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【OPEN INNOVATION 4.0 vol.1】日本ならではのオープンイノベーションに迫る新シリーズ始動!内閣府副大臣・平氏にインタビュー

【OPEN INNOVATION 4.0 vol.1】日本ならではのオープンイノベーションに迫る新シリーズ始動!内閣府副大臣・平氏にインタビュー

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経済発展と社会課題解決の両立を目指すために、日本が提唱する未来社会のコンセプト「Society 5.0」。これを実現するために日本版「Industry 4.0」が進んでいるが、製造業のみがデジタルシフトするだけでは「Society 5.0」の実現は難しい。

労働人口減少や生産性の低さといった課題が急速に進む、農業、林業、水産業などの一次産業を迅速にデジタルシフトさせることも必要不可欠だ。さらにそこへ自治体も参画することで、社会課題解決を加速させる新しいオープンイノベーションの形が今後重要になってくる。――このように官民が連携しながら「Society 5.0」の実現に見据えた取り組みを、eiiconでは「OPEN INNOVATION 4.0」と提唱していく。 

そこで今回、「OPEN INNOVATION 4.0」に関わるキーマンにインタビューする新シリーズをスタート。第1回は、内閣府副大臣 平将明氏が登場。平氏は、中小企業の経営者を経て、衆議院議員となった経歴を持つ。

衆議院議員となってからは、経済成長戦略やイノベーション戦略に携わり、現在は防災、行政改革、IT政策、クールジャパン戦略、宇宙政策など、多様な領域を管掌。分身ロボット「OriHime」を事務所に試験導入し、議員活動の円滑化・効率化の検証を開始しているなど、新たなプロダクトやテクノロジーにも造詣が深く、スタートアップとの接点も数多い。

今、日本にイノベーションが起りにくいのはなぜか。それをどう解決する有効な手立ては何か。世界を驚かせる日本型イノベーションとはどのような形なのか。日本という国を“経営”するボードメンバーとしての見解を聞いた。

■内閣府副大臣 衆議院議員 平将明氏

東京都出身。早稲田大学法学部卒業。サラリーマン生活を経て、1991年に家業の青果仲卸『山邦』に入社。2005年、衆院選東京4区にて初当選。経済産業大臣政務官兼内閣府大臣政務官、自民党副幹事長などを歴任。自民党行政改革推進本部 副本部長を務める。

イノベーションが起こりにくいのは、「アニマルスピリットが足りない」からではない!

――科学技術・イノベーション政策をはじめ、防災、行政改革、IT政策、クールジャパン戦略、宇宙政策など担当されている平副大臣ですが、まずは日本におけるイノベーションの状況をどのように見ていらっしゃるのかお聞かせください。

平氏 : 一般的に経済成長には、労働力、資本、生産性の向上が必要だと言われています。しかし日本では、これから人口減少、労働力減少が予測されています。資本投資においては、ESG投資などにより、中長期的な資金が日本に入ってくるようになりました。そして残るは生産性革命ですが、生産性を上げるために必要なのが、イノベーションです。しかしながら、アメリカのシリコンバレーやイスラエル、フィンテック領域ではイギリス、そういった諸外国と比較してみると、日本はイノベーションが起こりにくいのです。

――それは何故だと、平副大臣はお考えでしょうか?

平氏 : こういう話をすると、よく「最近の若者はアニマルスピリットが足りない」と解説する人がいます。しかし、そういう精神論に傾倒するべきではありません。

私は、日本でイノベーションが起きにくい理由は、大きく2つあると分析しています。一つ目は、日本の法体系です。日本は大陸法であること――つまり、「やっていいこと」が列挙されているのです。そうすると、新しいサービスや革新的なプロダクトを生み出して社会実装しようとした時、法律にはそれを「やっていい」とは書いていません。日本の大企業は真面目ですから、「やっていい」と書いていないとなかなか踏み出せないのです。

日本にはエクセレントカンパニーが多く、研究開発力もポテンシャルも高いのですが、法体系の違いからくる構造的な問題で、この20年くらいは世界を変えるようなイノベーションが生み出せていません。これをどう打開するのかが一つの課題です。

