情に対して何らかのアプローチを行うようなHRテックが増えていることは間違いない」と話す。

その上で「人材会社である自分たちが率先して新しいHRテックをテストし、有効性を検証しながらお客様にお勧めしていきたい」と付け加えた。


企業はどのような観点でシステムやツールを選択するべきか

続いてディスカッションは、HRに関する様々なテクノロジーやツールが溢れている昨今、企業の管理職や人事部門サイドは、どのようにして自社に最適なツールを選択するべきかという話題に移った。

「人間が一人ひとり違うように、企業も一社一社に別々の個性がある。コストや世間の評判だけを基準にツールを選んでも、まったく機能しない可能性がある」と提言したのは松本氏だ。

「ツールを選ぶ際にも会社のビジョンなど、会社としてどうありたいのか、社員とどのような関係性を築きたいのかを考えた上で改善したい課題を明確にし、そこで初めて候補に上がったツールを検討する議論に入るべきだ」と語る。

また、新たなシステムやツールを現場に導入する際は、経営者や管理職がHowやWhatではなく、Why(なぜ導入するのか)を現場の社員に対して丁寧に説明する必要がある。「新しいシステムやツールは一時的に現場の業務負荷を上げてしまうため、導入の目的や意図を示し、現場の社員たちの働き方や業務がどのように良くなるのかをイメージさせることが大切だ」と訴えた。

高橋氏も松本氏の意見に同意しつつ、「新しいHRテックやツールが次々に登場すると、個人や企業も”自分も早く使わなければ”というバイアスが掛かりがちになるが、焦ることなく時間をかけて検討し、腹落ちしたものだけを導入すべきだ」とした。

さらに、「個人の方々が好き嫌いでツールを選んでいいように、企業も好き嫌いで選んで構わないと思うが、企業の好き嫌いとは、その企業のビジョンやカルチャー、フィロソフィーとフィットするか否かであり、プロダクトの設計思想が自社のビジョンやカルチャーと合致していることを確認して導入することが必要になるだろう」と語った。


一方、加藤氏は「リモートワーク後のHRテックや人事関連施策はトリッキーなものが増えている」と話す。たとえば入社前の内定者に対するエンゲージメント向上施策と言えば、コロナ禍以前はリアルな飲み会やイベント開催が一般的だったが、コロナ禍の現在ではZoomなどを活用して内定者同士で人狼ゲームを行うなど、一昔前では考えられなかったような施策も展開されているという。

そのようなトリッキーな施策を展開する上で重要なのは、「”今、何のためにこれをやるのか”を参加者に対して丁寧に説明することであり、丁寧な説明がなされたか否かによって施策の効果は大きく変化するはずだ」と持論を述べた。


HRテックのサービス化に必要なものとは

加藤氏の発言を受け、ディスカッションは「HRテックのサービス化・ビジネス化」に話題が移った。加藤氏は先ほどのオンライン対面式の人狼ゲームが既にサービス化されていることに触れ、「新たなHRテックのサービス化においては、”内定者フォローという領域で非常に有用である”など、可能な限り具体的なユースケースを提案することが大切になる」と話す。

松本氏は、サービスデザインに関しては「テクノロジーやトレンド先行ではなく、自身の原体験や長年にわたる課題観察から導き出されたWillや志が必要であり、そのようなビジョンから逆算してサービスを考える必要がある」とした。松本氏はゴールドマンサックスのトレーダー時代、それまで人間が行っていたトレーディングがAIによって自動化されていく様子を目の当たりにし、人間に残された価値について真剣に考えたという。

その結果、ビジョンを描くことは人間にしかできないことに思い当たり、人間の創造性の可視化・スコアリングを行うべく、海外で生まれたデザイン思考を取り入れた「デザイン思考テスト」のサービス化につなげていった。とはいえ、サービス化への道のりは平坦なものではなく、2017年に特許を取得するまでに5年ほどの歳月が費やされており、松本氏は「5年間、数式ばかり書いていた」と当時の苦労を語った。


人事部門がイノベーションの必要性を理解し始めた理由

モデレーターの森谷氏は、松本氏のVISITS Technologiesが展開する「デザイン思考テスト」に関して、サービス立ち上げ当初と現在とでは、顧客となる企業の反応はどのように変化しているのかについて質問した。

松本氏によれば、「昨年頃から大きく風向きが変わり始め、一昨年は10%程度だった商談率が現在では50%程度に向上している」とのことだ。その理由について松本氏は、「ここ2、3年で多くの企業トップが中期経営計画書などに”イノベーションを起こす”という言葉を明確に入れるようになり、そのような考え方がようやく人事部門に浸透し始めたことが大きいのではないか」と現状を分析した。

経営層としては、自分で課題を発見して動き出せる人材を採用・育成しなければ会社の未来はないと考えており、人事サイドも社員のクリエイティビティをスコアリングできる「デザイン思考テスト」のようなサービスの価値に気づき始めたのだという。

石山氏は、このような企業の経営層や人事部門の意識の変化について、「あらゆる業界でディスラプトが発生していることで、自分たちの会社のXデーをリアルにイメージできる企業が増えてきたことが大きい」と分析した。

また、多くの企業がグローバルな産業競争力をどのように上げていくのかという課題に直面していることに加え、「コロナ禍で”一気に変化しなければ”というイノベーションの機運がさらに高まったことは間違いないだろう」と語った。

一方のテクノロジーサイドでも、「次々に生まれる新しいテクノロジー同士の結合パターンが飛躍的に増えていることで、さらにディスラプトが活発化する可能性があり、そのような複合的な状況こそが、多くの企業が危機感を持つ理由につながっている」と説明した。


取材後記

ディスカッション終了後にモデレーターの森谷氏が語ったように、どれだけテクノロジーが飛躍的に進化し、HRテックが隆盛を極めたとしても、結局は「人・はたらく」に関する課題を見つめ続けていく領域がHRであり、これまでの様々な取り組みの延長線上にHRの未来があることは間違いないだろう。

一方で誰もが日々、当たり前のように行っている「はたらく」という行為だからこそ、どれだけ楽しくできるか、簡単にできるか、ポジティブにできるかなど、あらゆるレイヤーにイノベーションの可能性が残されている。多くの人々が「はたらいて、笑おう。」を実現できるようなHRテックが次々に登場する未来に期待したい。

(編集:眞田幸剛、取材・文:佐藤直己、撮影:齊木恵太)

▼パーソルホールディングスのJOIF前特別インタビュー記事はこちら▼


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  • 田上 知美

    田上 知美

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  • 眞田幸剛

    眞田幸剛

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