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食と健康の未来を、共にデザインする。共創プロジェクトスタート!ーー世界各国を知る味の素が、挑むべき課題とは?

食と健康の未来を、共にデザインする。共創プロジェクトスタート!ーー世界各国を知る味の素が、挑むべき課題とは?

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食とアミノ酸のリーディングカンパニーとして、130以上の国や地域でグローバルにビジネスを展開している味の素グループ。かねてより産学連携など研究開発領域での外部共創で多くの成果を上げてきた。近年はその範囲を広げ、ライフスタイルの変化や「食」を取り巻く様々な領域において、共創パートナーとのオープンイノベーションを積極的に推進している。昨年だけでも60~70社と会い、現在複数社とのプロジェクトが進行中だという。

日本や世界の「食」を100年以上にわたり支えてきた味の素は、オープンイノベーションによりどのような「食と健康の未来」を描いているのか。そのために提供できるリソースは。研究開発企画部にて『オープン&リンクイノベーション』という共創活動を推進する野口氏と安居氏にお話を伺った。

【写真左】 味の素株式会社 研究開発企画部 野口 泰志 氏

1998年入社。研究所にて生産技術の開発に従事した後、健康・栄養分野の研究に携わる。2006年から2年間、マサチューセッツ工科大学に客員研究員として派遣。帰国後、アミノインデックス事業の立ち上げに関わる。2013年、研究開発企画部に異動し、新規事業開発とオープンイノベーションの推進をしている。

【写真右】 味の素株式会社 研究開発企画部 安居 昌子 氏

2006年入社。カプシエイトなど健康食品の研究に携わった後、2012年に一度退職。2014年に再度入社し、グリナや毎朝ヒスチジンの研究に従事する。2019年4月、かねてから希望していた研究開発企画部への異動を果たす。オープンイノベーションに携わることで、新たなアイデアや研究の結果を事業に繋いでいきたいと考えている。

■未来の「食と健康」を考えるにあたり、異業種・異分野と共創するのはごく自然なこと。

――まずは、貴社が共創の取り組みを行うに至った背景や、実現したいビジョンについてお話しいただけますでしょうか。

野口氏 : 今、私たちのライフスタイルは大きく変化をしています。私が子供の頃は専業主婦の方が多く、毎日その日に調理する食材を近くのスーパーに買い物に行くことが当たり前の光景でした。しかし、平成時代に入ってからは夫婦共働き世帯が逆転し、今では7割が共働き世帯です。買い物の頻度や料理の時間は減少し、簡便に調理できるような冷凍食品や加工食品も増えました。それによって、食品を保存する冷蔵庫も大容量のモノが求められるようになりました。ライフスタイルの変化は、食品やそれを取り巻く調理や家電といった領域に、大きな変化を与えてきたのです。

では、これから未来の「食」を考えた時に、どのようなことが起こるのでしょうか。高齢化が進む中、「食」と「健康・栄養」はより密接となるでしょう。多忙で時間がない中でも調理を楽しむ「スマート調理」のニーズも増していきます。さらに「食資源」や「地球持続性」の観点では、SDGsの達成に向けてリサイクルやフードロスの課題への取り組みも進めていきます。これらの課題を解決していくために、異業種・異分野の共創パートナーと手と携えていくのは自然なことだと考えています。

安居氏 : 「多様化」というのも重要なキーワードです。ライフスタイルの多様化、そして価値観の多様化が進む中、味の素1社でできることは限られています。多様なお客様のニーズに応える商品を作るためにも、オープンイノベーションを積極的に推進していきたいです。

――やはり、これまでのお仕事の中で、他社との共創の必要性を感じる機会があったのでしょうか。

野口氏 : これまでも当社は産学連携の共同研究など、オープンイノベーションを進めてきました。しかし以前は「技術」的な側面が主流で、研究開発領域におけるミッシングピースを探すために外部と連携していました。しかし昨今のビジネス環境や世の中の変化を考えると、オープンイノベーションは研究開発だけではなくバリューチェーン全体で捉えていかねばならないと感じています。

また、「食」とデジタルテクノロジーの融合は、これからますます進んでいくでしょう。『オープン&リンクイノベーション』の募集テーマにもデジタル領域を設定していますが、当社が得意としない領域に強みを持つ企業とお会いして話を聞くと、「そんなこともできるのか」と新しい発見がありますね。

――実際にスタートしている共創プロジェクトもあるのでしょうか?