二つ目は、多様性です。大企業のボードメンバーを見ると、多様性に少し欠けていて、社会の変化について行けていないというのがあると思います。一方、ベンチャー企業はやんちゃで突き進んでいきますが、ひとつ躓くと、経営に大打撃を受けたり、思わぬ社会批判を受けたりします。大企業における多様性の欠如、ベンチャー企業と多様なプレーヤーを応援する経済社会の多様性の欠如が課題です。

この大きな2つの課題の解決に有効なのが、オープンイノベーションという発想です。オープンイノベーションこそが、イノベーションが起りにくい、しかしリソースはある日本の経済成長を牽引するのではないでしょうか。

こうした中で我々は、『内閣府オープンイノベーションチャレンジ』という取り組みを進めております。これは、政府や地方自治体と、スタートアップや中小企業が社会課題を解決すべく一緒に組んでイノベーションを起こそうというプログラムです。

宇宙、地方創生、防災といった領域に注目

――2017年に試行的に実施した『内閣府オープンイノベーションチャレンジ2017』では、警視庁、消防庁、海上保安庁といった省庁のニーズを元に募集テーマを決めていらっしゃいましたね。これからイノベーションを創出するにあたり、副大臣が特に注目している領域を教えてください。

平氏 : 3つあります。一つ目は、宇宙分野です。日本では様々な宇宙ベンチャーが生まれてきています。アメリカのスペースXを見ると、ベンチャー時代から国家プロジェクトのミッションを与えられ、国のお金で成長してきた背景があります。日本でも、こうした領域でベンチャー企業と組むことで面白いことができそうだと感じます。

二つ目は、地方創生です。地方創生とはつまり、地方に良質な雇用を生み出すということです。たとえば観光分野や一次産業といった領域があります。観光分野でいえば、インバウンドをどう呼び込めるか。一次産業では、どう付加価値化するのか、外需を取りに行けるかといった課題があります。そういうアイデアがどんどん出てくるといいと思います。

三つ目は、防災です。防災関連では、様々な情報が縦割り・横割りで入ってきます。たとえば縦割りですと、国土交通省から河川情報、環境省からゴミ処理情報などが入ってきます。そして、国、都道府県、市町村といった様々なレイヤーから情報がバラバラに降りてきます。

それをAIで分析したり、SNSなどを使って見やすいように編集したり、チャットボットを使って困っている人のニーズを盛り込んで精緻に吸い上げたりする仕組みが進んでいます。防災分野は、ITテクノロジーや防災グッズを含めて、色々なアイデアが出てくると期待しています。

――たとえば、どのようなスタートアップ/ベンチャー企業であれば、こうした領域と相性がいいと考えていらっしゃいますか?

平氏 : シェアリングエコノミーに注目しています。たとえば防災でいうと、東京の大きな河川が氾濫したという時には、数十万人もしくは数百万人規模で避難しなければいけません。その時、公民館や学校の体育館といったパブリックの場では収容しきれない可能性があります。こうした課題にシェアリングエコノミーが有効に活用できるのではないかと思います。

これまで防災は、河川や危機管理など様々な領域の専門家が集まり、議論を重ねてきました。そこにシェアリングエコノミーの発想が入っていくと、従来の政府審議会では出てこなかった新しいものができるかもしれません。

――先ほどの防災領域の中で、「各省庁の持っている情報を統合して、SNSで編集・発信する」といったお話しがありましたが、縦割りの組織の中でデータを統合することは容易ではないと思います。そこはどう打開していくのでしょうか。

平氏 : 政府も様々な情報を持っています。現在は、そういった情報を政府と被災自治体が共有しながら、初動体制を整えています。内閣府には災害時情報集約支援チームISUT(Information Support Team)が、様々な情報を重層的に地図に落として分析・支援しています。そうした情報を行政のみならず、公開できるものは一般に公開することで、新たなサービスが生まれる可能性が出てくると思います。

