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東京集中から地方へー全国2500社を超える大学発ベンチャー。注目を集める「大学発ベンチャー表彰」に選ばれた6社とは?

東京集中から地方へー全国2500社を超える大学発ベンチャー。注目を集める「大学発ベンチャー表彰」に選ばれた6社とは?

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大企業やベンチャーの連携によるオープンイノベーションが加速する中、独自性の高い技術を有した大学発ベンチャーへの関心も高まってきている。事実、多くの大学が集積する東京だけではなく、各地方でも大学発ベンチャーが誕生しており、その裾野は広がってきていると言えるだろう。

今年5月に経済産業省から発表された「令和元年度大学発ベンチャー実態等調査」によれば、2019年度調査において存在が確認された大学発ベンチャーは2,566社。2018年度で確認された2,278社から288社増加し、過去最高の伸びを記録している。


さらに、以下図のように東京大学発ベンチャーが最も多いが、京都大、大阪大、東北大、九州大、筑波大、名古屋大などのベンチャーも増加している。


「大学発ベンチャー表彰2020」の受賞者とは?

このように大学発ベンチャーが注目を集める中、去る9月28日に「大学発ベンチャー表彰2020」の受賞者が発表された。

JST(科学技術振興機構)とNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が運営する「大学発ベンチャー表彰」は2014年度にスタートした制度で、大学などの成果を活用して起業したベンチャーのうち、今後の活躍が期待される優れた大学発ベンチャーを表彰するとともに、特にその成長に寄与した大学や企業なども表彰している。

これまでには、慶應大発で人工合成クモ糸の製造を手がけるスパイバー(2014年度)や、東大発で宇宙ビジネスを展開するアクセルスペース(2016年度)、同じく東大発でIPOも果たしているPKSHA Technology(2017年度)、落合陽一氏率いる筑波大発のピクシーダストテクノロジーズ(2019年度)も表彰を受けた。

外部有識者からなる「大学発ベンチャー表彰2020」選考委員会による応募書類の審査および面接審査を経て、大学発ベンチャー6社とその支援大学・支援企業の受賞は以下の通りだ。


『文部科学大臣賞』には、大阪大学微生物病研究所との共同研究を進めるヘルスケア領域のベンチャー・サイキンソーが選ばれた。また、『経済産業大臣賞』には、東京理科大学と連携しながら装着型ロボット「マッスルスーツ」を開発するイノフィスが選ばれた。その他に受賞したベンチャー企業も含め、以下に表彰理由などを紹介していく。

各賞を受賞した6社の表彰理由


【文部科学大臣賞】

■受賞企業:株式会社サイキンソー https://cykinso.co.jp/ 

■支援大学:大阪大学 微生物病研究所

■支援企業:REVICキャピタル株式会社

■事業内容:人体の常在細菌叢(さいきんそう)データを活用し、次世代のライフスタイルを提供

■大学による支援:大阪大学微生物病研究所との共同研究により、腸内細菌叢の検査・解析を「安価、迅速、正確」に実施できるプラットフォーム技術を開発。現在も、解析手法について継続的な技術支援を提供している。

■企業による支援:創業直後の2015年初頭から、販路開拓や販売戦略立案、事業計画作成など経営面で様々な助言を頂いている。シード、シリーズAで出資を行い、専門人材の採用、解析設備の拡充等、「未病検知サービス」の早期実現に向けた体制整備の支援を行った。


腸内細菌叢のDNA検査サービスのパイオニアとしてこれまでに無いソリューションを提供する技術であり、大学・企業との連携によって着実に事業を進めている点を評価され、受賞に至った。既に2万件の個人向け検査の実績を持っており、これからの他サービスへの展開も含めて今後大きく成長することが期待されている。


 

【経済産業大臣賞】

■受賞企業:株式会社イノフィス https://innophys.jp/ 

■支援大学:東京理科大学 工学部 機械工学科

■事業内容:重作業での腰の負担を軽減させる装着型ロボット「マッスルスーツ」の開発・販売

■大学による支援:創業者の小林教授が菊池製作所と2013年に創業。東京理科大学TLOと連携し、関連技術に関しては将来の事業を視野に入れ大学単願で特許を出願し、イノフィスが占有実施権を有することが可能となる。小林教授は取締役として先頭に立ち技術開発を推進中。