野口氏 : eiiconを活用して出会った複数の共創パートナーとのプロジェクトが、現在進行中です。これまで多い時には月に10社くらい、昨年だけで60~70社ほどの企業とお会いしました。例えば、その中で巡り会ったヘルスケアアプリ企業との共創が進んでいます。デジタルトランスフォーメーションを推進する中で、オープンイノベーションは不可欠です。ぜひ成功事例にしていきたいと考えています。

安居氏 : スタートアップだけではなく、大手企業や中小企業など、これまで関わりのなかった企業とも新しいつながりができていますね。「これまでも大手企業とは提携していたのではないか」と思われるかもしれませんが、大手企業にも様々な事業部があります。ある部門とはお付き合いがあっても、他の部門とはまったくお付き合いがない、ということがほとんどです。eiiconを活用することにより、そうしたこれまでお付き合いのなかった部門との出会いが実現し、コラボレーションがスタートしました。オープンイノベーションの組み方は1つではないと、改めて実感しています。

■「デジタル」や「体験価値」といった新たなテーマを設定

――今回の『オープン&リンクイノベーション』では、「おいしさの科学」「栄養・食品」「デジタルコミュニケーション」「体験価値」「先端バイオ医療周辺」「生産体制の自動化」という6つのテーマを設定していらっしゃいますね。昨年までとは異なるテーマ設定ですが、これらのテーマで共創パートナーと実現したい姿について聞かせてください。

安居氏 : 「おいしさの科学」や「栄養・健康」については、味の素の中でこれまでも進めてきた領域です。これらの領域においては、今後も外部と共創することで、従来になかった新しい取り組みを進めていきたいです。

そこからさらに先に進むと、メーカーとしてプロダクトを提供するだけではなく、「体験」を提供していきたいと考えています。しかし一口に「体験」といっても、生活、調理、食事など、様々な切り口があります。また、「デジタルコミュニケーション」も、これまでの当社にはない新たな取り組み領域です。共創パートナーと新しいアイデアやテクノロジーとの掛け合わせでビジネス領域を広げていきたいですね。

野口氏 : これまで当社のオープンイノベーションは、「既に味の素が手掛けている領域」にフォーカスしたテーマを設定していました。しかしこれからの世の中を考えた時に、「デジタル」や「体験価値」は不可欠だと考えています。こうした領域は当社がこれまで取り組んでこなかった、新たなチャレンジです。これからは私たちにないアイデアや技術を持つ相手との共創も積極的に進めていきたいと考えています。

――味の素というと個人消費者向けプロダクトのイメージが強いですが、法人向けビジネスも展開していらっしゃるのですよね。

野口氏 : 当社は「うま味」からスタートした会社ですが、今はそれだけではなく「香気」「コク味」「食感」など、おいしさに関わる様々な課題解決策を設計しようとしています。それを「おいしさ設計技術」と名付けています

食品を自社ブランドで販売している一方、アミノ酸を中心とした先端バイオ・ファイン技術による独自素材や、独自のおいしさ設計技術に基づくソリューションを、加工食品メーカーや中食・外食企業に提供しています。たとえばみなさんが普段召し上がっているお弁当や、レストランの料理にも、当社の技術や製品が活用されているのです。

安居氏 : 当社が企業向けに提供しているソリューションは、「おいしさ」だけにとどまりません。以前は個々のアミノ酸を様々な企業に提供していましたが、最近では「組成物」としても提供しています。組成物にすることにより、「栄養・健康」といった価値を食品に付加することができるのです。

たとえば、「AminoL40」というアミノ酸組成物はサプリメントにも入っていますが、様々な食品に入れることで、健康価値を高めるという研究も最近進めています。こうした「栄養・健康」といった分野でも、共創によって新しいビジネスを生み出せるのではないかと思います。