――これまで行政で抱えていたデータをオープン化することにより、様々な展開が期待できそうですね。

平氏 : 事案の展開に関しては、例えば、災害が起きた時に、チャットボットで被害状況や救助が必要な人の情報を、位置情報や写真で収集します。そのビッグデータをAIで分析し、マップに落とします。政府や自治体はその地図を見ながら優先順位を決めて対応するということができるでしょう。

停電している地域のマップ、通信が断絶しているマップ、道路に被害が起きているマップを重層化する。それを、たとえば家族の位置情報と照らし合わせることで、彼らがどこにいてどんな状況なのかを推測できるようになることが考えられますね。

日本には、他国に真似できない素地がある。それは――

――冒頭で、「日本にはエクセレントカンパニーが多いのに、なかなか新しい事業が生み出せない」理由として、法体系と多様性の問題を挙げていらっしゃいましたが、他にボトルネックとなっているものはあるのでしょうか。

平氏 : 一番の問題は、先ほども申し上げた法体系です。決して、精神論ではありません。日本は大陸法ですが、アメリカもイスラエルもイギリスも、英米法です。

大陸法には「やっていいこと」が列挙されていると言いましたが、英米法には基本的に「やってはいけないこと」がリスト化されています。そこに書いていないものは、まずやってみて、後は訴訟で解決していくのです。だから、自動運転などもどんどんやっていますよね。

私はずっと経済成長戦略とイノベーション戦略に携わってきましたが、イノベーションがどれだけ進むのかということと、どれだけリスクを取れるかということは、極めて相関関係が強いです。日本は大陸法のもと、隅々まで法律や規制、業界ルール、業法が行き届いています。それは、サービス享受者や生活者にとっては安心・安全と言えるでしょう。

しかしイノベーションにおいては非常に不利だと感じています。それに加えて、コンプライアンスもあります。大企業は、大陸法×コンプライアンスに縛られて、法律的にグレーゾーンのビジネスに乗り出すことができません。そこに、日本の大企業が世界の潮流に取り残されつつある原因があると、私は分析しています。

――このままではイノベーションが起りにくいままだと思いますが、法律を根本から変えていくのは現実的ではありませんよね。日本が世界で戦っていくために、何か有効な策はあるのでしょうか。

平氏 : 確かに、大陸法から英米法へ法体系を根本的に変えるのは不可能です。ではどうすればいいのかというと、大陸法というOSで動いている国家に、英米法的なアプリを実装するのです。政策としては、国家戦略特区、レギュラトリーサンドボックスがそれにあたります。

また、多様性というキーワードでは、いかに多様性のあるインクルーシブなコミュニティや組織を創るのかということも大切です。それを創ることによってイノベーションが生まれやすくなりますし、イノベーションが生まれることでさらに多様性のある社会を創ることができます。そうした循環をぐるぐる回すイメージですね。

分身ロボット「OriHime」を私は活用していますが、これによって障害のある方が社外取締役として活躍できたり、難病患者の方々が接客する分身ロボットカフェができたりもしています。これはまさにイノベーションの力で、インクルーシブな社会、ダイバーシティがある社会を実現している1つの事例ですね。

――では、日本ならではのオープンイノベーションでの勝ち方というのはあるのでしょうか。

平氏 : 海外に行くと、日本に対する評価がとても高いことを実感します。日本にいる時には分からないのですが、和食や錦鯉、西陣織といった伝統文化には世界中にファンがいて、日本の文化の魅力を再認識させられることも多いです。

こうした、日本が古くから積み上げてきた伝統的なバリューこそが、日本的なオープンイノベーションの糸口になるのではないかと考えています。日本はテクノロジーが進んでいて、自動車やロボットも先進的な研究が進んでいますから、テクノロジー×伝統業種といった掛け合わせで、新しいものが生み出されるのではないでしょうか。

――確かに、双方が日本の持つ強みでありながら、一見かけ離れた領域です。掛け合わせたら面白そうですね。

平氏 : 日本には、他国には真似できない素地があります。そこを再発見して掛け合わせていくと、世界があっと驚く価値が生み出せるのではないかと思いますね。

日本という国を経営するボードメンバーとして、伝えたいこと

――平副大臣は、大企業の若手有志団体「ONE JAPAN」のイベントでのご登壇など、未来の日本を担う若手に対しても積極的にメッセージを発信していらっしゃいます。今回もぜひ、記事をご覧の方々にメッセージをお願いいたします。

