【小田急電鉄×秦野市】 自治会・町内会SNS「いちのいち」の実証実験を開始--開発背景を担当者に聞く
小田急電鉄株式会社は、社会課題解決を目指した地域コミュニティー活性化のためのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)「いちのいち」を開発し、神奈川県秦野市と連携して、まちづくりの推進に活用していくことを発表した。2020年6月より、秦野市内の自治会に「いちのいち」を実験的に導入するという。
自治会・町内会SNS「いちのいち」とは?
「いちのいち」は、自治会・町内会が抱えている担い手不足や回覧板の煩雑さ、若年層を中心とした地域とのつながりの希薄化、高齢者の社会的孤立などの課題を、住民が主体となって解決するために役立てることのできる「自治会・町内会向けのSNS」だ。
Webサイト、スマートフォンを用いて、自治会・町内会を1つのグループとして、回覧板や掲示板などでの情報発信を電子化し、自治会・町内会、住民、地元商店、市役所などの間で、スピーディーで双方向な情報のやりとりを可能にする。
加えて、災害時の避難所開設などの防災情報の発信や安否登録機能を搭載し、緊急時の情報提供の迅速化にもつなげる狙いだ。自治会・町内会運営者がコミュニティー管理を行うことで、限定された地域での対話を育む。
「いちのいち」の名称は、「最優先事項」の意味合いの「一丁目一番地」にちなんでおり、地域活性化を最優先に取り組みたいという開発者の想いを表現している。「いちのいち」を自治会・町内会に導入することで、地元への愛着醸成に寄与することを目指すという。
小田急電鉄と秦野市は、「秦野市と小田急電鉄株式会社との小田急小田原線沿線まちづくりの推進に関する連携協定書」を締結し、駅を中心としたまちづくりや、地域の活性化などに取り組んできた。「いちのいち」のシステム開発等にあたっては、秦野市内にある山谷自治会の協力のもと、実際に会員に利用してもらうことで成果が認められた。
新型コロナウイルス感染拡大を受け、外出機会が減少している現状を鑑み、活用範囲を市内全域へと拡大する。より広範囲で実証実験を行うことで、地域内での対話手段として有効なツールになるかを検証する。
「いちのいち」開発の背景
本プロジェクトのアイデアは、小田急電鉄が2018年に開始した社内新規事業アイデア公募制度「Odakyu Innovation Challenge climbers(クライマーズ)」から生まれたという。開発担当者の東海林勇人氏(経営戦略部)は、同プログラムの第一期生だ。東海林氏は、90歳になる祖母が日中ひとりで過ごし、寂しさや孤独感を感じている様子を見て、超高齢化社会の大きな課題を実感したという。そこで、町内会・自治体といった「地縁組織」とのつながりを活性化する、このプロジェクトを起案した。
沿線地域での100回を超えるインタビューから、回覧板の煩雑さやコミュニケーション機会の減少、地域への無関心が、切実な課題となっていることに気づいた。リアルな声をプロダクトに反映させることで、「いちのいち」は生まれたという。
「自然災害や新型コロナウィルスにより、人々の不安が高まっている時代だからこそ、「人と人」、「人と地域」をリアルにつなげる持続可能な社会を「いちのいち」で実現していきたい」(東海林氏)――これが本プロジェクトにかける想いだという。
実証実験の概要
秦野市における自治会・町内会SNS「いちのいち」の実証実験概要は、下記のとおり。
■実証期間
2020年6月1日~9月30日(予定)
■対象
神奈川県秦野市内全域から40自治会程度
※順次拡大を予定
■検証内容
自治会・町内会内における地域情報の共有と地域コミュニティーの活性化
■利用環境
パソコン、スマートフォンからWebアプリとして利用できること(一部機種を除く)
■利用方法
・自治会・町内会単位で「いちのいち」サイトに登録、グループを作成
・自治会・町内会員は、メールアドレスと名前、住所を登録することで、コミュニティーに参加可能
※「いちのいち」の利用にあたっては、自治会・町内会単位での利用料を想定しているが、実証実験期間中は無償でサービスを提供
■ホームページ
※関連リンク:プレスリリース