▲長い研究期間をかけて誕生したアミノエールは「BtoC」だけではなく、「BtoB」としても高い価値を発揮できる。

■食や栄養に関するデータ、グローバルな販売網や生産設備など、豊富なリソース

――貴社ならではの強みや提供できるリソースなど、貴社と共創することの魅力についてお話しいただけますでしょうか。

野口氏 : グローバルという切り口でお話をすると、当社は商品を販売している国・地域は130以上にのぼります。生産から販売まで一貫して海外に提供しているため、共創パートナーと将来海外展開をしていくためのリソースは揃っているといえます。また、日本で出会った共創パートナーと海外展開をするという道だけではなく、海外拠点主導のオープンイノベーションも進めていますので、それも1つのリソースだといえます。

安居氏 : 世界の様々な地域の「食」に関するデータを持っていることも強みです。調味料はまさに地域の食文化を象徴するものですよね。当社はそうした国や地域による食文化やおいしさの価値観の違いを深掘し、各国の栄養状態や嗜好を把握しています。こうしたデータやナレッジを活用して新しいビジネスを開発していくこともできます。

野口氏 : 日本国内においても、当社は支社ごとに特色があり、その地域に根付いた取り組みを進めています。神奈川県、三重県などと、様々なテーマで自治体・地域企業・住民の参画型オープンイノベーションを推進しています。ある種、その地域でのオープンイノベーションプラットフォームを築いており、それもリソースとして提供できるのではないかと思います。

安居氏 : 当社がソリューションを展開しているコンビニエンスストア、中食・外食企業、加工食品メーカーとのネットワークも強みですね。

――研究所のリソースとしてはいかがでしょうか。

野口氏 : 研究開発段階から共創する可能性も、もちろんあります。味の素は、食品を開発する技術、バイオ医薬品の製造技術、発酵技術、そして電子材料など、さまざまな技術を強みにしています。2018年には、クライアント・イノベーション・センターという、ビジネスパートナーとの新価値共創拠点を川崎事業所内に開設し、様々な企業と共創に向けたディスカッションを行っています。アイデア出しから始まり、技術開発をご一緒するというケースもあります。

▲最新のICT技術を導入し、『オープン&リンクイノベーション』の推進拠点となるクライアント・イノベーション・センター(CIC)。

■win-winの関係で、共にイノベーションを創出していきたい

――最後に、共創パートナーと、どのような関係性で事業を創っていきたいのか、お考えを聞かせてください。

野口氏 : オープンイノベーションというものは、「オープン」にディスカッションを行い、共創パートナー両者が対等な関係で事業に取り組み、「イノベーション」を創出していくものだと考えています。そうした「win-win」の関係を創っていきたいですね。

様々な方とお会いしている中で、時に技術やサービスの「売り込み」を受けることもあります。しかしそれはオープンイノベーションではなく、通常の事業環境で行うものではないでしょうか。「オープンイノベーション」と銘打つからには、売り手・買い手ではなく、対等なパートナーシップであることが大前提です。そうした関係性の中で、新しいビジネスを生み出していきたいと考えています。

安居氏 : 私も同じく、「win-win」の関係性を望んでいます。一方通行でどちらかがリソースを提供するのではなく、双方向で新しい事業やモノ・コトづくりを進められるような関係性でありたいと思います。「一緒にこんな世界を実現したい」「こんな商品・サービスを創出したい」という気概のある共創パートナーと、一緒に汗をかいて進めていきたいです。

■取材後記

インタビュー全体を通して、異なるアイデアや技術を持つ相手との出会いから刺激を受け、共創を楽しむ姿勢が伝わってきた。単に自社の事業を補完する相手を探しているというよりも、本気で新しいモノ・コトを共に生み出す「win-win」のパートナーを求めているのだろう。既に複数の共創パートナーとの取り組みを進めて、具体的な共創事例も生まれつつある。

これからライフスタイルの変化が進み、人々の価値観や関心ごとがますます多様化する中で、「食・健康」の領域には様々な課題と多くのチャンスが生まれていくだろう。研究開発領域のみならず、「食・健康」の領域で新たなアイデアや技術を発揮していきたいという方は、ぜひコンタクトを取って欲しい。

(構成:眞田幸剛、取材・文:佐藤瑞恵、撮影:佐々木智雅)

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