事業会社・アカデミアとのアライアンスを構築し、顧客ニーズを製品改良に素早く取り入れる高速サイクルを実現。このような連携を活かして事業化を進めている点が高く評価された。日本発のマッスルスーツメーカーとして、大きく成長することが期待されている。


 

【科学技術振興機構理事長賞】

■受賞企業:株式会社Xenoma https://xenoma.com/ 

■支援大学:東京大学大学院 工学系研究科

■支援企業:豊島株式会社

■事業内容:着用するだけでヘルスケアデータを取得できるスマートアパレル「e-skin」を展開

■大学による支援:東京大学・染谷研究室/JST ERATO染谷生体調和エレクトロニクスプロジェクトのスピンオフとして設立された。染谷教授が2003年に提案した「伸縮性エレクトロニクス」を元にアパレル製品に応用したものが「e-skin」となる。

■企業による支援:豊島株式会社の調達力により生地や副資材の幅が広がり、着用シーンに合った「日常に溶け込むe-skin」の開発が可能となった。また、アパレル業界において長年培われたネットワークと信用力により顧客開拓を支援した。


ウェアラブルのスマートアパレルで実際に製品を上市し、事業として成立。また、経営方法においても日本だけではなくグローバル展開を目指した組織体制・経営方法で推進しており、高く評価された。日本発のスマートアパレルの実用化により、今後大きく成長することが期待されている。


 

【新エネルギー・産業技術総合開発機構理事長賞】

■受賞企業:Hmcomm株式会社 https://hmcom.co.jp/

■支援大学等:産業技術総合研究所 人工知能研究センター

■事業内容:ディープラーニングを用いた音声認識・自然言語解析の事業と、AIでの異音検知事業を提供

■大学による支援:産総研独自の研究・開発技術の提供(音声認識)や、技術の特許許諾、研究者の社外取締役への就任、ネットワークを活かした企業への紹介等、技術と人の両面から多角的な支援を行っている。

音声認識・自然言語処理技術にベースとなる強みをもっており、そこにAIを活用することで幅広く得意とする技術の活用できることが評価された。労働生産性の向上という社会的課題の解決のために求められる技術であり大きく成長することが期待されている。


 

【日本ベンチャー学会会長賞】

■受賞企業:NABLAS株式会社 https://www.nablas.com/ 

■支援大学:東京大学 産学協創推進本部 イノベーション推進部

■事業内容:AI人材育成事業、コンサルティング事業、R&D事業を一体で行い、AIに関するソリューションを提供

■大学による支援:東京大学での研究・教育成果を事業化する形で社会に還元し実用化していく活動を支援。東京大学内に位置するインキュベーション施設「アントレプレナーラボ」を提供しており、同拠点は創業時よりNABLAS社の拠点として利用されている。

すでに数千人を超える教育プログラムの受講者実績があり、AIに関するソリューション展開において着実な事業展開を行っている点を評価。さらに拡大が見込まれるAI教育、企業等へのAI導入に視点をあてたビジネスモデルに今後の発展が期待されている。


 

【アーリーエッジ賞】

■受賞企業:株式会社アグロデザイン・スタジオ https://www.agrodesign.co.jp/ 

■支援大学:東京大学 産学協創推進本部 イノベーション推進部

■事業内容:タンパク質結晶構造解析を活用した安全性の高い農薬の研究開発

■大学による支援:硝化抑制剤のシーズは、創業者の西ヶ谷が東大の連携大学院である(国研)農研機構・高度解析センター・山崎俊正研究室で行った博士論文研究をもとにする。起業支援として、EDGEプログラム(起業家教育)およびインキュベーション施設の提供をしている。

創“農”薬という分野に挑戦する企業であり、研究者自らがアントレプレナーシップ講座への参加を経て研究成果の社会実装のために起業。これまでの資金調達や事業体制推進などの一連の流れが評価された。これまでに無い分子標的農薬をデザインするものであり、実用化による大きな社会的インパクトの創出を期待されている。


 

TOMORUBA編集部

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