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【税理士解説/設備投資と税制①】 設備投資と税制上の優遇措置

【税理士解説/設備投資と税制①】 設備投資と税制上の優遇措置

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第4回目となる今回は、多くの企業で利用されている「設備投資税制」について、近年の改正内容や、実務上の留意点などをご紹介いたします。「設備投資税制」と言っても、設備投資をすることによって税制上の優遇を受けることができる制度は数多く存在します。下記がその代表例です。

●中小企業経営強化税制

●中小企業投資促進税制

●商業・サービス・農林水産業活性化税制

●地域未来投資促進税制

また、上記以外にも、地域ごとにその地域(県や市)ならではの「設備投資税制」や「補助金制度」を創設・運営している地域が存在します。 (例:沖縄の特定地域における工業用機械等の特別償却など)

今回は、その中でも「中小企業経営強化税制」にスポットをあてて説明します。「中小企業向けの設備投資税制」は、中小企業・小規模事業者の「積極的な設備投資」を後押しし、「生産性革命」の実現を図る観点から、これらの措置の適用期限を延長され、多くの企業に活用されています。

また、平成31年度税制改正において中小企業経営強化税制については、「働き方改革」の実現に向けた取組みを支援する観点から、対象設備を明確化するといった改正が行われました。

中小企業経営強化税制

(1)内容

平成31年4月から令和3年3月末までに① 経営力向上計画の認定を受け② 一定の経営力向上設備等を取得し事業の用に供した場合には「取得価額の100%償却(特別償却)」 または、「最大10%(資本金3,000万円超の中小企業者等は7%)の税額控除」を選択適用できます。

なお、平成31年3月までに取得した資産は、経営強化法の認定を受けることで、固定資産税の軽減措置等の適用もあわせて受けることができましたが、現在は廃止されました。

※1 「中小企業経営強化法の経営力向上計画の認定」とは、設備投資等により生産性を向上させるための計画で省庁の認定を受けたものをいいます。

※2 税額控除限度額は法人税額の20%相当で、限度額を超える金額については、翌期に繰り越すことができます。

(2)適用対象者

青色申告法人で、資本金の額が1億円以下の法人(中小企業者等)が対象となります。ただし、次の法人は、資本金額が1億円以下であっても、中小企業者等に該当しないこととなるためご注意ください。

① 大規模法人※から2分の1以上の出資を受ける子会社

② 2以上の大規模法人※から3分の2以上の出資を受ける子会社

③ 適用事業年度の前3年間の平均所得金額が15億円を超える法人

※大規模法人とは下記の法人を指します。

・ 資本金または出資金の額が1億円超の法人

・ 資本金または出資金の額が5億円以上の法人(大法人)の100%子会社

・ 100%グループ内の複数の大法人に支配されている法人

(3)認定スケジュール

本税制の適用を受けるためには、原則として設備等を引き渡し、取得する前に、工業会等による証明書(A類型)や、経済産業局による投資収益率に関する確認書(B類型)を取得し、当該設備を利用し、生産性を上げるための「経営力向上計画」の認定を受ける必要があります。

※例外的に設備取得後に経営力向上計画を申請することも認められています。この場合、設備取得日から60日以内に経営力向上計画が申請受理される必要があります。

※1 B類型に関して、経済産業局の確認申請は設備取得前に行う必要があります。

※2 経営力向上計画の認定については、遅くとも当該設備の取得・事業供用年度(各企業の事業年度)内に認定を受ける必要があります。

取得・事業供用年度を超えて認定を受けた場合、税制の適用を受けることができないので留意する必要があります。

(4)実務上の留意点

ここからは、実務の目線でさらに詳しく説明いたします。中小企業経営強化税制を適用するためには、「各種書類の申請手続き」が欠かせません。その際に、「生産性向上設備(A類型)」「収益力強化設備(B類型)」のどちらに該当するのかにより、作成すべき、そろえるべき提出書類が異なりますので、ご注意ください。

「A類型」と「B類型」は中小企業経営強化税制の「適用要件」である、①取得した設備の生産効率等の指標が、旧モデルと比較して年平均あたり1%以上向上している設備として工業会等から証明を受けている設備(A類型)または②経済産業大臣の確認を受けた、年平均の投資利益率が5%以上の投資計画に係る設備(B類型)により分類されます。

一定の期間に販売された設備であり、かつ、原則として生産・販売・役務提供といった収益獲得に直接関係する設備対象であることから、中古設備や賃貸用設備事務用や管理用の設備対象外です。

① A類型

A類型は、下記「A類型とB類型の比較表」に記載する対象資産について適用があります。 A類型の証明書は、納入業者やメーカーなどを経由して証明書の発行依頼を行い、工業会等から発行された証明書を受け取ります。 その証明書が税務申告時の必要書類となります(工業会証明書)

設備購入の際には、取得資産が適用を受けることができる資産であるか否か、必ず、納入業者やメーカーなどに確認してください。

② B類型

B類型は、新しく店舗や営業所、その他工場等を建設する場合など、「A類型」の対象となる資産の購入に該当しない場合に適用を検討します。 「建物」は対象となりませんが、電気設備や給排水設備などの「建物附属設備」が対象となります。

適用を受ける際は、投資計画案を作成し、一定の投資利益率を確保する見込みであることについて、税理士等に事前に確認を受けた上で、経済産業省の所轄経済産業局による確認が必要となります。(経産局確認書)

その確認の後、主務大臣へ、経営強化法による経営力向上計画の認定申請を行います。

投資計画案の作成や、経済産業局の確認に必要な根拠書類・提出書類はA類型より多いことから、手間と時間を要します。 ただし、A類型のように工業会から証明書の発行を受けることができた設備だけでなく、経済産業大臣の確認を受けた投資計画に係る設備を中小企業経営強化税制の対象とすることが可能となることから、適用を検討したいところです。

A類型とB類型の比較表

【適用要件および対象資産】

このように、手続きは煩雑であるものの、税制上の優遇を享受することができるため、設備投資税制を適用している企業は数多く存在します。

適用を受けるためのスケジュールにも一定のルールがあるため、設備投資を検討している際は、取得前設計計画の作成初期に、対象となる設備であるか否かも含め、税理士へご相談してみてはいかがでしょうか。

(コラム執筆:税理士法人山田&パートナーズ)

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