人工衛星向け通信インフラ事業を運営するワープスペース、シード調達額3億円を突破
人工衛星向け通信インフラ事業を運営する株式会社ワープスペースは、三菱UFJキャピタル株式会社が運営するファンド等を引受先とした第三者割当増資による資金調達を実施した。また、経産省 令和2年度戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン)にも採択され、これにより創業時からの資金調達額の累計が3億円を突破した。今回の資金調達は、2020年末に予定している大型調達に向けた最後のシードラウンドとなる。2022年の実現を目指す、宇宙空間での光通信ネットワークを構成する小型光中継衛星の開発と技術実証を加速させていく。
<※上画像:ワープスペースの小型光中継衛星(イメージ)>
資金調達の背景
ワープスペースは、”Lead the frontier era of space with our CubeSat technology(超小型衛星の技術をもって、新しい宇宙開拓時代をリードする)”をミッションに掲げ、世界初となる低軌道人工衛星向け衛星間光通信ネットワークサービス「WarpHub InterSat」の実現を目指している。
小型光通信中継衛星を用いた衛星間光通信ネットワークの実現にあたり、同社は今回の資金調達をもって、現在取り掛かっている中継衛星の設計開発と光空間通信の実証を加速させていく。2020年夏から光空間通信の地上実証試験をいくつかの段階に分けて実施する予定。
宇宙空間光通信ネットワーク構想「WarpHub InterSat」について
同社は、小型光中継衛星を複数打ち上げ、世界初となる衛星間光通信ネットワークサービス「WarpHub InterSat」の2022年までの実現を目指している。これにより地球観測衛星等の低軌道人工衛星は、地上との間で常時高速通信が可能となり、同社は地球観測ビックデータ化加速による持続可能な地球経済の実現に貢献する。この地球観測ビッグデータ化は、内閣府が2017年に策定した「宇宙産業ビジョン2030」における重点目標にも掲げられている。また、2020年6月に閣議決定された宇宙基本計画では、重点強化領域のひとつとして宇宙光通信が挙げられている。
近年、地球の低軌道(600~1,000km)を周回する地球観測衛星から得られるリモートセンシングデータの需要が急拡大しており、同社のターゲット市場である世界の地球観測市場規模はすでに2兆円を超え、年15%強の急成長市場となっている。これまで主に金融業界や流通業界が地球観測データのユーザーだったが、近年は漁業や農業などの第一次産業への展開も始まっており、引き続きの拡大が予想されている。一方で、衛星で撮影したデータを地上に送る通信インフラの整備が追いついておらず、重大なボトルネックとなっており、同社が衛星間光通信ネットワークを提供することで、地球観測衛星事業者は通信のボトルネックに制限されることなく、大量の観測データを地球に送信することが可能となる。
ワープスペース取締役CEO常間地 悟氏のコメント
新型コロナウィルスの脅威が未だ収まらないなか、三菱UFJキャピタルを始めとする投資家の方々を新たな株主として迎えられたことを大変嬉しく、心強く思います。私たちは今回の資金調達を契機として、宇宙空間における通信トップキャリアへの道を本格的に歩み始めます。現代において人工知能やコンピューティングがここまで発達したのは、ひとえにありとあらゆる領域でビッグデータが生成され、アルゴリズムが常に強化されてきたからに他なりません。私たちは宇宙空間を24時間365日、光通信で結ぶことによって地球観測データのビッグデータ化を加速させ、持続可能な地球経済の発展に貢献してまいります。
三菱UFJキャピタル株式会社 執行役員 投資第三部長 清水 孝行氏のコメント
衛星間光通信ネットワークサービスという非常に重要な通信インフラ事業を手掛けるワープスペース。三菱UFJキャピタルは、ワープスペースの壮大な夢の実現に向けた応援団として、MUFGの一員ならではの強みを活かし、ステップアップするステージに来ているワープスペースがグローバル企業として大きく羽ばたくためのお手伝いをしていきたいと考えています。
経産省 戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン)について
自動車や医療機器、宇宙・航空、ロボット等の産業分野に資する、より高度な技術開発への挑戦の後押しを目的として、中小企業・小規模事業者が大学、公設試等の研究機関等と連携して行う、製品化につながる可能性の高い研究開発、試作品開発等及び販路開拓への取組を支援する制度。補助金額は3年間で約1億円になる。
<株式会社ワープスペースについて>
2016年8月に始動したワープスペースは、世界初となる低軌道人工衛星向け衛星間光通信ネットワークサービス「WarpHub InterSat」の実現を目指す筑波大学発宇宙ベンチャー。前身である大学衛星プロジェクトを含め、これまで2機の通信衛星打ち上げを経験してきた(うち1機はJAXA公募採択)。宇宙や人工衛星に対する高い専門性に加え、JAXAをはじめとした研究開発機関とのパートナーシップ、筑波研究学園都市が擁する豊富な実験試験設備を強みに、宇宙事業開発を進めている。2019年6月にはG20貿易デジタル大臣会合において茨城県の推薦のもと、経産省・総務省によりメインフロア出展企業に選出された。
事業内容:
・低軌道衛星向け通信インフラ事業
・小型衛星用モジュール開発事業
・衛星関連技術移転事
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(TOMORUBA編集部)