平氏 : 人口減少、高齢化、防災など、日本は多くの課題を抱えています。それらをどう解決していくかというところで、日本の知恵が試されています。多様な担い手が、多様性の中でクリエイティブにアイデアを出していくことで、今後他の国が同じ課題に直面した時に、日本の知恵を使って解決できるような世界が生まれていくと思います。

とはいえ、新しいサービスをやりたいと思った時に、法律を調べても役所に聞いても分からない、ということがあるかもしれません。そうした時は、ぜひ政策をつくる政治家に相談してみると、意外と早く解決するかもしれませんし、色んなアイデアをもらえるかもしれません。

テレビドラマや映画を見ると、政治家には悪い人しかいないように見えて、関わることに躊躇するかもしれませんが、私たちはポリシーメーカーであり、ローメーカーであり、日本のポテンシャルを最大限に引き出すために、国を経営しているボードメンバーでもあります。さらには、これからのイノベーションの時代は、イノベーターと政治家がビジョンを共有して、今ある規制をプロアクティブにリデザインしていくことが、世界的な競争に勝つためにも重要だと考えています。

ですから、敬遠せずに相談していただきたいと思います。我々も国の成長戦略を作るにあたり、役所や様々な業界団体からの情報ももちろん大切ですが、クリエイティブなアイデアと接したいという欲求があります。色々なアイデアを頂けると嬉しいですし、何か集まりがあれば喜んで行きますので、いつでも声を掛けてください。

取材後記

大陸法がイノベーション創出を阻んでいるという問題を解決する方法として、「大陸法というOSで動いている国家に、英米法的なアプリを実装する」という見解は、科学技術・イノベーション政策やIT政策を担う平副大臣ならではだと感じた。

この11月にいよいよ『内閣府オープンイノベーションチャレンジ2019』の募集がスタートする(※)。スタートアップ企業や研究開発型中小企業単独での応募だけではなく、大企業×スタートアップ企業の連携での応募も可能にするなど、多様性を意識的に作り出す仕掛けがなされている。テーマに合致する企業はぜひ検討して欲しい。

また、新たなサービスを創りたいがボトルネックに苦しむ経営者は、平氏のような「政策をつくる政治家」に接触してみることも1つの糸口になるかもしれない。

※詳細はコチラ。応募〆切は、2019年12月13日までとなる。

(編集:眞田 幸剛、取材・文:佐藤瑞恵、撮影:加藤武俊)

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  • 今井公子

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  • 曽田 将弘

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  • Ayuko Nakamura

    Ayuko Nakamura

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    冒頭にあるこちら。
    
    労働人口減少や生産性の低さといった課題が急速に進む、農業、林業、水産業などの一次産業を迅速にデジタルシフトさせることも必要不可欠。
    さらにそこへ自治体も参画することで、社会課題解決を加速させる新しいオープンイノベーションの形が今後重要。――
    このように官民が連携しながら「Society 5.0」の実現に見据えた取り組みを、eiiconでは「OPEN INNOVATION 4.0」と提唱していく。
    
    つまり、日本だからこそ推進できる、日本ならではのオープンイノベーションの形がここにあるのではないかと。
    

シリーズ

OPEN INNOVATION 4.0

経済発展と社会課題解決の両立を目指すために、日本が提唱する未来社会のコンセプト「Society 5.0」。これを実現するために日本版「Industry 4.0」が進んでいるが、製造業のみがデジタルシフトするだけでは「Society 5.0」の実現は難しい。 労働人口減少や生産性の低さといった課題が急速に進む、農業、林業、水産業などの一次産業を迅速にデジタルシフトさせることも必要不可欠だ。さらにそこへ自治体も参画することで、社会課題解決を加速させる新しいオープンイノベーションの形が今後重要になってくる。――このように官民が連携しながら「Society 5.0」の実現に見据えた取り組みを、eiiconでは「OPEN INNOVATION 4.0」と提唱していく。